22 戻る人 送る人
「アワーフレッタさん」
「どうしました、聖女様?」
何時もの魔力切れをシェマクを使い、アワーフレッタさんを起こした後です。
私は、慣れた足取りでポジションに戻ろうとする彼女を呼び止めました。
「私達、訓練を初めて何日目になりましたっけ?」
「……四日目ですね」
彼女の声のトーンが下がり、視線は遥か彼方を向いていました。
没頭していたので私は気にしていなかったのですが、私達は四日間もの間、一度も部屋へは戻っていません。
私は汗の臭いが体に染みついています。アワーフレッタさんの体は土の匂いが染みついていました。
「訓練はこれくらいにしましょうか」
振り返れば、元の世界の衛生観念的に酷いと思いつつ、言いました。
「ほ、ほほ、本当ですか!? 私、人に戻れますか!?」
(人に?)
訓練を始めてから今まで、ずっと人以外になった覚えは無かったので、気になりました。
ですが、その事について確認する時間はありません。
何せ、私の今の言葉をずっと待っていたとばかりに、私の言葉に嘘偽りが無い事を確認するため、迫ってくるアグレッシブアワーフレッタさんが居たからです。
「ええ、一日、お休みにしましょう」
そんな彼女の勢いに水を差す事は出来ません。私は笑顔で彼女に宣言しました。
すると、彼女の表情は、新品の電球のように明るく輝いていました。
「はい、休みましょう。人間、不眠不休で動くものではありません。私、今回の事でそれをとても理解しました。実感しました」
魔力切れで寝ていたし、それで休んでいたというのに、一度も休息を取れなかったというような発言が気になります。
ですが、今の彼女はきっと、解放感で一杯なので、表現も大袈裟になっているのでしょう。
「それではごきげんよう。アワーフレッタさん」
「はい、聖女様」
私を見る目を聖女に向けるものに戻し、歩き出すアワーフレッタさん。
長々と会話で引き留めるつもりは無いので、こんな簡素な別れで良いでしょう。
ご機嫌に去っていくアワーフレッタさん。
私は、その背中が見えなくなるまで見つめ続けました。
「あなたなら、きっと良い後任を育てられますよ」
誰の耳にも届く事の無い、彼女へのエールを送り、私も自室へと戻りました。
その後、溜まった汗を流し、食事を頂きました。
回復魔法のおかげで、不眠不休で動けていましたが、やはりこの世界のベッドは素晴らしく、秒で眠る事が出来ました。
自覚の無い疲れもあったのでしょう。生涯で一番早い睡眠でした。




