私が欲しかったもの
妹にまだ信頼されきってないと思ってしょぼくれていると、遠くの方から物凄い速さで土煙が迫って来ました。
「え、今度は何!? お姉ちゃん、なんか来てる。巨大ミミズかモグラだよ、あれ。たぶんそうっ」
危険が迫ってきたら、真っ先にお姉ちゃんの所に来る恵理那、可愛い。流石は私の妹ですね。
心が半回復したので、皆には私の後ろに移動してもらいました。
そう言えば、この世界で初めて人以外の生物に出会う気がします。人懐っこければ、ふれあいを希望しますが、どうなるでしょうか?
相手の出方を見極めるため、身構えて待ちました。ですが、その必要は無かったようです。
「アワーフレッタさんっ!!」
私の盟友である彼女の声が土煙の中から聞こえたので、警戒を解きました。
「今、エレナ様の声が!? 幻聴!!?」
違う、違います。そうではありません。ですが、視界が遮られているので、下手な事を言ったら攻撃されそうです。
そうこうしていると、土煙が晴れてきました。その中から現れたのは何と……。
「人間神輿ぃぃぃ!?」
これは、妹に見せて良いものなのでしょうか?
アワーフレッタさんを担ぐ下の三人は何者なのでしょうか?
「えっと、恵理那。あれは騎馬戦って、ほら。それ、運動会。そう、運動会のね――」
混乱と困惑混じりに説明をしようと頑張りましたが、私の盟友の衝撃的な登場にうまく誤魔化せません。
「ううんと、この人達もお姉ちゃんの?」
友達かと、確認するように首を傾げる妹。そうだと、何なら一番関係性の深い人ですと紹介したい所ですが、現状的に言葉が詰まります。
「ねえ、アワーフレッタさん。訓練中のあなたがどうしてここに? それと、下のは何?」
いっぱいっぱいな私の代わりに、エレナが訊ねてくれました。
「空が割れたのです。駆けつけない理由がありますか? いえ、それよりも、そこに居るのはエレナ様ですよね? どうしてここに?」
アワーフレッタさんが説明を求めていますが、私も彼女に説明をして欲しいです。
「ええっと、あの亀裂はエレナが作ったの。それで、彼女の傍に居るのが妹さんのエリナよ。で、そのこの世の崩壊後に時の権力者乗って良そうな人力の乗り物は何?」
脳内にはその絵面が浮かんでいますが、どうせ言葉にしても妹すらも理解されないだろうと言葉にせずにいましたが、エレナがズバッと言ってくれました。
「彼らは、訓練成績の良い三人です。私の足よりも早く訪れる事が出来る手段として考案していた移動手段です。エレナ様の足を見て思いつきました」
それを聞くと、やっぱり人体に勝るものは無かったようです。共通の認識が生まれていた辺り、やっぱりアワーフレッタさんです。
私は、ほらねとドヤ顔で妹に視線を送りました。すると、妹は私の両手を掴んで何とも微妙な表情で顔を横に振っていました。
やっぱり足が重要だと、三度目の動作をしようとしたのを止められてしまった形です。
「うおっほん」
わざとらしい咳でした。それは王様の方から聞こえ、私達はオットデキンダー王の方を向きました。
「再会は喜ばしいのだが、一度収拾をしておかないかね?」
確かに、ドンドン人が増えているので、話の切れ目が無い状況でした。
「そうですね、王様」
私も同意すると、王様は話を続けました。
「では、エレナ様。こちらに戻られた理由を教えてもらえますかな?」
「そういえば、私も何でこっちに来たのか聞いてない」
恵理那も、他の皆も聞きたいとこちらに視線が集まりました。
「世界に危機がーとかじゃないんです。ただ、忘れ物があったので、それを貰いに来たんです」
「忘れ物? それは一体……」
自ら空を割り、戻って来るほどに重要な物とは何かと皆。
「あの時、全部終わったらお礼をしてもらえると約束しましたよね、王様」
「ああ、確かに。なるほど、そういう事か。やはりエレナ様は愉快なお人だ」
大笑いする王様。
「ねえ、お姉ちゃん。何をしてもらおうと思ってたの?」
「ん~? それはね」
私の後に続き、王様以外が声を揃えました。
「それは?」
勿体ぶるつもりも無いので、すぐに答えました。これで目的達成です。
「ベッド。あ、恵理那の含めて二台で」
完