21 外法の対価
「私、成長期でも無いのに魔力の総量が上がってます!! 聖女様の呪いですか!?」
聖女とイコールにはならない単語を持ち出し、驚くアワーフレッタさん。
「どうしてアワーフレッタさんを呪わないといけないんですか。それに、呪えたなら私は魔女になるんじゃありませんか?」
「魔の者を遠くから魔法で呪い殺したとか殺してないとか。昔話で教わりました」
「曖昧な……。そのお話って、国がでっち上げた逸話では?」
いえ、でっち上げたにしても酷い内容です。そこは、聖女の心の光で浄化されたとかにしてほしいです。そう思ってみましたが、何だか背中が痒くなってきました。
「聖女様は騎士のような戦い方はしないと聞いています。なので、魔法主体だったはず。なので、聖女様だけが使える呪いの魔法があったのかもしれません」
彼女は聖女に、どうしても結び付いてはいけない単語を用いた魔法で勝利を掴んだ事にしたいようです。
「なら、その呪いの力でニットレッカーさんよりも魔力量の多い人にしてあげましょう。さあ、続けますよ、次期魔術師団長様」
呼ばれた瞬間、ちょっと嬉しそうな表情をするアワーフレッタさん。
「そ、そんなぁ。まだ部隊長だって務めていないのに、次の団長だなんて……」
否定していますが、その可能性を掴める可能性を実感しているのでしょう。
権力の放つ魔力を感じ、アワーフレッタさんは道を踏み外しそうな表情をしていました。
絶対に目の上のたんこぶとなる存在を置いておかないと駄目なタイプです。
(呪い、ではないけれど、代々の聖女に関わった人の中には欲をかいて身を滅ぼした人がいそう……。はっ、これが聖女の呪い!?)
私は、安易に人にシェマクを使わないようにしようと思いました。
発覚時にはこんなやり取りをしました。
それで、今はどうなのかというと、もう少しでニットレッカーさんに迫るほどだそうです。
何も知らなかった時に多めに送り過ぎたからでしょうか。魔術師の実力が魔力量だけで決まらない世界だと願うばかりです。
因みにですが、私との訓練開始時には全力の負荷魔法三回ほどで魔力切れをおこしていましたが、今の彼女はその三倍の回数を全力で使っても意識があります。
初期よりも数十倍の負荷と、範囲が広くなってのそれです。
尋常ではないほどの成長でしょう。
また、訓練開始時には魔法使用時には会話するのもむずかしかったのですが、熟練度が上がると魔法使用中でも会話をする余裕が生まれました。
私は陰キャなので、小粋なトークが出来ません。続きません。
アワーフレッタさんに余裕が生まれた事で、間が持たなくなった私は、この状況を打開するべく、それならと苦し紛れに、一緒に訓練をしようと誘ったのです。
再び静かな時間を取り戻すと、彼女は新魔法を習得しました。
名をグラビィ。
範囲魔法でした。対象者一人だけだったのが、今度は一定の範囲に負荷をかけられるのです。
一人、負荷の無い場所で鍛えていた彼女も、これで私と同じ状況で動けます。
新魔法の熟練度上げも必要だからと、理由を作り、彼女を負荷の世界に連れ込みました。
始めは全く動けなかった彼女も、今では私と同じ負荷の中で回数は少ないですが動けるようになりました。
二重の意味で訓練の効率化がされて嬉しい限りです。
後は時間差で、急激な魔力総量の増加による影響がアワーフレッタさんの体に出ない事を願うばかりです。
だって、今もまだ、毎回シェマクを使うと見えない何かを噴き出すんだもの。
と、個人的な懸念はありますが、アワーフレッタさんには三つも良い事があったので、何も問題は無いんです。
因みに、状態異常を受け続けた結果ですが、毒、麻痺、混乱、魅了、睡眠といったこの世界での有名な状態異常に対し、私は完全耐性を得られました。
これで私は、いやらしい攻撃をしてくる存在に襲われたとしても安心です。
筋トレの方も、私的には満足のいく成果が出ています。
お互いの魔法も随分と成長しました。
アワーフレッタさんのヘビウェイもグラビィも、今では全力で使うと、地面の方が沈んでいくほどに強力な効果を出せるんですから。
未だ上限は見えませんが、私の回復魔法はかなりのレベルになりました。
そうなると熟練度も上がりにくくなるはずですが、彼女の魔法の威力なら必ず一は上がってくれます。
アワーフレッタさんは、私が期待した通りの、いえ、期待以上の成長をしてくれました。
私は忘れません。
高威力ヘビウェイの中でスクワットをすると地面に沈んでいく足を。
状態異常てんこ盛りな状態で高速での腕立て、腹筋、背筋を平然と行えるようになった時の事を。
アワーフレッタさんが私に対し、聖女に向ける目をしなくなった事を。
初めての高威力グラビィで私が潰れた蛙状態になっていた時、安堵して溜息を吐くアワーフレッタさんを。
最高威力グラビィを受けた状態でランニングをして、私達が通った後がお堀になるくらい深く沈んだ事に気付き、笑いあった時の事を。
思い出すと、何だか卒業式の呼びかけの記憶が浮かんできました。
どんな内容だったかは何一つ覚えていませんが、卒業式というだけで良い思い出です。
さて、そんな訓練を続けてきた私は、ボディビルダーも腰を抜かすほどのマッスルボディになったと思うでしょう。
ですが、結論から言うと、私の肉体は血行が良くなり、肌艶が良くなった以外の変化はありません。
変わらない適度な細身体型のままです。
それでも身体能力は、こちらに呼び出される前とは比べられないほどに向上しました。
今なら中級威力以下の負荷魔法を受けた状態までなら、十秒経たずにお城を一周できます。
負荷無しなら、空中で二段ジャンプが出来る脚力を身に付け、腕で二足歩行が出来るようになりました。
そして、空中に跳んだら残像で球体が出来るほどの回転が出来るようになりました。
色々出来るようになりましたが、中でも空に拳を突きあげた時に、近い距離の雲に穴が開いたのはとても感動しました。
極まったと思ったのは、余り掴む箇所が無い場所でも自在に上り下りできる握力を自覚した時でしょうか。
ああっと、掴む場所のほぼ無い壁にある僅かなでっぱりを掴んで、片手で水平になれるほどの握力? 腕力? を自覚した時の事を忘れていました。
さて、私的にも、この世界的にも、身体能力的にも仕上がったので、そろそろ動き出すとしましょう。




