64 それは印籠のような……
モン、ガイ、カンの三人とのやりとりでは受け入れられましたが、彼らのノリには付いて行けません。寧ろ、周回遅れで追いつけない場所で勝手にやっていてほしいくらいです。
気持ちで負け、私は後退りました。しかし、荷車のせいで逃げられません。
「ってぇ、全然解れてくれてないじゃん。もう揉む? 実力行使っきゃないっしょ」
「お手付き厳禁。お手付き厳禁。騎士団の人ー。ここに法に触れようとしている人が居ますよー。乙女を守るとか誉ですよー」
周囲に知らせるように言うのは騎士団の格好をした人。
「騎士団はお前っしょ。職務放棄すんなし」
私の認識は間違っていなかったようで、突っ込まれていました。
「はっ、こんな事案、私の手には余るであります。独り身なので、誰かに噂されると困るであります。なので、君に決めたっ!」
と影人間の一人に振る騎士の人。
「お・こ・と・わ・り。そもそも、そっちの法律関係無いし。生まれ持っての邪悪認定受けてるし。今更従えませんわ」
影人間が気になる事を言いました。そして、その答えはすぐに出ました。
「さっすが、邪悪なるものさんっすね。本気で闇背負ってる系の格の違い、半端ねぇー」
騎士団の人達全員が、私の世界で言う、眩しくて見えないというジェスチャーをしていました。
(いえ、そんなのはどうでも良いです。それよりも今、騎士団の人が言った事です)
私は、発言が真実かを知りたいと影人間に視線を向けていました。
「ちょ、俺っちの闇の気配でお嬢ちゃんの熱視線獲得しちゃったんだけど。ちょっと皆、席を離れてもらっていいかな? この先は俺っち達二人だけの時間にするからさ。ちょっと世界に入って来ないでもらえるかな」
何か、とんでもないことを言い出しましたね。
私が視線を向けた事により、どんどん気持ちの悪い展開に進んで行きました。
この一度自分達の世界に入ったら途中下車禁止な雰囲気が堪らなく不快です。
そろそろ体中から何かを噴き出しそうなので、その前に使いたくは無いですが、伝家の宝刀を抜くとしましょう。使うつもりは無かったのですが、この場でなら許されるはずです。
「私、聖女なんですけど」
この一言で相手側は静かになりました。
「……ま、またまたぁ。冗談が過ぎるってぇ」
影人間達が明らかに動揺し始めました。
「そうだそうだ。第一、聖女様だというのでしたら、証拠を見せてください。見た所一人ですし、女一人でこんな所に来る訳が無いですし。聖女って騎士団が全力で守る相手ですし。王子様がお傍に居るはずですし」
おちゃらけた口調が一変する騎士団の人。
「あー、はいはい。出番ですね」
「「「こっちのじゃなくて」」」
影も騎士も同時に一際お茶らけて私と二人になろうとしていた影人間にツッコミました。




