26 天まで届け! 熱い絆の人間竹とんぼ!!
一瞬で距離を詰め、悪役顔で私と取っ組み合うガイ。
なるほど、分かりました。彼が最後に出てきた理由が。
「分かったようだな。俺は、カン並の力とモン並の素早さで動けるんだよ。どうだ、勝てるかよっ!!」
これはとても大変です。それぞれに秀でた人と同等の能力を持ってるだなんて。
昔、幼稚園時代に男の子達がロボットアニメで盛り上がっていたのを思い出しました。
二つ合わされば、最強。アニメ、漫画でよくあるお話です。私もそういう展開には胸が熱くなるので分かります。
ですが、彼は少し勘違いしています。
「これで勝てたつもりですか?」
ガイはとても驚いた表情をしていました。
彼が場の雰囲気で動き、冷静さを失っている証拠でしょう。
そもそもの話、私はモンとカンの両者に劣勢になっていないのです。
なので、両方の能力と同等の身体能力であろうと、こちらが負ける道理はありません。速さ×力で実力以上の力が出せる? それで押し負けるのは、それぞれが僅かでも優位に立つ事が出来た時だけです。全力を出してなお押し負けた結果です。
私はまだ、全力にはほど遠いのです。
「も、モン。カン。捨て身で抑え込むぞっ!!」
ガイは勘が良いようで、自分だけでは無理だと判断したようです。
一人で駄目なら、速さと力を一人分ずつ足せば良い。一人よりも二人で大きくなると、簡単な足し算でした。
二人がガイの言葉に従い、躊躇い無く私に近付いてきます。
(いけません。いけませんよ……)
この世界での命の価値なんて分かりませんが、ここまで実力差があると分かっているのなら、私が対話を望んでいるという事を忘れ、自爆はいけません。
がっつり私を囲む三人。異性云々を置いておいて、命を捨てる覚悟で必死な息遣いの人達に囲まれるのは、今の私でも怖いものがありました。
「俺達の命、お前にくれてやる!!」
「「おうっ!!」」
ガイの言葉に、勇ましく応えるモンとカン。作風が違うと思いつつ、これで終わらせようと決めました。
「一度頭を冷やしなさい」
私を掴み、離さない三人組。それならと、私はそのまま体を回転させました。
アワーフレッタさんのおかげで鍛えられた足腰で、最初は踏ん張っていた三人も今では傘のように広がっています。それでも離れないように頑張っているのは立派です。
「それでは良い旅を」
最後に彼らの腕を握り、痛みで私から離れさせると、空へと押し上げました。
グルングルン回転しながら上昇していく三人。
「人間竹とんぼですね」
見事に上がっていったと、嬉しくなって笑う自分。
(これ、悪女だ)
そう思わずにはいられません。
やはり私は、聖女には不釣り合いな一般庶民なのです。
三人組が屋根よりも更に高く飛んでいくのを眺めていました。
どんどん小さくなっていく三人でしたが、そう長く続くはずがありません。
勢いを失い、今度は加速して落ちてきました。
このまま地面と衝突すればただでは済まないでしょう。聖魔法でも傷の回復までなので、体は綺麗に出来ても、抜けた魂までは戻せません。
もちろん、そのような結果にはしない、させないので、良心は痛んでいません。
「それにしても、静かですね?」
悲鳴の一つ。いえ、三つでも聞こえと思って耳をすませば、風の音しか聞こえません。
目を凝らして三人の表情を確認すると、初体験の衝撃だったからでしょう。意識を失っていました。
「せっかくの空の旅だったのに……」
魔法でも使われなければ、今回のような体験は二度と出来ないでしょう。
三人が望むなら、もう一度してあげても良いと思います。ですが、その時は三人の時よりも高度が出てしまいそうですが。
その後、三人を空中キャッチした私は、気絶者の意識を取り戻す魔法を持っていないのに気付き、三人が起きるのをただ待ち続けました。




