表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
聖女の乱進 ~無限の魔力で目覚めました~  作者: 鰤金団
聖女様と深まる謎
59/112

51 HU・N・NU ~期待にときめく聖女~

「あ、待って。一緒に来てほしいんだけど」

「えっ?」

 彼女からの引き留める言葉に、私は聞き返していました。

「いや、ちょ、え!? 怖い怖い。団長、助けてっ」

 団長の背に逃げ込むエリンナ。

 何を怯えると事があるのでしょう。私はただ、聞き返しただけです。表情だって驚いた時のもののはずです。違いがあるとすれば、私の警戒レベルが最大になっていた事です。

「おい、止めろ。この機会に俺を盾にして団長の座を奪おうとするな」

 今を暗殺には最適と判断される理由が分かりません。

「そういう展開も良いと思うけど、それどころじゃないから。今は命が大事だからっ」

 まだその様なつもりはありません。二人でなんて茶番をしているのでしょう。

 呆れていたら、周りの様子も違う事に気付きました。

 エリンナの仲間でしょうから、漏れなくここに居る人達は秘密部隊の隊員なのでしょう。

 そんな人達が私の方を見て身構えています。その手には何も持っていませんが、私の行動次第で武器が握られそうな雰囲気です。

 何故そこまで殺気立った状況になっているのでしょう。私から何が出ているというのか。

 理解出来ずにいると、トロンさんが話しかけてきました。

「セントレディ様。とにかく、一度落ち着いてください。冷静に」

「見ての通り、落ち着いていますし、冷静ですよ? 寧ろ落ち着くのは皆さんかと」

 おかしな事を言うと思いました。周りの人が臨戦態勢である理由が分かりません。

「な、なんで急に威圧してくるのよ」

 震え声でエリンナが言いました。

「威圧? そんな事はしてませんよ?」

 逆に皆から圧を感じるくらいです。

「おい、エリンナ。まずは正しく事情を話すんだ」

「正しくも何も、一緒に来てほしいから来てほしいって言っただけなんだけど……」

 繰り返されて三度目だったので、今度は聞き返す必要もありません。

「お城に連れ戻すつもりですか?」

 牢屋でのやり取りを思えば、組織は潰れ、彼女の任務は終了と言える状態。だから、あの約束は意味を成さなくなったという事でしょう。

 つまりは、あの約束は反故にされたという事です。

 この世界で二人目の友人だと思っていたのに、とんでもない裏切りです。

「仕方ありません。ここであなた達をねじ伏せ、逃げるとしましょう」

 今回は体を使う機会が扉の時だけだったので、丁度良いでしょう。

 体内に溜まった温かい空気を吐き出し、視線をエリンナに向けました。

「わわわ、違う。違うって。そこだって。そこを勘違いしてるっ!!」

「はい?」

 意味が分からず、私は彼女に聞き返しました。

「そうか、そういう事か」

 トロンさんは分かったようです。

「トロンさん、どういう事でしょうか?」

「城に戻るのはエリンナを除いた者だけなんです。こいつには、隠れ里に行ってもらおうとしているんです」

「隠れ里? そんな忍びの里みたいな場所が?」

 隠れ里と言えば、ゲームで終盤に立ち寄れるおまけ的な場所ではありませんか。

 秘密部隊が在って、隠れ里だなんて、ちょっと好奇心が刺激されるではありませんか。

「ふぅ。治まってくれたか……」

 トロンさんの方を見ると、何時の間にか地面に落ちるくらいに汗だくになっていました。

「エリンナ。次に戻って来た時には説教だからな」

「えぇ!? 何でですか。私、何も悪い事言ってないですよ」

「自覚が無いなら尚悪い。それと、思慮深くなれ。城の関係者が付いて来いなんて言ったら、城に向かうと思うだろうが」

「そうかも知れないですけど、行先についてはあの後に言おうとしてたから、彼女のはやとち――いたぁっ」

 トロンさんに頭を叩かれるエリンナ。ついでにヘッドロックをされていました。

「勿体ぶった言い方で死線を見たばかりだろうが」

 小声でしたが、聞き取れました。

 私、そこまでの状況を生み出していたのでしょうか?

 耳を疑い、裏切られるのかもと思ったのは認めましょう。それに、先ほどエリンナが言った通り、私も早とちりをしてしまいました。

 もしかしたら、怒っているように周囲には映ったのかもしれませんが、あのような恐怖に支配される空気が生まれる状況だったとは思えません。

 自覚が無いので、いまいち判然としませんが、二人の小声でのやりとりが終ったようです。

「とりあえず、ごめんね」

「いえ。私もすみませんでした」

 非があるのはどちらなのかと言えば、きっと私です。ですが、彼女に先に謝らせてしまったので、すっきり解決したと感じる事が出来ずにいました。

「よっし。誤解が解けたんだ、馬車は用意してあるから後は任せたぞ。エリンナ」

 トロンさんは、もう大丈夫だと思ったのでしょう。

 私でも分かるほど、エリンナに丸投げしました。

「え、酷い。団長、あんまりですよ」

「良いじゃないか。同性同士で歳も変わらんだろ。女友達との旅行だと思えば良い」

 私が捕まった時、エリンナに一人旅は危険だと言われたような気がしますが、今回は良いのでしょうか? 二人でも、女の子同士というのは危険に変わりないと思うのですが……。

「旅費を貰ってません。貰うものを貰わないと旅なんて出来ませんからね」

「必要なもんは馬車に詰め込まれてる。それでやりくりしろ」

「こちらにおわすお方をどなた様と捉えますか?」

 私の世界で言えば時代劇っぽい言い回しでエリンナが路銀の交渉を始めました。

 人との旅。それは一体どのようなものになるのでしょう。

 そして、隠れ里とはどのような場所なのでしょう。

 不安と期待が入り混じりつつ、私のワクワクは止まりません。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ