15 怯え顔のニューフェイス
「王様、聖女様。大変お待たせいたしました」
聞き上手だった王様に、私の世界の事を話していると、ニットレッカーさんが到着しました。お城は中々に広いというのに、三十分もかかっていません。
どちらに居たのかは分かりませんが、急いでくれたのでしょう。
「いや、かまわない。エレナ様の世界の話は興味深かったからな。それで、事情は既に兵士から聞いているな?」
「はい、王様。適任者も連れてきました。アワーフレッタ、前に」
「は、はいぃ」
ニットレッカーさんに呼ばれ、後ろから現れたのは、この状況に怯えきった様子の小柄な女性でした。
(この人からは同じ香りがするわ……)
同類のシンパシーとでも言えば良いのでしょうか。きっと私達は分かり合える。そんな気がしました。
「あ、あわわわフレッタです。わた、じ、自分は、状態異常を起こす魔法を習得しています。相手の動きを鈍らせる魔法も使えます。はい」
下あごガクガク、体はブルブルで自己紹介。私も人の事を言えませんが、頑張って、負けないで、と応援したくなるほどでした。
「確かに、エレナ様の要望通りのようだな。エレナ様、如何でしょう?」
お眼鏡に適うだろうかと、王様。きっと、あの王子ならその様な事はせずに決めていたでしょう。そこが年季か器の違いなのでしょう。
「ニットレッカーさんが選んでくださった方です。なのでその実力も確かなものだと信じます」
魔術師団の人数や層の厚さなどの事は一切分かりません。ですが言葉通り、私は魔法について教えてくれたニットレッカーさんを信じていました。
関わった時間はとても短いので、元居た世界の人がこれを見たら、大丈夫? 数時間程度しか接していない人だよ? とか思われそうですが、もう二つ信じる根拠がありました。
この国で持て囃されている聖女の願いです。そんな相手が条件を提示して、全く役に立たない人を連れてくる訳がありません。
それに大事にしている相手に素行が悪く、問題のある人物を推薦する訳がありません。
師団長のニットレッカーさんが連れてきたのです。アワーフレッタさんの腕は確かなのでしょう。
私は、王様、師団長、聖女に囲まれて震える彼女の手を取りました。
「え、あひゃっ!?」
「始めまして、アワーフレッタさん。突然呼び出してしまって申し訳ありませんでした。急に連れて来られて不安でしたよね。ですが、アワーフレッタさんのお力が私にはどうしても必要なのです。お願いです。私に力をお貸しください」
彼女の揺れる瞳を見つめて頼みました。
「せ、せせ、聖女様が私を頼ってるぅぅぅ。私、生贄でも何でもしますぅぅぅ」
聖女が生贄を求めちゃ駄目だと思います。けれど、今の彼女の言葉は、全てを受け入れるという旨の発言と取りました。もう逃がしません。
欲した人材を手に入れた。そうとなれば、もうこのような場に用はありません。
「では王様、ニットレッカーさん。しばらくの間、アワーフレッタさんをお借りしますね。ああ、それとですが、彼女とは寝食を共にしますので、彼女の食事と眠る場所の用意をお願いします」
「分かりました、エレナ様。アワーフレッタ。聖女様の願い、しっかり果すのだぞ」
「は、はいっ!! 王様っ」
「アワーフレッタ。これは君にとっても成長出来るとても良い機会となるでしょう。しっかりとお役に立つのだぞ」
「師団長。私、頑張りますっ!!」
それぞれの激励の言葉に、先ほどとは違い、少し凛々しさの増した返事をするアワーフレッタさん。
挨拶が終わったようなので、私もそろそろ動き出しましょう。
「じゃあ、アワーフレッタさん。お願いしますね」
「はい、せいじ――」
アワーフレッタさんの方の都合も良くなったからと、私は彼女の言葉が終る前に手を取りました。
いえ、少し訂正しましょう。緩い手つなぎでは彼女が降り落とされてしまうので、それこそ男の友情と呼ばれるような、しっかりがっちりとした握手を一方的にして、玉座の間から走り去りました。




