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聖女の乱進 ~無限の魔力で目覚めました~  作者: 鰤金団
聖女様、物足りなさからブレイクスルーに至る
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19 狂気の沙汰? いいえ、正気の沙汰!!

「アワーフレッタさん。良い機会なので負荷魔法はこれからも使い続けてください」

「はい。今は力が足りず、聖女様の求める成果に繋がらず、大変申し訳無く思いますが、聖女様の期待に届くように頑張ります」

 努力してもらえるのはこちらとしてもとても嬉しいです。

 なので、ついでにもう一頑張りしてもらいましょう。

「では次は、同時に私に毒とか麻痺の魔法を使ってください」

「……はい?」

 理解するまでに時間が必要だったようで、アワーフレッタさんは、三十秒は止まっていました。

「負荷をかけつつ、私に状態異常の魔法を使ってください。使うほどに成長するというのなら、状態異常だって重ねていけば耐性を得られるかもしれませんので」

 私の正気を疑うような瞳で見つめた後、アワーフレッタさんは言いました。

「ええっと、聖女様。混乱状態ですか?」

「いえ、全く全然」

「では、錯乱状態ですか?」

「普通に正気ですよ」

「まったまたぁ。自ら状態異常を望むなんて、そんな人居ませんよ」

 聖女なりの冗談だと自己完結させたようで、彼女は笑いました。

 でも残念。言葉通りに正気です。

「居ますよ、ここに一人」

「もう、聖女様ったら。冗談が過ぎますよ」

 まだ冗談だと思い、笑うアワーフレッタさん。私は、改めて彼女に問いました。

「ふふ、この目が冗談を言っているように見えますか?」

 その瞬間、アワーフレッタさんは真顔になり、私を見つめていました。

 その甲斐あって、私が如何なる状態異常にもなっておらず、本当に正気で言っているのだと理解したようです。

「あの、聖女様。とても不敬な発言になると思うので、とても気が引けるのですが……」

「溜め込まなくて大丈夫ですよ。大体想像できてますし、ちゃんと言った方が健やかな心でいられますよ」

 きっとこの後も彼女は似たような感情を抱くに違いありません。なので、初回のこの場で私達の関係を理解してもらわなければいけないと思いました。

 そう、私との特訓においては、行われる行為に対する感情は溜め込まなくていいと。

「そ、そうですか?」

「はい。どんどん言ってください。私はアワーフレッタさんとは友好的な関係でいたいですから」

 さあどうぞと、広い心をアピールするように彼女に手を向けました。

「な、なら失礼して。正直に申し上げますと、正気を疑っています。負荷魔法をこのように使うだなんて、魔術師団でも騎士団でもした事がありません。ましてや状態異常魔法だなんて……」

 これでも何重にもオブラートに包んだ表現なのでしょう。ですが、それでも包んだ感情が透けて見える辺り、この国の聖女に対するイメージは恐ろしいほどに清廉潔白だったのでしょう。

 爪先程度の汚れも許してくれなさそうだと感じるほどです。私の場合は、初めから聖女らしからぬ行動しかしてこなかったので、この国では異端の聖女として見られているのでしょう。

「そうですか。では、今後の参考にできますね」

 怒っていないですし、前向きに考えましょうと、私はプラスの発言をしました。

「検証は聖女様でしましたなんて言ったら、私の命が無くなりますよ」

 誰にも話せる訳が無いと、アワーフレッタさん。

 そう言われてしまうと、確かにそうなので、彼女の言葉を否定出来ません。

 だって、別世界の住人である私でも、大陸を救う存在を毒やら麻痺の状態異常にしたとなれば、その相手がどうなるか想像に難くありません。私的にはこの世界は中世な雰囲気なので、私が想像するよりも恐ろしい事がなされるかもしれませんし。

「もしもの時は、私が強引にやらせたと言えば大丈夫ですよ。王様なら、私が飛び込んだ時を思い出して理解してくれるはずです。それにこの訓練は、否定的な周囲でも、きっとぐうの音も出ないほどの成果を見せてくれるはずです。アワーフレッタさんと聖属性使いの人は忙しくなりますよ」

 今この時は新発見の瞬間であり、その瞬間に立ち会っているんです。私はそう訴え、アワーフレッタさんに微笑みました。

「聖女様の笑顔をとても怖く思う日が来るだなんて……」

 聖女の笑みは向けられれば心が癒され、幸福を感じるような素晴らしいものだと思っていたようです。

 ですが、そのような認識は私によって歪んでしまいました。

 当人としては、アワーフレッタさんだけでは無く、歴代の聖女様にもイメージを崩してごめんなさいという気持ちが無くもないです。

 それでも、一つ言わせてもらえれば、別世界の人の笑顔だけで心穏やかになったり、救われたりするような変化が起こるのであれば、それは聖女の体から何らかの精神に影響する危ないものが放出されているからではないでしょうか。

 少なくとも私は、基本的に家で過ごす小市民なので、そんな危険成分を放出していませんし、出来ませんから。

「さてと、そろそろ再会しましょう。負荷全力で毒入門くらいでお願いします」

「うう、助けて師団長……」

 ちょっと定食屋でアレンジを加える風で頼みました。

 アワーフレッタさんを、私はまだまだ逃がしませんし、手放しません。

 それを理解して、泣き言だけで耐えながら魔法を使うアワーフレッタさん。

(さあ、気合が入ってきましたよ!!)

 心の中で意気込みました。何て言ったって、私達の特訓はまだ始まったばかりです!!

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