32 裏切りの館 聖女様編
「おい、この頭のおかしい女は何だ?」
(頭がおかしい!?)
とても酷い中傷を受けてしまいました。これは酷い。
「村長。彼女が言った通り、扉が飛んでいったんだ。彼女の力で」
ガイが私をすかさずフォローしてくれました。さっすがリーダーです。頼りになります。
「お前までそんな幻覚を見たのか? これはいよいよ邪悪なるものが……」
村長の立場か、個人の意識かは分かりませんが、危惧はしていたようです。
「もしや、この女が邪悪なるものか!?」
また、酷い誤解でした。これは声を大にして否定しなければなりません。
「村長、違います。私は何処にでも居る普通の女子です」
「少なくともこの村では見た事が無いな。お前達はどうだ?」
「お、俺も、俺より強い奴は初めてで……」
「欠けた常識は数知れず。大陸外の人間の普通かも分からない」
「私達三人を一緒に空に放り投げたんだから、普通じゃないよ」
ガイ、カン、モンの順で私を普通じゃないとする証言が出てきました。
(あれ、私達、仲間じゃなかったの?)
村の状況を好転させるべく立ち上がった四人の仲間的な関係かと思いきや、私一人がパーティじゃなかったというオチ。よく考えると、先程のガイのフォローもフォローでは無かったです。
やっぱり、共に鍛錬を続けるような関係じゃないと仲間では無いという事でしょうか。
「ならば何故、そんな奴と一緒に居るんだ? 家を壊した張本人を縄にも掛けずに。聞けば野犬よりも酷いではないか」
なんと酷い言い草でしょう。自分の言葉にも少し、すこ~しだけ問題があるのは認めますが、野犬よりも酷くは無いはずです。
三人は、村長の問いかけに言葉が詰まっています。ここは私がズバッと答えなければいけない場面のようです。
「私達四人は、あなたを捕まえに来たのです。さあ、金庫でも何でも、重要そうな場所に連れて行ってください。そして、人質にしている子ども達を大人しく解放してください。ガイ。あなたの思い、ビシッと言ってやりましたよ」
告発だと訴え、声高に首謀者の席を明け渡すという、我ながら素晴らしい振る舞いです。
これで先程の心の傷も幾分かは癒えるでしょう。
「お、おまっ!?」
いきなり全てを丸投げされ、ガイは動揺極まり、伝えたい事を言えません。
「こいつ、村長よりもえげつない……」
「やっぱり、普通じゃなかった……」
他二人も、私に対して随分な反応ですが、仲間が売られたのです。そうもなるでしょう。
「お前ら、よくもこんな訳の分からない女を連れてきてくれたな。子ども達、敵襲だ!!」
村長の掛け声で、ワッと集まる武装した子ども達。
その手には剣や槍の中でもワンランク上な物が握られていました。
「いたいけな子どもをそそのかして、なんと外道な。モン、ガイ、カン。やっておしまい」
ちょっと時代劇風な展開になったので、私はご老公気分で言いました。
「いや、あんたが一人でやった方が速いだろうよ」
少し荒み気味で言うガイ。
「村の子どもに手は出せないよ」
慈悲深いモン。私なら他所の子だから後腐れが無いという事でしょうか。
村に禍根が残ってもいけません。私が憎まれ役を買って出るのが一番のようです。
「仕方ありませんね。子ども達、悪い大人に騙されてはいけません。そこな村長は、あなた達を出しにして、ご家族を遠くで働かせているのですよ」
親恋しければ、きっとこの言葉で心が動くはず。テンプレっぽくも名演説だと思いました。




