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聖女の乱進 ~無限の魔力で目覚めました~  作者: 鰤金団
聖女様、地上へ
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47 二人の旋律 解放の時

「へ、悪いな。俺はよぉ、夢を見ちまったんだよ。この逸材と奏でる夢をな」

(言いたい事は分かるけれど、分かりたくないッ!!)

 それはとても気持ちの悪い発言でした。状況が違えば、環境が違えば、きっと良い音楽系作品の登場人物の台詞になっていた事でしょう。

「く、くそぉっ」

 男は、プロの周りがやらないのなら自分がと、両手足が縛られている状態で暴れ出しました。

「行かせませんよ」

 今が重要な場面と、男の首根っこを捕まえた私は、ちょこんと座らせて阻止しました。

「ありがとよ、そっちの若いの」

 まさか、悪者にお礼を言われる日が来るとは……。

 プロは続けて言いました。

「良いか、よく聞けよ。俺はこの組織の副長だ。そこで二日酔いで蒼ざめて震えている団長の代わりに様々な仕事をしてきた。言っちまえば、俺こそが真の団長だ。洗い浚い全て話してやる。だから全員を解放しろ。そして、俺にご褒美をくださいっ!!」

 この状況でも未だ意識を取り戻さず、別の所に行っている男に視線を向けた後、エリンナに懇願するプロ。

(仲間の自由と引き換えに自分にご褒美を求めた!? ううん、違うっ)

 一瞬、仲間を売ったと思いましたが、場の雰囲気で錯覚していました。

 それにしても清々しいほどに(物の例え)堂々と自分を解放したプロ。

 その正体まさかの副長だっただなんて……。

 いえ、それよりも驚く事がありましたね。

「え、あなたは組織の上部では無かったの?」

「俺は、下っ端だよ。まだ雑用しかさせてもらえてねぇ」

 先程までのやる気ですっかり騙されていました。この展開を踏まえて思うのは、何て酷く粗い組織なのだろうという事。ペーペーの新人が副長の口封じを訴えるとか、誰が想像出来ましょうか。

 この展開のせいでエリンナに豪語した、豊富な知識があるという発言を取り消したくなりました。

「セントレディ。ちょっと」

「はうぁっ」

 私が一人で頭を抱えていると、耳元にエリンナの声が。気付けば傍に彼女が居ました。

「ちょっと、変な声出さないでよ。あなたもあちら側なの?」

 プロの方へと視線を一瞬動かして言うのは止めていただきたいです。

「いきなり耳元で囁かれたので、驚いただけですよ」

「そ、そう。良かった。ねぇ、助けて。本当に気持ち悪くて、触りたくないんだけど、あいつ」

 けっこうノリノリで責めているのかと思いきや、限界ギリギリで踏ん張っていたようです。

「私も同じですよ。椅子で突いて転がして外に出せば良いんじゃないですかね? 因みに、お仲間がこちらにやって来るという展開はありますか?」

 対処出来ないのであれば、他の人に頼むというのが、出来ない事を実現する秘訣だと誰かが言っていた気がします。

「私が馬車で運ばれている時から追跡してくれているのが居るわ。私が合図を送れば、突入班がすぐにやって来てくれるわ」

 それはとても心強いですね。

「では、早々に合図を出して、引き渡しましょうよ。ね?」

「そ、そうね。そうしましょうか」

 話が決まると、エリンナは部屋を出ました。

「お、おい。俺のご褒美はどうしたんだよ。この状況では俺が一番情報を持ってるんだぜ。なあ、話させろよ。そしてくれよ。気持ちいのを何発でもよぉ」

 このまま放置しては、プロの気持ち悪さが限界を突破しそうです。

 振り切られても絶対に気持ち悪さは残るでしょうから、ここらで静かになってもらいましょう。

「すみませんが、これで我慢してください」

 ビンタの動きをプロの前で数回しました。するとプロは、カクンと力が抜けて眠りました。

「お待たせ。直に来るわ。って、そいつ寝たの?」

「おかえりなさい、エリンナ。はい。ちょっと顔を扇いであげたらスヤーッと」

「へぇ……。今、息してるの?」

「はい、大丈夫ですよ」

 エリンナは、大丈夫だと言っているのに、プロの方を見ました。

 それでも信用出来ないとばかりに、口元に自身の手を近付けて確認していました。

 彼女の耳なら、そこまでしなくても分かるともうのですが……。

「大丈夫。問題無い」

「問題があったら今頃逃げてますよ」

「前例があるから笑えないんだけど?」

 ここは笑い所だと思うのですが……。

 このようなやり取りをしていると、彼女のお仲間が到着しました。

「では、私は仕事の邪魔にならないように隅にでも居ますね」

「それは良いけど、逃げないでよ?」

「そのつもりはありません」

 エリンナとの約束を信じ、別れる時はちゃんと言葉を交わしてから別れるつもりでした。

 それにちょっと濃い時間もあったので、休みたいですし。

 私は、騒がしくない場所を探し、外へ出ました。

 もう外はすっかり朝でした。それにしても、プロの空気に当てられていたせいでしょうか。

 朝の清さが身に染みる気がします。

「ん~、シャバの空気は美味しいなぁ~」

 体を伸ばし、深呼吸。開放感が私の体を満たしていました。

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