73 聖女の帰還
「はっはっは、飛んでる飛んでいるぞ~」
「俺もだよ、パパンッ」
無邪気にはしゃぐ二人。
彼らはこの大陸で恐れられた邪悪なるものであり、パパンはその頂点に居る人です。
そんな二人は今、私に投げられ、空を飛んでいます。
そして、遊園地のアトラクション的なノリではしゃいでいます。
「見えてきましたよ。大人しく担がれてくださいね」
「あくまで捕虜だな。任せておくが良い」
「まさかのご対面とは気分アゲアゲだぜぃ」
はしゃぐ二人を受け止め、私はこの場所に入りました。
ですが、まあ、感慨なんてものはありません。何せ、この場所には思い出なんてありません。ただ飛び降りて走り抜けただけですから。
私の目的も記憶に残っているのもその先。奥にあります。
そう、エルルート王国の城内です。
城門の前までやって来た私達を見つけた門番は、ちゃんと仕事をしました。
「そこの女、止まれ」
オワンネでの騎士団の姿を見た後だと、職務に忠実なこの人達には感動すら覚えます。
「その怪しい黒い人型は何だ?」
門番二人が槍を構えて私に尋ねます。確かに、少女一人で成人二人分の人の形をした塊を担いでいたら、普段以上に止められるのは当然です。
「聖女の帰還です。すぐに通してください」
この国で一番話が通しやすい立場を利用させてもらいましょう。
これで事を迅速に進める事が出来るはずです。
「せ、聖女様だって!?」
「確かに、聖女様は行方不明だったが……」
聖女という呼称を出され、門番は動揺していました。
門番達は、互いに私に視線を向けた後、互いにアイコンタクトを交わしていました。
門を開けてくれる事でしょう。さあ、いつでもどうぞ。
受け入れる準備は出来ていました。
「人二人担ぐ奴が聖女な訳無いだろ」
「異国の人間のようだから一度だけ教えよう。聖女様への侮辱は、王国につばを吐く事と同義だぞ。二度目は無い」
つまりは、お前のような聖女など居るか!! っという事らしいです。
「二人担いで通ろうとしていた時点でそんな気がしてたぜ」
「ここは普通に徒歩で尋ねた方がまだ信憑性があっただろうな。我も予見していたぞ」
笑いを堪えつつ、邪悪なるもの二人が言いました。
「おい、お前。それらは人なのか?」
「そのような黒き物で包んで運ぶとは怪しい奴だ。おい、捕まえるぞ」
「ああ。不審者だ。手を貸してくれー!!」
瞬時の判断で人を呼び、仕事をする門番達。
「何で下はしっかり仕事出来てるの」
仕事への忠実さは尊敬しますが、今はとても迷惑でした。
ですが、人を呼んでくれたおかげで、この後の行動を決める事が出来ました。
門の向こうに居る仲間がこちらにやって来れるようにと、兵士の一人が扉を開けました。




