14 逸材を求めて
(相談するなら誰? ダイブロス王子? それともマクシタテルンさん? 多分違う。私が求めている答えを持つのはニットレッカーさんだ。でも、そこじゃ駄目。待たされてしまうだろうから……)
一秒だって無駄にしたくない。それが可能な相手が誰なのか。
ターゲットを決めたら迷う事はありません。
城内をズンズン進んで行きました。すれ違う人達が驚きの表情でこちらを見ているのも気にせず、突き進みます。
途中、道を尋ねつつ、目的の場所に到着しました。
ですが、すんなり通れません。目的地手前の扉には、二人の兵士が躊躇いがちに私の道を阻んでいたからです。
「聖女様、お会いできて光栄です」
自分が対面するとは思わなかったという反応。兵士の二人には一生ものの思い出になるかもしれませんが、今はそれどころではありません。
「そのようなやり取りは不要です。すみませんが、この先へ通してください」
前置きなどどうでもいい。今必要なのは、私の求めに最速で応じてくれる人が居るかどうかだけだから。
一歩踏み出すと、兵士達は私の道を塞ぎました。
「この先は玉座の間でございます。いくら聖女様といえど、準備無しには通せません。ご理解ください」
「確かに、王様に事前の知らせも無く面会させてくださいというのは無礼で非礼ですね」
二人の言う事に異論はありません。私も納得していました。
私の言葉を聞き、兵士達が引き下がってくれるものと思い、安堵した表情になりました。
「ですが、私は押し通ります。押し通らねばならぬのです!!」
兵士二人の体を掴んだ私は、そのまま自分の後ろへと二人を引き倒しました。
鎧と武器を装備した兵士達です。本来なら引きこもりで陰キャな私がどうこう出来る訳がありません。ですが、トイレットペーパーのお徳用を放り投げるくらい簡単に動かせてしまいました。
残るは、とても重そうな扉。私の身長の三倍はある大きな両扉です。でも、先程のことがあったからでしょうか。簡単に開けられそうな気がしていました。
片方の扉を押してみると、隣りの方も動きました。どういう仕組か分かりませんが、同時にでなければ開けられないようです。ここまで攻め込まれた時の最後の抵抗でしょうか。
そのような想像をしつつ、更に両方の扉に触れ、押す力を強くしました。
そしたら、ちょっと建てつけの悪いドアぐらいな抵抗を感じる程度で開きました。
奥を見ると、百メートル走が出来そうな長い廊下と、何十人横並びに出来るの? というくらいの横幅の広間に出ました。
最奥には、段差の上にご立派な椅子がありました。
(如何にもな外国の玉座ですね。ああ、あそこに居るのが……)
中腰状態でこちらを見ている渋めな人物。あれが王様でしょう。玉座の隣には大臣っぽい人が顎が外れているのではと心配になるくらいに口を開け固まっていました。
護衛の兵士達も武器を構えつつ、現れた私の姿に動揺しているようです。
と、状況把握はこれくらいにして、そろそろ私の目的を果すとしましょう。
臆することなくずんずん進んで行きました。
「ま、待ちなさい。ここにどのような用件でやって来たっ」
兵士越しに大臣っぽい人が王の前に立って言いました。
この距離なら王様にも聞こえると思い、声を出そうとしました。
ですが、その前に王様が動きました。
「待て、大臣。この方は聖女様だ」
王様の言葉に、私を二度見する大臣。
「セ、聖女!? さまぁっ!? あの扉を一人で開けるような聖女様がいらっしゃるわけございませんっ」
これまた随分と強調してくださる。
確かに、普通は一人で開けるような感じじゃない仕掛けだとは思いましたけど、私が出来たんです。鍛え上げられた兵士の皆さんなら出来るに違いありません。
大臣の発言に心の中で不満言っていると、王様は玉座から離れ、私の元までやって来ました。
そして、跪き、私に頭を垂れました。
国一の権力者にそんな事をされては、小心者の私が慌てるのは当然です。
私も姿勢を低くして、王様に呼びかけました。
「お、王様。そのような事をしないでください。私はただ、お願いをしたいと思っただけなのです」
強引ではあるけれども、私の望みはそんな仰々しくされるようなものではありません。
「私にですか? そうですか。国を明け渡せば良いのだろうか?」
聖女様がやって来ただけで、簡単に手放そうとしないで欲しいです。あんな扉の仕掛けまで用意しておいて、玉座が軽過ぎやしませんか?
「そんなお願いをしに来たんじゃありません!! まずは立ち上がってください。お願いします」
「聖女様にそう言われては仕方が無い。では、立たせていただきましょう」
私がホッとするのを見て、王様は柔らかい笑みを見せました。何かの片棒を担がされた気分です。
一国の王様というだけあって、食えない感じです。
「さて、息子から報告は上がってきていますが、こうしてお会いするのは初めてですね。我が名はオットデキンダー・エルルート。ダイブロスの父でもあります」
王子とは違い、やる気を削がない王様。王子は何故、ああなったのか……。
「こちらの世界での礼儀作法には疎いもので、挨拶に失礼がありましたらすみません。私は高沼恵令奈と言います。こちらの名前風に言いますと、エレナ・タカヌマとなります。聖女と呼ばずにエレナと名前をお呼びください」
ぺこりとお辞儀をし、名乗りました。
「では、私もオットデキンダーと呼んでいていただきましょう。エレナ様」
気さく、と言って良いのか分かりませんが、中々に距離を詰めてこようとする王様。
「王様を名前で呼ぶだなんてそんな、恐れ多いです。王様の事は王様と呼ばせてください。私は名前呼びでかまいませんので」
何より、呼んでいたらそのうち噴き出しそうなので、名前呼びは回避したかったのです。
「そうですか? では、聖女様を困らせてはいけないので、そうさせていただきましょう」
読めました。先程から、場の空気を和ませるのが目的だったのでしょう。
王様がまた笑みを浮かべました。
この王様との会話の後、周囲に居た大臣や兵士達が警戒を解いていました。
何をどこまで考えているのかは分かりませんが、やっぱり接し方には悩んでしまいます。
「さて、エレナ様。今日は何故、こちらに?」
そうでした。挨拶が終れば、今回の目的を達成して早くこの場を去りましょう。
「はい、王様。実は、負荷を与える魔法の使い手を探しているのですが、魔術師団の中にそのような方は居ませんか? もし居たのなら、その方に力を貸していただきたいのです」
「ふむ……。魔術師団というのならば、ニットレッカーだな。エレナ様、少々お待ちいただけますか?」
「はい。いくらでも待ちます」
ということで、兵士がニットレッカーさんを呼びに行って戻って来るのを待ちました。




