75 過去が立つ
――謁見の間
「大臣よ、ダイブロス達は未だ聖女様の行方を掴めてはいないのか?」
「はい、王様。集まるのは偽者の情報ばかりでして」
「怪力の女だったか。セントレディなどと名乗っていたのだったな」
「はい。聖女様の捜索は最重要ではありますが、セントレディなる女が現れた場所には必ず問題が起こっております」
「簡易な連絡だけでは情報が足りぬな」
「そちらにつきましては、数日前にギャライアの施設に向かわせた者に手紙を渡してあります。恐らく、今日明日中には戻られる事でしょう」
「仕事が早くて助かるぞ。ん?何やら扉の向こうが騒がしいような……?」
「外の奴らは何をやっているのか。叱ってやらなければ」
「何か問題が起きたのかもしれぬぞ」
「吉報であれば良いのですが……」
「そうだな。エレナ様が戻って来たというものであればな」
――エルルート城内
私達は今、お城を使った追いかけっこ(とても厚いオブラートに包んで)の真っ最中でした。
それはもう当然ですよね。何たって、門番達を圧倒した者が城内に入ったのですから。
以前引きこもり続けていた弊害もあり、誰も私の事をあの時の聖女だとは気付きません。
思えば、外に居た頃も城内に居る人を見かけた記憶がありません。王様辺りが近付かないように言っていた可能性もあります。回り回って、巡り巡って、全ての結果が今に繋がっているようです。もう少し分割で来て欲しかったです。
一人悔いていましたが、私が抱える二人はのんきなものです。
「で、どこ行こうっていうんだ?」
「王の入る場所へだろう」
「玉座だね、パパン。国取り。国取りだ!!」
「黙って居れば勝手に手に入るというのに、今か。不敬、余りに不敬だぞ」
面白さが分かりませんが、パパンが大笑い。
「それは分かってるよ、パパン。でも、王様が居る場所って何処かって言ったら玉座でしょ。あ、違う系? パパンなら知ってる系? 教えて、パパン」
駄々っ子みたいに求める彼。いや、幼過ぎて二重の意味で不安になります。
「それは……分からん」
もしかしてとも思いましたが、二人の会話のオチで二人を落としそうになりました。
「ちょ、今落としかけただろ」
「コントみたいなやりとりをするからでしょ」
「こん……?」
「パパンと普通に話してただけだぜ」
「じゃあ、おかしな会話をしていたからよ」
抱え直し、私は進み続けました。
「先程から聖女の進む道には迷いが無いが、目星がついているのか?」
「はい。寧ろ、私なら真っ先にそこを目指しますね。他はその後です」
確信めいたものに従い、城内を駆け抜けて辿り着いたのは謁見の間。
(そういえば、この扉を開けたのはアワーフレッタさんとの訓練より前でしたっけ)
成長、と呼べるかは分かりませんが、再び戻って来たのです。さほど時間は経っていませんが、過去の自分と比べるには丁度良い相手。
「二人とも、降ろしますね」
試さずにはいられないと、手首を解しました。
「その扉、蹴り破れない系なの?」
「そなたなら、十分可能であろう?」
二人が私の行動を不思議そうに見ています。
「これは過去との対決でもあるんです」
「おお、なんか燃える系じゃん。いいぞ~、頑張れ~」
「せ・い・じょ! せ・い・じょ!!」
ノリノリで応援しだす二人。応援慣れしていないので、こそばゆいですが、それも頑張って力に変えましょう。
「では、行きます」
最初は片手でと、私は力を込めた右手で扉を押しました。




