67 猛烈 爆発 大暴走
「もっと反応してくれよ。もっと感情を見せてくれよ。歴代の聖女はもっと優しかったぞー!!」
扱いが雑だと、猛抗議。
「ちょっと待ってください。今、歴代と言いましたか?」
聞き流しそうな場面で重要そうな事を言うのは止めてもらいたいです。
「言ったさ。だからもっと君の反応を見せてくれよな。俺っち達との約束だ」
左手で顔の横に運んで横ピース。右手は人差し指と中指でクイクイと呼び込む動作。
邪悪なるものから、続々と摂取したり投下されたりしてはいけないものが私の中に入って来るのを感じます。
タイプの違う洗剤を混ぜてはいけないように、私の中で混ざってはいけないものが物凄い量で一つになろうとし、劇物がもうすぐ生まれそうです。
「邪悪なるものという存在は、消えては現れるを繰り返す存在だと聞いています。ですが、記憶は引き継がれているという事ですか?」
「簡単に言えば、俺っち達は全て一つの存在から生まれているのさ。それは古来よりある不変なのさ。全ては全から個へと分かれ、個は個を求め、全へと戻っていくんだぜ」
禅問答でありそうな系統の発言をする邪悪なるもの。
難しい事を急に言い出して、ウェイウェイ感を消そうとしているのでしょうか?
「分かってくれた? 分からなかったら、ちょっと空いている天幕まで行こうか。そこで二人っきりで教えてあげるよ。本当の俺っちを見せてあげるよ」
スススッと近付き、私の手に触れようとしてきました。
「お触り禁止っ!!」
その手を叩き落としました。バチンととても痛そうな音が出たと思いました。
「その表情、グッときた。天啓ビンビン来た来たぁぁぁぁっ」
軽蔑と侮蔑の合わせ技に、おかしな発言をしつつ仰け反って小刻みに震える邪悪なるもの。
恐らく比喩表現でしょうが、天啓が来たというのなら、ついでにお空に連れて行ってもらえば良いのに……。
「……気持ち悪い」
本音がこぼれても、誰も非難はしないでしょう。騎士団の人達どころか、周りの邪悪なるものも気持ち悪さで打ち震えていましたし。
このまま冷え切った空気の中で、この気持ちの悪い相手と接し続けては過剰摂取になるので、少し騎士団の人達と話して中和しましょう。
「騎士団の皆さんは、どうして彼らと和気あいあいとしていたんですか?」
王国側では不退転で挑まなければならない敵としている相手だったはずです。
それが頭の悪い集団のように鳴り下がっているとはどういう次第だったのでしょうか?
「脇……あいあい? 愛?」
伝わらなかったようですが、何かが伝わったようです。
「愛。ある意味そうかもしれない。剣を向け、切り捨てる相手とばかり思っていたが、違うんだ。違うんだよ、母ちゃんっ!!」
「生んだ覚えはありません」
いきなり何を言い出すのでしょう。まだまだ年若い乙女に対して。
「はっ。もしかして……土臭い?」
母なる大地という表現があります。
なので、自分を嗅いでみましたが、普段の自分の体臭なんて分かりません。
確認の視線を騎士に向けました。
「故郷で畑仕事をしていた母ちゃんと同じ臭いでした」
それは土の臭いが、という事ですよね? 加齢臭では無いですよね? と確認したいと思いましたが、事実が怖くて聞けません。
繰り返しますが、私は、まだ十代なんですから。




