71 親子(枠が違います)
「ま、待ってくださいっ」
追いかけていたらすぐに森を抜け、急に開けた場所に出ました。
奥には、背格好を覗いて同じ外見だというのに妙に威厳を感じさせる邪悪なるものが居ました。
「パパン、連れてきたよ。パパ~ン」
幼子が褒めてもらいたいとばかりに父親に駆け寄っていくような、そんな微笑ましい光景。
ですが相手は「馬鹿ものっ」と一喝。
(相手の声、何処かで聞いた覚えが……)
最近聞いた気がするのですが、ここ最近の情報量が多すぎて思い出せません。
後少しで出てきそうなのですが、そこまで記憶を探れる状況にはありません。
今、緊迫した親子の問題に直面しているのですから。
「なんだよ、パパン。言われた通りに連れてきたのにその言い草はさ」
ちゃんとやる事をやっての言われように、彼は不満そうでした。さて、パパンはどう出るのでしょう。
「何時も言っているだろう。パパンでは無く、パパと呼びなさいと」
膝から崩れ落ちる衝撃。私は耐えられず、地面に手を突いていました。
(何を言うのかと思っていたら、呼び方なの!?)
威厳を感じるから、もっと別な理由だと思っていたのに、物凄い肩透かしでした。
「もう、なんかと思ったらまたそれ? いいじゃん。パパンはパパンなんだからさ。ウェ~イ」
挫けずパパン呼びを続け、更に反省ゼロなウェ~イのコンボ。これはパパンの一喝がくるのではないでしょうか?
「ウェ~イ」
両手を上げ、拳と拳をごっつんこさせる特有の挨拶。先程の一喝の意味って何だったのでしょう。
「さて、そこな少女がそうなのか?」
二度目の肩透かしをくらっている所に、パパンが私に視線を向けました。
「そうだよ、パパン。今回のは凄いよ。今までに居ない人だよ」
「そうか。そんなにか」
品定めをするような視線で私の上から下までを見るパパン。
「そうか。遂に息子が……」
手で両目を覆い、泣く仕草。そして、天を仰ぐパパン。
「え、息子が何なんですか!?」
私にも関係ある事のような気がするので、口を出さずにはいられません。
「初孫が楽しみだ……」
いや、おかしい。うん、プレイバックしてもやっぱりおかしいです。
「凄い勘違いをしてますよね?」
「そうだよ、パパン。俺達は何にもないよ。何にも」
「そうですよ。もっと言ってください」
これはお互いのためにも否定するべきだと、聖女と邪悪なるものタッグで否定しました。
援護しつつ、私は次の彼の言葉を待ちました。
「今はまだ、ね」
「はっはっは、こいつめっ」
仲良し親子かとばかりに、パパンが彼を小突きました。




