とある一座の演目3 前編
トロン一座は聖女様の物語の最後を語るため、再度王国へと戻って来た。
特別に用意された舞台の設置には騎士団も協力し、舞台演出には魔術師団も手を貸すという熱の入れようだった。
それもそのはず。観客席には、大陸中からこの最終部を見ようと集まってきているのだから。
空はあの時と同じ快晴で、何時もと同じ晴天で。舞台の成功を約束しているようだった。
歴代の聖女様が成し得なかった偉業が、エリンナ達演者の前に広がっていた。
一世一代の大舞台もこれで何度目か。それでも思いは変わらない。
(やっぱり、何度繰り返したとしても、この光景は私の心を震わせ続けるな)
エリンナは、天を見上げる。
(最初の公演の時は物凄い緊張だったっけ。あれが私の人生で一番の山場かなって思っていたけど……)
舞台では明かしていないあの日の事を思い出す。
(あの時の事は今でも忘れられない。忘れる訳が無い。あの別れのままだと思っていた、その後の事……)
気持ちを落ち着かせ、彼女は舞台端で声を張る。
「さあさ、これより始まるのは、今代の聖女様が最初に現れ、最後に訪れた王国で演じる舞台の最終幕。人目を忍び暮らしている人々の里を旅立った聖女様。向かうは歴代の聖女様が訪れた土地オワンネ。いよいよ出会う邪悪なるものに、聖女様は何を思うのか。お集まりの皆様の多くも目撃されたでしょう、その旅の終わりまでをこれから紡いでいきましょう」
一礼し、エリンナは舞台袖へと消えていった。
何時ものように幕が上がり、彼女が書き上げた聖女最後の物語が始まる。




