28 正座の時間 眩しい答えと震える巨漢
「あの、そろそろ答えを……」
羨まし過ぎて、ジッと見つめていたら、警戒と怯えが混ざった表情でモンに言われてしまいました。
「う~ん。私としては、答えが出てくると思っていたのですが、仕方ありません。正解は匂いです。私は臭くありません。モンだって、汗臭いとか言われたら嫌ですよね?」
「いや、全然。汗を流すっていうのはそれだけ仕事をした証だもの。恥ずかしがる事なんて無いよ」
全力を出す、という事が何時の間にか出来なくなり、その証とも言える汗を否定した自分が恥ずかしくなるほどの答えが返ってきました。
「モンさんが眩し過ぎて見えない……」
憧れ筋肉どころか、その心構えにまでも憧れを覚えてしまうとは……。
彼女の方が聖女様に相応しいのではないかと思わずにはいられない。
「え、ええ、いあ、その、で、どうして私を襲ったんですか?」
動揺した私は、強引に話を変えました。
ガイとカンの視線を感じますが、何か言えば藪蛇になるので止めておきましょう。
「ほらほら。そう言えば、私を村を襲うとか酷い勘違いをしていましたね。どうしてですか?」
彼らからの視線の痛みを緩和させようと、無言な彼らを急かすように尋ねました。
「あの時も言ったが、土煙と共に近付いてくる奴なんて警戒しない理由が無いだろ」
「猛獣の集団の襲撃かと思ったな」
「でも人だったから驚いたよね」
ガイ、カン、モンの順で、私を警戒した理由について話してくれました。
「ですが、私は敵対する意思は見せていませんでしたよ」
「俺達、そういうのこそ警戒してるんだ。だって――」
「止せ、カン。こいつは余所者だ。ただ立ち寄っただけという言葉を信じるなら、何も教えるな」
私達、悩み事持ってますアピールのようにも受け取れますが、彼なりの警戒と配慮なのでしょう。
確かに、ガイの言う通り、私は通り過ぎるだけの存在。この世界の知識も無いのに関わるのもどうかと思いました。
考えていたら、お腹が鳴り始めました。
「そう言えば、朝を少し過ぎましたね」
空は十分に明るいですし、お城の方では今頃騒ぎになっている事でしょう。
「所で三人とも。ここはお城からどれくらいの距離にある場所なんですか?」
「おいおい、ここが何処か知らなかったのかよ」
「ええ。地図を持たずに走り出したもので」
迷った時には高く飛び上がれば良いと考えていましたし、最低でも半日走っていれば道すがら人の居る場所には出ると思っていましたから。
「女の一人旅なんでしょ? 流石に無防備過ぎだわ」
この点に関しては同性から心配してもらえました。匂いに関しては分かり合えなかったけれど、この部分はどこの世界でも共通の認識のようです。
「ガイ、モン。確かに地図を持って無いのには驚きだ。根本の話だが、そもそも彼女、手荷物すら持って無いぞ。旅を舐め過ぎている」
カンは、旅人として一番駄目な部分を更に挙げてきました。
「そう言えばそうだな。纏う空気が只者じゃ無かったから気付かなかったぞ」
「待ってよ、二人とも。もしかしたら追い剥ぎから逃げてきた可能性もあるじゃない。それならあの土煙も頷けるし」
「いやいや。モン、俺達三人はこいつ一人にやられたんだぜ。村の外はバケモンばかりかよ」
「猛獣よりも怖いとか、ブルっちまうよ」
その大きな体を震わせ、蒼い顔をするカン。
私をフォローしてくれているモンに「心の中でお願い、負けないでっ!!」とエールを送りつつ、場を静観していました。
「言われてみれば、彼女から追い剝ぎをするなんて異常よね。人間じゃないわ」
駄目でした。彼女は二人の発現の方が正しいと思ってしまいました。
「仮にこいつが逃げてきたって言うんなら、邪悪なるものか? この辺りまで来るようになったのかよ。もう滅びるの待つだけじゃねぇか」
「村長に絞られ、邪悪なるものにも絞られるのかよ。俺、萎んじまうって」
巨漢を震わせて言うカン。
「「「いや、それは無い」」」
私達は、カンの言葉に同時にツッコミました。




