52 地獄の一週間 今明かされる今代の聖女様の旅路。「あれは私が自室に(以下略)」
馬と馬車が揃い、それに乗って移動しているとなれば、これはもうRPGの旅と何ら変わりません。
そうです。私は今、これぞ旅と言う旅をしているのです。
ですが、正直に言うと空気が最悪でした。
まあ、先の私の勘違いのせいではあるのですが、それをお互いに引き摺っているのです。
話ベタな私ですが、この空気を打開しようと頑張ってエリンナに話しかけました。
ですが、声をかける旅に過剰に体をビクつかせるので、とても接し方に困っているのです。
外の景色を見るという名目で隣りに座ると、端っこぎりぎりまで距離を開けるのです。
警戒を続ける動物のような反応。
初めての本格的な馬車の旅だというのに、これは辛いです。
「エリンナ。目的地まではどれほどかかるのでしょうか?」
「そ、そうね。距離的に一週間くらいかな」
地獄の一週間です。
(いえ、ここには二人しか居ないのです。どちらかが歩み寄らなければなりません。それを行うのは私でしょう)
挫けてはいられないと、これまでの人生で一番家族以外との交流を頑張ろうと改めて決意しました。
自分が楽になりたかったというのもありますが、色々とありましたが彼女とは一度は打ち解けられたのです。もう一度戻れるはずなのです。
きっと、元の世界でなら手放していたでしょう。
ですが、この世界での私は、人に対して積極性が増しています。
これも、アワーフレッタさんとの訓練の成果でしょう。
とにかく、良いきっかけを探して頭の中で大奔走していたら、思い出しました。
「そうです。お話です。エリンナは、私の話を聞きたいと言っていましたよね」
「え、うん。言っていたけど、今?」
「私がこの世界に呼ばれた所から始めますよ」
「ええ!? いや、書く物無いし。というか、そもそも今、書き留められないしっ!」
問答無用です。しっかりと記憶してもらいましょう。
「では、あれは私が自室に居た時で――」
語り始めた今までの出来事はそんなに長い物語にはなりません。ですが、途中でエリンナは良くツッコミを入れ、その都度細かく説明をしたりしました。語る合間に雑談で脱線したりして、私達の関係は次第に元に戻っていったのです。
一週間後。ついに隠れ里の手前までやって来ました。
「森の中を馬車で移動出来るように隠し通路があるとか、凄いですね。流石、隠れ里です」
道中を思い出し、目の前に見えている集落に感動しきりな私です。
「いや、でもさ。エレナの人の域を越えた特訓の話を聞くとさ、馬じゃない方が速かったよね」
道中で関係を修復した私達。エリンナは、これまでを語る途中で明かした本名で私を呼ぶようになっていました。
「でも、馬車の荷物を運んでと考えたら、三日か四日は私でも必要だったかもしれません」
「それでも馬より早い方がおかしいんだけど……」
彼女の呆れを含んだ反応にも慣れていました。
今の自分で見積もっての話ですから、途中で成長してもっと早くなれると思います。
「私の成長は止まらんよ」と、そう自慢しようと思いましたが、彼女の反応を見て止めました。
「馬車の荷は、私達の食料以外もありましたけど、これは全て里へのお土産なんですよね?」
途中、見ても良いと言われたので荷物を見せてもらいました。書物や武器や置物と、実に様々な物がありました。
「前にも話したけれど、ここは秘密部隊の養成所でもあるからね。里の住人もそうだけど、外には極力出ないのさ。代わりに、外に出ている人間がこうやってお土産を持って帰るんだよ。里暮らしだとそれがけっこう楽しみでね」
自分の時もそうだったと、エリンナは懐かしそうに話していました。
「へぇ、そうなんですね。では、今も待ちきれないでしょうね。隠れて私達を囲んでいる人達も、出迎えてくれているのなら、姿を見せたら良いのに。」
隠れ里だから、警戒しているのでしょうかと、私は思っていました。
「そうそう、でむか……。え!?」
気付いていなかったようで、彼女はとても驚き、私の顔を二度見、三度見してきました。




