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聖女の乱進 ~無限の魔力で目覚めました~  作者: 鰤金団
聖女様と突撃豪邸訪問
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31 伝説 バーンドーンドカーン

「これはまた大きい扉ですね……」

 縦幅はお城の謁見の間の扉の半分といった高さでしたが、やはり村長という立場を考えても。これは豪華過ぎると思います。

 しかも両扉です。こんな屋敷を建てなければ、大人全員が出稼ぎに行く必要は無かったのでしょうか。

「なあ、あんた。その扉を開けるのは無理だぞ」

 ガイが私を止めました。確かに、外から簡単に開けられるのなら、防犯の意味がありませんからね。

「では、開けてもらいましょう。ノックをすれば良いですか? それとも、大声で呼べば良いですか?」

 見た所、ノックをする場所も呼び鈴も無いように見えます。

「村長は約束が無いと開けないんだ。それか、月末にある村民から税を収める日じゃないと駄目だ」

「余りにも機会が少ないですね。でも、三人なら問題は無いのでは? 村の見張りなら非常事態の特例くらいあるのでは?」

 私の問いかけに三人は無言で首を振りました。

「では、月末まで後何日ありますか?」

 一応、陰キャでも人としての常識があるつもりなので、なるべく正規でと考えていました。

「いや、新しい月になったばかりだろ。大陸の外とは暦が違うのか?」

 カンから鋭い指摘が返ってきました。多くを語ると、この世界にある大陸外の人間だというのも嘘だと見破られてしまうでしょう。

「わ、私、暦には縛られない系女子ですから」

 強がりで言ってみましたが、これはかなり頭が悪い。

「季節も自分で決める感じ? やだ、カッコイイ……」

 同性のモンだけが私に憧れてくれました。

 これはいけません。彼女には、一刻も早く正気に戻って貰いたいです。

「あんた、よっぽど良いとこの娘なんだな。生きるのが楽そうで羨ましいぜ」

「今、絶賛苦境中ですよ」と正体を隠していなければ言っていたでしょう。

 呆れが多分に含まれたガイの皮肉。流石に暦縛られない系女子は無理がありました。

「やっぱりこうなったら、私が開けましょう」

 このままでは私の印象が悪いままです。それでは追手が来た時にすぐに行方を話されてしまうでしょう。それではいけません。

 信頼や恩とは、自ら動いて勝ち取るもの。なので、積極的に動いていきましょう。

 体を解して準備に入りました。

「いや、だから無理だって。俺達三人が協力し合って無理だったんだぜ」

 私を随分と止めたのは、自分達が試し済みであったからでしたか。

 ですが、私は謁見の間の扉を一人で開けれる女子。あちらに比べたら小さいので、よほどの仕組みで重くなっていなければ大丈夫でしょう。

 やはりここは、良い所を見せるチャンスですね。

「三人とも。あなた達はこれから、伝説を見る事になりますよ」

 決め顔で言ってみましたが、気持ち悪い表情になっていたりはしなかったでしょうか?

 慣れない事をやってみると、抜けは無いかと抱く必要の無い不安に駆られてしまいます。

 思えば、決め顔なんて、クラスの集合写真でも上手く写れない私に存在しているのでしょうか?

 先程の台詞とか、行動とか、考えたらとてもとても恥ずかしくなってきました。

 これは早く別の流れを作る必要がありますね。

 とにかく早く、目の前の扉を開けましょう。

 私は、恥ずかしさも相まって、力みが入ったまま扉を押してしまいました。

 すると、ドラム式洗濯機よりも良く回って奥へと吹っ飛んでいく扉。

 駄目押しとばかりに、部屋を、壁を突き抜け、向こうの外の景色が見えていました。

「俺達が勝てる訳が無かったな」

「あの時、ガイをもっと止めていたら……」

 ガイがそう考えるのは分かりましたが、カンの言葉は何でしょう。私は三人を悪いようにはしていないつもりなのですが。

「す、すっごく元気な扉でしたね」

 空気の入れ替えが必要だったので、なけなしの明るさを振りまいてみました。

 三人が無言で私を見つめ続けていました。

 ええ、分かります。そうですよね。扉が生き物とか、頭のネジが飛んでますよね。

「あ、聖女様が力を貸してくれたんですよ。ほら、聖女様は不思議な力をお持ちだそうですし。困っている私達のためにお空に居る聖女様がキラキラ~って奇跡をこう、ドンガラガッシャ~ンって、ですね」

 適当に思いついた事を言っても、三人の視線は冷ややかでした。

(うう……。助けて、聖女様ぁ……)

 自分もその一人という触れ込みですが、全然救いが訪れません。当人は駄目なようです。

「な、何だ。今のおかしな音は!!」

 明らかに溜め込んでいらっしゃるお腹をのっしのっしと上下に揺らし、ヒーハーヒーハー息切れをさせながら二階から降りてくるあのおじさんはだ~れ?

「そ、村長っ!!」

 ガイのおかげで正体が判明し、お目当ての人と会えました。

「ん!? 何故開けてもいないのにお前達が!?」

 見覚えのある人にまず視線が向かったようで、私は後回しでした。

 息を切らせ、私達の前までやって来ると、前傾姿勢で呼吸を整えつつ、村長は続けます。

「それよりも、何があった? 妙に風通しが良い……イイィッー!?」

 甲高い声を上げる村長。高音がいける系の喉をお持ちのようです。

「お、おかしいぞ。動悸が止まらない。お前達、私の目がおかしくなったのか? 家に穴が開いているように見えるのだが?」

 先程から疑問符が消えない村長。その不摂生な体型での急な運動との合わせ技で、ラインを越えたストレスに襲われているのでしょう。

 このまま倒れられたら、私のせいになるでしょう。

 ここは、少し村長のストレスを減らした方が良さそうです。

「村長、扉が、扉が飛び出したんです」

 村民Aになりきってみました。

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