35 初めての馬車の旅 同乗者は皆目が死んでる
随分酷い揺れです。私は今、どうなっているのでしょうか?
視界が定まっていないので、記憶を遡ってみましょう。
三人と別れた私は、ガイの言葉を頼りに道を歩き続けていました。
よく森林浴とか言いますが、森や林だと虫が多いので、私はお断りです。
ですが、今歩いている街道はとても良いです。
森からは離れていますし、野生の動物が草を食べているからか、伸びていても足首くらいまでです。私の元居た世界とは違い、視界の中に人工物が見えないのも良いです。
歩きやすい道を優雅に伸び伸びと歩いて自然を感じるこの開放的な感覚は、外国に行った事の無い私には発見と驚きの経験でした。
うん、まだこの状況に繋がる状況では無さそうです。
もう少し後でしょうか。
道を進んでいると、三方向へと分かれている場所に着きました。
その内の二つはよく使われているようで、道だと分かりましたが、問題は最後の一つです。
轍らしい跡がありますが、ほとんど使われていないようで、雑草でほとんど道であった痕跡が消えています。
先に見えるのも、大きく育った木の先らしい部分。
距離があるので、途中の道が見えません。
なら、跳んで確かめればより確かだとは思いましたが、それは止めました。
(こういう時、荒れ果てた道を行くのは危険だと決まっています。無難な道を行きましょう)
開拓精神を持っているわけでは無いので、難度が高そうな道は選びません。
道はありますが、平地が続いているようですので、残りの二つの道のどちらを選んでも問題は無いでしょう。
真っすぐ進んできたので、私は真っすぐ進む事にしました。
決めて進み始めて、五分もしないくらいだったと思います。
後ろの方でガタゴト走る音が聞こえてきました。
(あ、凄い速さで近付いてくるのがある。馬? 人の声? 馬車?)
道中で動物とすらもすれ違う事が無かったので、ちょっと楽しみでした。
この世界での交通機関かもしれないと思い、振り返ろうとした瞬間です。
後頭部に強い衝撃を受けてしまったんです。
「ひき逃げ!?」
全てを思い出し、飛び起きました。この世界ではよくある事です。
集団からの視線が痛いです。ですがどうして皆、生気を失ったように暗く沈んだ目をしているのでしょう?
(この感じ……馬車?)
クッション性の欠片も無い硬い木の板張りの床。全方位を布で覆われているため、現在地は分かりません。今も続く揺れは、移動の途中だからでしょうか。
(雰囲気的にこれは大変よろしくないはず。こんな所とはおさらばするに限ります)
状況が分からないので、同乗している人達の事まで気遣う余裕はありません。
手遅れになる前に逃げ出そうとしました。
ですが、立ち上がろうとしたら、両手足が上手く動かせません。
何事かと思ってみると、手と足がそれぞれ纏められ、縛られているではありませんか。
(これは出荷という感じね。周りの人の様子も含めて考えると、人身売買ね)
私の名推理が光りました。




