58 お忘れでした
「なるほど。それで寝る前に思い出したと」
里長は寝間着姿で、布団の中で横になっている状態でそう言いました。
私達は正座をし、ひたすら謝りました。
「聖女様にお話があったのは確かです。ですが聖女様は、聖女様なのに里の者達と組み手を、戦闘訓練をされている。なので、体力が尽きてお休みになられたのだろうと思っていました。使いにやったエリンナも、それほどまでに疲れているであろう聖女様の為に癒しの施しをしていて報告が遅れているのだろうと思っていました。いやはや。い~やはやですよ」
ね、ねちっこい。全面的に私達が悪いのですが、まあ、ねちっこい。
建前的には聖女として扱っていますが、絶対に私の事を聖女としては見ていません。
こちらとしてはそちらの方が喜ばしいのですが、意地悪爺さんと呼んだ方が似合いそうなほどにねちっこい。
「で、ではお休みになろうとしている所だったようなので、明日、改めてお話を伺いますね」
早々に切り上げてしまおうと、私は言うだけ言って腰を上げました。
「そのように早く戻る必要も無い。何、眠りに入りかけていただけだ。すぐに用件を済ませよう」
なるほど。ねちっこさの訳は、眠っていた所を起こされたという事も一つのようです。
なら、部屋の火は消しておいてほしいです。
眠る時は火を消す。それはこの世界でも共通の行為でした。なので、里長に呼ばれていた事を思い出して急いで向かった私達は、部屋の明かりを見て入ったのですから。
里長は、すぐに用件を済ませると言いつつ、仰向けになり、天井を見つめていました。
(この人、本当に聖女として私を見ていないな)
聖女どころか、人としてもかなり下に見ているのではないでしょうか。
「あのね、あなたとの追いかけっこが原因で体の節々に限界がきちゃって、しばらく満足に動けないのよ」
こそっとエリンナが私に教えてくれました。
なるほど。高齢なのでかなり態度が悪いのかと思っていましたが、筋肉痛以上の痛みを抱えているのであれば、現状の有り様を見ても納得です。
(よく動く人が急に動かなくなるとボケるって何かで見たわ。原因はあちらだけど、きっかけは私らしいし、仕方ない)
私は立ち上がり、里長の元へ行きました。
正座による足の痺れはどうしたって? アワーフレッタさんのおかげで確認されている状態異常は完全耐性持ちになっているので問題ありません。痺れは麻痺。なので、全く問題が無いのです。
日の目を浴びるか分からなかったのですが、こんな所で役に立ちました。




