30 人の居ない村と三人の見張り
自分でもいきなり過ぎるとは分かっていましたが、三人は面白いくらい妙な声で驚いてくれました。
「ちょっと待て。今までの話の流れでどうして村長の家に向かう事になる?」
「だって、ガイ。先ほどカンが村長にも絞られていると言ってたではありませんか」
「言ったからって、どうしてあんたが村長と話を付けに行くような事になってるんだよ」
「ような、では無く、話を付けるんです。さあ、行きますよ。どうせ一番はぶりの良さそうな建物ですよね。ここからでもぼんやり見える、あの浮いている建物なのでしょう?」
「いや、まあ、そうだけど。まず放せ。引っ張るなっ!!」
三人引っ張るのは、彼らの服が破けそうなので、リーダーのガイを引っ張り、村に入りました。
「まあ、なんて活気の無い村でしょう」
嫌味ではありません。既に人が活動をしていてもおかしくない時間だというのに、人っ子一人見えていないのです。
「この村の大人達はどうしたのです? まだ、寝床で寝息を立てているのですか?」
若者三人に見張りを任せ、何と怠けている事か。どうしようもないと憤慨して見せました。
「違うよ。皆、出稼ぎに行ってるんだよ」
「皆が出稼ぎに? ですが、モン。それでも農作業する人くらいは居ますよね?」
「居ない。私達や子どもでやっているんだ」
この村を悪く言う事で、三人の重い口を開かせる作戦でしたが、内情は私が思っていたよりもかなり悪いようです。
「要するに子どもしか居ないという事ですか? どうして大人全員が出稼ぎに?」
私にはこの点が不自然に思え、引っかかりました。
「国に治める税が多すぎるんだ。この村での収穫だけじゃとても足りない。それを補うために外へ行くんだ」
味はともかく、お城での食事に貧しさを感じた事はありません。それはつまり、他の村等からごっそりと回収していたからという事でしょうか?
「カン。それでも子どもだけが残るというのは不自然かと」
この三人くらい成長した子どもが多いのであれば、農作業の指導も出来るでしょうが、同年代の人の姿も見えません。
「子どもは人質って事さ」
「人質!? カン。それは村長が?」
カンは不服そうな表情で頷きました。
ガイが憤りつつ言います。
「今は動物だけじゃない。邪悪なるものも居る。人さらいもな。だから子どもも一緒じゃ危険だって言うんで、大人が出稼ぎに行くんだ。その間は子ども達は村長の家に集められている。税分を持ってこなけりゃ、子どもに会わせないってな」
何と卑劣な。ガイ達が口淀んでいたのも、子ども達と関わろうとする人を守るためだったのでしょう。
「俺達は村一の腕っぷしを見込まれて、村の見張りをしていたのさ」
「そうでしたか。それにしても、なんとまあ……。」
村の外に居た時から大きいとは思っていましたが、村の中に入り、近付くほどに思います。
「この村にこの大きさ……。本当に必要ですか?」
もう一息という距離まで近付きましたが、やはり完全に浮いています。悪さの限りでも尽くしていない限り、この村でここまで大きくなる事は無いでしょう。
王国のお城と比べると二回りほど小さい感じですが、村にそぐわない華美な装飾は本当にお城のようでした。
「村を下に見られてはいけない。だから、王都の貴族様の家くらい立派じゃないといけないと村長が言ったんだ」
交渉するのなら、多少の見栄は必要でしょうが、あれはもはや下品なのではないでしょうか。
私はお貴族様の屋敷を知りませんが、もしこのレベルの派手さが普通なのだとしたら、お付き合い出来そうにありません。
外観だけでお腹いっぱい状態でしたが、中はもっと凄いのでしょう。想像するだけでため息が出てきます。
それでも私は、玄関扉の前まで進みました。




