53 襲撃 謎の軍団
その彼女の動揺が相手に伝わったのでしょうか。それが合図だとばかりに「シャウッ」と謎の掛け声と共にワッと三十人ほどの人間が私達に襲い掛かってきました。
エリンナの反応で、これは歓迎では無いと分かったので、私は馬車を飛び出しました。
「エリンナ、動かないで」
「え、うん」
彼女は馬車を止め、身構えていました。
それにしても、隠れ里の人は凄いです。
飛び出した途端、狙いを私に絞り、囲った状態で謎技術で空中移動したんですから。
その技術に関心し、感心しました。おまけに対処しやすくて歓心しています。
私は、手を平手にし、抵抗が受けられるようにと垂直にしました。そしてくるんと体を一回転させました。
私発の突風が巻き起こった時から、吹き飛ぶ人達。無駄の無い均一な風速と風圧でズレ無く飛んでいく人達。上から見たらなら、綺麗な花のようだったでしょう。
(成功したみたいで良かった)
出来るかなと思ったら出来たので、心の中でガッツポーズをしました。
「エリンナ、とりあえず大丈夫です……。いえ、一人残っていますね」
「何で里の人が私達を襲うの? 意味分かんない」
馬車を降りたエリンナは、不安を口にしました。
「私達が知らないだけで、ここに来るまでの間に里が襲われていたとかでしょうか?」
「それで私達を敵だと勘違いしたっていうの? 里の人がそこまで追い込まれるとか信じられないんだけど」
「エリンナ。あなたなら里の人が顔を知っているのですよね? なら、呼びかけてみては? あそこの木陰に一人、隠れていますから」
「私には分からないけど、エレナがそう言うんならやってみるよ。あ、でも、これで誰も居なかったら滅茶苦茶私、恥ずかしいよね」
「あ、場所が気付かれたと分かったら移動しましたよ。今はあっちです」
私が場所を指差すと、相手は更に場所を変えました。
指摘する度に場所を変えるので、かなり面倒です。
「もうっ。どこに向かって呼びかけたら良いか分からないじゃない!!」
声が聞こえる範囲に居るので、ただ声量を上げて呼びかければ良いというのは、エリンナも理解しているでしょう。
ですが、それだと当てずっぽうになるので、相手も罠の可能性を考えて素直には応じてはくれないでしょう。
「仕方ありません。捕まえましょう」
エリンナではありませんが、私も後逃げ有りのかくれんぼをするのは飽きました。
始めての本格的な旅だったので、そろそろちゃんとした場所で休みたいですから、手早くいきましょう。
「え、捕まえられるの!?」
「はい。追いつけますし」
私は相手の気配を探り、動き始めました。
それに気付いた相手も逃げ始めました。
相手の動きは、まるでスーパーボールのようで、木々の間を縦横無尽に逃げ回ります。
その軌道を追いかけていては翻弄されるばかりです。
なので、相手を翻弄するくらいの速度を目指して頑張ってみましょう。
大木が折れたりしたらどうしようという不安もありましたが、キリの無い追いかけっこは時間の無駄です。それに隠れ里と言うくらいですから、多少見晴らしが良くなっても上手い事隠れてくれるでしょう。
後の責任は負わない所存で、私は足に込める力を増やしました。
大木から、足蹴にする度に不安になる音が聞こえてきます。
それでも手が届く距離まで行かないので、相手も中々鍛えています。
もしもまた、アワーフレッタさんと出会ったら、負荷魔法で鍛えないといけません。
異世界の広さを感じました。と、何度か音がした大木を相手が使った時です。
遂に負荷に耐えられず、木が折れました。
これによりバランスを崩したので、チャンスが来たと思い、全力で木を蹴り上げ、加速しました。
私の背後から、逃げる人が蹴った木よりも早く倒れる音が聞こえたのは、この際聞かなかった事にしましょう。
「捕まえましたよ」
羽交い絞めにして捕まえた相手は小柄でした。
「エレナ、捕まえられたみたいね」
「はい。襲ってきた集団の一人です」
と、顔を動かし、エリンナに見せました。この時、初めて顔を見ましたが、お爺ちゃんでした。




