45 激闘!! 誘拐組織?
「とにかく、人が一番集まっている場所に行くよ」
ちょっと突っぱねる感じで言うエリンナ。
「宴会場のような場所に居るのでしょうか?」
「そういう用途にも使える広さね」
宴会と言う言葉は通じるようです。
付いて行くと、エリンナは足を止めました。
「この先に人攫い組織が? でも……」
彼女の反応からそうなのだろうとは思いましたが、疑問に思いつつ尋ねました。
「そう、なんだけど……」
私が違和感を覚えたのだから、彼女も気付いているはずです。
「でも、そういう感じじゃないのよね」
「確かに。それに静か過ぎませんか?」
先程、人が集まっているとエリンナが言っていたので、声は聞こえなくとも物音くらいは聞こえるはず。と思っていたのですが、火が消えたように静かです。
「え、嘘っ。そんな展開なの!?」
一人、彼女だけが動揺し始めました。
「エリンナ、中で何が起こっているんですか?」
「想像でならいくらでも言える。けど、ちょっと私も信じられなくて……」
どのような振る舞いをすれば良いのか分からないと、困り顔。
「私には分かりませんが、中に入っても大丈夫なのでしょうか?」
「うん、きっと大丈夫。私が先に入るから」
異変にも一早く気付けると、彼女はドアノブに手を置きました。
ゆっくりと傾くドアノブ。扉もゆっくりと開きました。
きっとこの先でバトル漫画のような白熱した展開が待っているはず。私の知識から導かれる未来予知がそう言っています。
エリンナ越しに、向こうの景色が見えてきました。
「……え?」
出方を見てから対策をと考えていましたが、その必要は無さそうです。
「声を抑えて。手早く済ませるよ」
忍び足で部屋に入るエリンナ。
彼女は実に手際良く、酒で眠っている悪党達を無力化していきました。
その速さは、もう全部彼女に任せて良いですよね、と思うほどでした。
「ふぅ。縛り漏らしは無い?」
「私も確認してから隅に運んだので、大丈夫です」
「そう。じゃあ、証拠探しね」
この世界で二度目の家探しが始まりました。
とは言っても、そちらの方の手際も彼女の方が良いので、私は書類を纏めたり、運んだりするくらいしか役目がありません。
それでも全てが終ると、すっかり朝でした。
「徹夜仕事になっちゃったね」
「力になれると思っていたのに、残念です」
「まさか、全員酒で潰れてただなんてね。この手の組織は、警備とかしっかりしてるはずだから驚いたわ」
「私も、こんな事になるとは思いませんでした。創作物でこの展開があったら大不評ですよ」
「あれ、聖女様なのにその辺りが分かるの?」
「大袈裟に言いますが、私の頭には、一つの事から万の道筋を想像出来るだけの情報が詰まっていますから」
結構大袈裟に言ってしまいました。自分の発言通りの事が出来たら、軍師として王国で指揮を執っていた事でしょう。
「好き物だねぇ。ぜひとも詳しく聞きたい所だわ」
「残念ながら、内容の九割はこちらの世界とかけ離れているので理解出来ないと思いますよ」
「今までは別世界とはいえ、そこまで変わらないみたいだったけれど、あなたの世界はそんなに違うの?」
「それはもう、かなり」
エリンナが私の世界に来たら、馴染めないか、適応し過ぎて戻ってきたくないと思うほどでしょう。なので、私の世界の快適さについては語らない方向で行こうと思います。
方針を決めた所で、縛り上げた組織の人達が居る広間の方で騒がしい声が聞こえてきました。
「どうやら目覚めたみたいね」
私の話を聞く機会を邪魔されたと、がっかり気味なエリンナ。
「時間があれば、こちらの世界に来た時からのお話をしますよ」
だからもう一踏ん張りですよと、彼女の肩に手を置いて励ましました。




