29 間が悪い訪問
「でもよ、こうなったらいよいよ聖女様の出番だろ。王国は何をやってるんだよ」
ガイの不満が私の心に突き刺さりました。私としてはそうであるつもりはありませんが、聖女として呼ばれている事を一応自覚しているせいでしょう。
それにしても、私がここに呼ばれてからそれなりの日数が経っているはずです。
この村くらいの距離なら、既に知らせは届いている気がします。
「聖女様が現れたら、他の場所にも知らせが届くようになっているのですか?」
情報の伝達がどのようになされているのかは分かりませんが、気になったので尋ねてみました。
「そりゃあ、大陸の一大事だからな。そういう時は魔法で連絡が届くんだよ」
呼ばれた時、私は激しく抵抗をしていました。そこから王様は何かを感じ、成功の一報を広めなかったのでしょうか? まさか、あの削ぎ落し王子が有能さを発揮させた?
いえ、ありえないでしょう。まあ、その後も情報が無かったのは、私が引きこもりだしたからでしょう。
「そうでしたか。知りませんでした」
「そう言えば、珍しい見た目してるのもね。大陸の外の人なんでしょ?」
「はい。大陸の外も外です」
ここで、なんと私がお呼ばれされた聖女様です。キャピ~ンとかしたらどのような反応をするんだろうとか思いましたが、鏡の前での魔法練習のトラウマと新たな心の傷の胎動を感じたので止めておきました。
「それは随分と間の悪い時に来たな。いや、ここが駄目なら外の方に居ても変わらないのか」
「どういう事ですか? ガイ」
「ん? 簡単な話だろ。ここが邪悪なるものの島になったらよ、次は外だろ」
「その話を聞くと、邪悪なるものとは大陸以外では出ていないという事ですか?」
「そこまでは知らねぇな。前に邪悪なるものが出てきたのは随分と昔だって言うしな。当時の話なんて誰も知らないって。聖女様が現れて大陸が平和になりました。これだけ分かっていれば問題無い」
確かに、歴代の聖女様がやる事なんて同じでしょうから、歴史の教科書くらいの経緯も覚えている必要は無いのでしょう。
それにしても、疑問が残ります。私は、ただこの大陸に邪悪なるものが現れるという認識でしたが、本当にその通りで、ここ以外では現れていないのかもしれません。
もしもこの星全体に現れていたのなら、聖女教なる宗教が生まれているでしょうから。
ですが、この王国は聖女様を崇拝はしていましたが、宗教化はしていません。
語り継がれてきた史実から崇拝しているだけのようです。
「この国は、外の大陸と交流が無いのですか?」
外の情報が欠けているのではと思い、三人に尋ねてみました。
「それだとあんたがここに居るのがおかしいだろ。外の大陸から漂流でもしてきたのか?」
カンに言われ、しまったと思いました。私の行動から生まれた認識を除けば、異世界人であっても彼らは私と抵抗無く話しているように思います。
なので、頻度は分かりませんが、外の大陸とは交流があるようです。海沿いを探せば、港もあるのでしょう。
「そんな訳ありませんよ。ただ、こちらには初めて来たので、事情に明るくなかっただけですよ」
「荷物も無しで旅してるんだ。確かにそうだな」
カンは、その体格に似合わず、随分と臆病で細かい所を見る性格のようです。戦いの時の巨漢を生かした戦法とは大違いです。
(図らずも色々と情報が得られたわね。仕方ない。余り首を突っ込みたくないのだけれど……)
意味深な反応がありましたし、そろそろ動いているでしょう。なので、それを当てにして動くとしましょう。
「では皆で村長の家に行きましょう」
「「「うえぇぇぇ!?」」」




