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聖女の乱進 ~無限の魔力で目覚めました~  作者: 鰤金団
聖女様、運ばれる
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36 とある少女との出会い

「あなた、頭は大丈夫?」

 これは間違い無いと、ちょっと表情が緩んでしまっていたら、私を心配する女性の声が。

 この世界に来てからというもの、とにかく頭を心配される事が増えた気がします。何故でしょう。

「大丈夫ですよ。何かで後頭部を襲われたとは思いますが」

 手が自由だったら、流れで後頭部を擦っていたでしょう。まあ、縛られているので出来ませんが。

「それは鈍器ね。こん棒とかで叩いて気を失わせるのが常套手段だから。でもあなた、怪我もしていないみたいね」

 ふふふ、そうです。襲われて意識は失いましたが、怪我はしていないという自信はあります。

「それは、私が聖属性の魔法を使えるからでしょう。体を鍛えても、不慮の事故には対処しきれないので、念のために防御魔法を使っていましたから」

 ですが、ダメージは防げても、衝撃は防げず、今の状況になっていますが……。

 衝撃も防げる防御魔法もあるという事でしょうか?

「そうなの。移動の途中で放り込まれてきたから、怪しいとは思っていたのだけれど……」

「あ、怪しい!? 私、全然怪しくありませんよ」

 気品溢れる振る舞いや、優雅で洗練された動きなんて出来ませんので、世間様には何処にでもいる一般市民としか見られないはずですし。

「いや、怪しいでしょう。このご時世に女の一人旅だなんて。しかも、外だっていうのに軽装だし。家や地元じゃないんだからさ」

 あ、そういう意味でも怪しいでしたか。確かに、先の村でもそこは指摘されていました。

「村の外では、鎧を着るのが当たり前でしたか?」

「そうじゃないけれど、武装とかするでしょ。それか、性別は隠すでしょ」

 なるほど。私は手荷物が無ければ、背負う荷物もありません。場所によっては、顔も体も隠さずに我が身一つで旅するだなんて、私の世界でもおかしな話です。

「確かに、言われてみたらそうですね。でも大丈夫です。私には鍛えた肉体がありますから」

 元の世界の頃と何ら変わらない細腕を彼女に見せました。

 私の鍛え抜かれた素晴らしい細腕に、彼女は目を丸くして驚いていました。

「可哀そうに。よほど故郷で酷い目に遭わされて、気が振れてしまったのね」

 今のは彼女が小声で言っていましたが、私の耳にはしっかりと届いていました。

「所でここは何所ですか? 私達は何処へ運ばれているのでしょう?」

 これ以上は要らぬ同情を向けられそうなので、話題を変えました。

 すると、彼女にため息を吐かれました。

「私達はね、人さらいに捕まったの。今はその根城にでも連れて行かれる途中でしょうね」

「ああ。では、予想は大体当たっていたようですね」

 やはり名推理だったと、私は喜びました。

「何を喜んでいるのやら。その服、何処かの屋敷で盗んできた物ね。現実逃避で外に出て、設定は貴族の娘?」

 盗んでいませんし、自前です。現実逃避は日常的に行っていましたが、流石に現実で身の丈に合わない立場を押し通せる強さはありません。

「先程から投げてくる言葉のボールがウニか栗レベルで痛いんですけど」

「ぼうる? うに? くり?」

 お城から逃げ出してから何日も経っていないはずですが、忘れていました。

 私とこの世界の人とは、根本的に話が合わないのです。

 恐らく、彼女が疑問符を付けて繰り返した単語は、この世界には存在していないのでしょう。

「初対面の人に対して、言葉に棘があり過ぎると言ったんですよ」

「え、そういう事は理解出来るんだ。私はてっきり、会話は出来るけれど、その辺りはおかしくなっているのかと思っていたわ」

「先程から私の事を正気じゃない人扱いするのは止めてください。私は至って普通の一般人ですよ」

 強く正気だと視線でも訴えました。

 そんな私の目を、彼女は品定めするように見つめてきました。

「……とりあえず、そういう事にしておくわ。今までの言葉はごめんなさい」

「まだ引っかかりますけど、まあ、良いでしょう」

 謝る前の視線が気になりますが、ここで言い争っても意味はありません。

「それじゃあ、改めて自己紹介ね。まあ、長い付き合いになる事は無いでしょうけど。私の名前はエリンナ。よろしくね」

 人当たりの良さそうな声で自己紹介。

 ここは友好の意思を示す場面だと思い、視線を彼女の手に向けました。

 今気付きましたが、彼女のみならず、周囲の人も手足をそれぞれ纏められていました。

 握手の文化があるのかは分かりませんが、これではどちらにしても握手は出来ません。

 私は、無意識に僅かに上がりかけていた手を引っ込めました。

 彼女は、笑みで私に挨拶をしてくれました。

 ここは私も同じように振舞いましょう。

「私の名前はセントレディです。栓が抜けない訳では無いので、勘違いしないでくださいね」

「ふぅん。そういう名前、ね。分かったわ」

 今の反応は何だったのでしょうか。

 気になりましたが、尋ねる前に御者の怒鳴り声が聞こえてきたので、渋々ながらも会話は強制終了となりました。

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