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聖女の乱進 ~無限の魔力で目覚めました~  作者: 鰤金団
聖女様、物足りなさからブレイクスルーに至る
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16 見栄張るあなたにバックドロップ☆ ~これって私のせいですか?~

「せ、聖女さまぁ……」

 お城の庭に戻ってきました。アワーフレッタさんは息絶え絶え。

 私はというと……。

「やっぱり、まだまだ足が弱い!!」

 頭に巻いた布を地面に触れさせないという、忍びの訓練。それを人でやろうと思いましたが、今の私にはそこまでの速度は出せなかったようです。

 おかげでアワーフレッタさんが横っ腹を押さえて今にも倒れそうな状態に。己の未熟さが悔しいです。

 でも、今日の悔しさは明日の自分を変え、強さになるはずです。それに、そうなるためのアワーフレッタさんなのです。反省一秒、前進あるのみです。

「さあ、アワーフレッタさん。私に負荷魔法をかけてください。あなたの力が見たいです。全力でお願いします」

 まだ息を落ち着かせている最中の彼女にお願いしました。

「せ、せせ、聖女様に全力ですかぁ?」

 私のお願いに、彼女は自身の耳を疑ったように確認してきました。そう言えば、具体的に何をどうするのかという説明は王様にもしていませんでした。

「安心してください。もしも私が指一本も動かせなかったのなら、その時は負荷の度合いを下げれば良いだけですから。さあ、遠慮せずに全力でお願いします」

 この国が崇拝している相手にマイナス効果を与えるというのはかなり抵抗があるでしょう。

 ですが、そんなのは本人が問題無いと言っているのですから良いのです。

 そこを理解してもらいたいです。

「さあ、時間が惜しいです。早くしないとあなたを担ぎますよ」

「せ、聖女様に担がれるぅ!?」

 その光景を見た人はきっと思うでしょう。

「おい、あいつ、聖女様に持ち上げられているぞ」

「聖女様に自分を担がせるだなんて、何て無礼な奴だ」

「自分の方が聖女様よりも上だと、踏み台だと言いたげな振る舞いだな」

 とかなんとかと、そんな展開が待っているはずです。

「担がれるのは、い、いやです」

 まだ抵抗するとは。ならばと、同性としてはあまり使いたくない手を使わせてもらいましょう。

「そこまで嫌がるということは、負荷魔法よりもあなたの方が重いということですね。だから嫌がっているのですね?」

 聖女にマイナス効果を与える魔法を使うのは抵抗がある。聖女に自分を担がれることにも抵抗がある。それが彼女が首を縦に振らない理由です。

 ならば、担がれる行為に抵抗する彼女の体重の方がとても重いという設定で責め立て、彼女が魔法を使う方向に誘導しましょう。

「わ、私の体重はそんなに重くありません。そうです、玉子二個分くらいですよっ!!」

 否定だとしても、誤魔化すにしても、かなり無理のある重さ設定をする人だと思いました。

 追い込ませ過ぎたでしょうか。

「流石にその発言は盛り過ぎ……。いえ、減らし過ぎではありませんか?」

「な、なら持ち上げてみてください。私、絶対軽いですから」

 意固地にさせてしまいました。自分で撒いてしまった種です。しっかり収穫して引導を渡してあげるのが一番の方法でしょうか。

「分かりました。では、担いでみましょう」

 結局担ぐことになったと思いつつ、私は彼女の背後に回り、お腹の前で手を組みました。

「ではやりますよ?」

「はい、どうぞ」

 この時、彼女が小声で何かを言ったのは分かりましたが、その言葉を聞き取れなかった。

 小柄とはいえ、人一人の重さです。少なくとも三十~四十キロの重さはあるだろうと考えて持ち上げました。

「え、うそ、かっる!?」

「ぐへぇ」

 自分の想定を越えた軽さに、勢いが付き過ぎてバックドロップをしてしまいました。

 自分がやらかしてしまった罪の重さに血の気が引きました。もしかすると、取り返しのつかない事態になってしまったのではと、怖い上に確認する勇気も無いので、組んだ手を放せずにいました。

「どうですか? 私、玉子二個分でしたよね?」

 恐怖に震えていると、そんな場合じゃないと言いたくなるほどにのんきな声が聞こえてきました。私は先ほど、人が出しちゃいけない声を出していたと思ったのですが……。

(はっ、生きてる!? 私、無罪なのね!!)

 彼女が私に問いかけた事実に時間差で気付きました。

 そうです。会話が出来ているなら何も問題ありません。私は喜び、手を放していました。

 すると隣りにドサッと鈍い音が。音の方をを向くと、顔面から落ちていったアワーフレッタさんが。

(こ、これ……。私のなの!?)

 非はどちらにあるのか。それが問題でした。

「ずびばぜん、聖女様。がいぶくばぼうをぼべばいじばず」

 先ほどのは意地だったのでしょう。疑いが晴れた彼女は、地面に顔面を置いたまま、回復魔法を求めてきました。

「え、ええ。もちろんします。使えます。使います」

 起き上がらない彼女がちょっと怖くて、動揺していました。でも、自分の罪がそれで帳消しになるならと、私は声を震わせつつ言いました。

「あじがどぶごばいばず」

 顔を上げ、こちらを向いた彼女は、鼻ぺちゃで歯と歯の間の風通しが良くなっていました。そして、鼻と口の辺りにはケチャップ(比喩表現)がべっちゃりと付いていました。

「いやぁぁぁぁ。回復、回復、回復ぅぅぅぅぅ」

 回復という単語を繰り返し、回復魔法の連射をしました。直視はしないようにしていましたが、アワーフレッタさんの顔が電気のスイッチを連続で切り替えているようになったのは分かりました。人間電球というあまり深堀したくない単語が頭の中で生まれてしまいました。

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