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92 今見せる これが強化型聖女だ!!

 テンション高く、高らかに宣言する私。

 ふと、頭に過るのは強化型聖女様。アルティメット聖女様という単純明快なパワーアップと一目で分かる肩書。溢れ漲る力で私の体は明るくなっている事でしょう。。

 二人に言っても何の事か分からない顔をされるか、また呆れ顔をされるかのどちらかなので、これは言わないですけどね。

 メカ系なら、ここで全身からよく分からないものが噴出するのでしょうが、生身の人間にそのような芸当は出来ません。私がやるのはこの一言だけ。

「ケチルナ」

 情緒も捻りも何も無い、たった四文字の強化魔法。アワーフレッタさんの部隊の皆さんとの訓練のおかげで、使う頻度が増えました。また、回復魔法の熟練度上げと似たような感じで、相手の強化の上げ幅が大きいほどに熟練度上げの効率が上がっていました。

 今ではアワーフレッタさんの全力負荷の中で、部隊の皆さんが不眠不休の四連徹夜後にする歩行くらいまでは強化する事が出来ました。

 皆さんのホラー映画を思わせる只ならぬ雰囲気は、一長一短では表現出来ない悪漢の空気でした。

 負荷魔法を四分の一程度の威力に抑えれば、そこらの敵は指くらいしか動けません。

 強化魔法無しの部隊の皆さんなら、その中を普通に動けるほどに成長しているので、ちょっと育て過ぎてしまった感がありますが、気付かなかった事にしましょう。

 得た力をどう使うのかは、個人、或いは上に立つ王様が考えれば良い事ですから。

 と、私以外の人の訓練成果を思い出すのはこれくらいにして、私は拳を握りしめ、空を見上げました。

「エレナ、大体の場所の目安は出来てるの?」

「大丈夫です。それに、恐らくですが、高さが合っていたのなら、場所など何所でも良いのだと思います」

 一定の能力を持っていたのなら、何時でも誰でも出来たと思います。

 もしかすると条件に聖女のみとあるのかもしれませんが、そこを確認するための私と同等の身体能力を持つ人が居ないので、検証出来ません。

 私がこの何も無い平原を選んだのは、失敗した時の着地を考えての事。

 お城の敷地内で届かなかった場合、人の居る場所に落ちてしまうかもしれませんから。

 前回抜けていた安全面を考慮しての事でした。

「それってどういう事?」

「こういう事です」

 私は、右手を握りしめると、腰の位置まで持っていきました。

 そして、そこから全力で空へと突き上げました。

 負荷無しの強化状態では、後から遅れて巻き上がる風が起こり、空に亀裂が起こりました。

「どうです? 第一段階が成功しました」

 これが成功しなければまた鍛え直しで、王様と挨拶をした意味も無くなる上にかなり気恥ずかしい思いをするので、結構不安でしたが何とかなりました。

「うわー、本当にやっちゃったよ……。空を割るとか、どんな聖女さ」

「聖女様の極み……。いえ、人の極みですか……」

 方向性は違いますが、驚く二人。

「それでは、亀裂が何時まで残っているのか分かりませんので行きますね」

「あ、うん。そうだね。頑張ってね、エレナ」

「改めて、気を付けてくださいね、エレナ様」

「お土産話をしっかりと持って戻るので、楽しみにしていてください」

 笑顔で手を振ると、助走の為に駆けだしました。

(さあ、今度こそ届かせてみせます)

 現状で考えうる事は全てしました。前回よりも体と強化魔法を育てたので、途中で何かしらの妨害を受けたとしても、最低でも二倍の身体能力になっています。

 後は亀裂に妙な壁とか結界の類が無ければ、前回のリベンジは達成されるでしょう。

 迷いを持たず、目指す場所を視界に捉え、私は空高く、亀裂へ向かって跳びました。



 パリン



 薄い何かが割れたような音。目を閉じていた訳ではありませんが、気付いた時には地上は遥か遠くにありました。

(前回よりも高い場所。やった! 成功した!!)

 心の中でガッツポーズで喜んだ途端に、頭を中途半端に柔らかく、その後に硬い何かに激突しました。

「ゴッドォォォッ」

 覚えがあるような、無いような人の声が頭に響いてきました。

 激突し、引っかかったままのそれは、勢いが無くなる途中で落下していきました。見下ろす形で確認出来たぶつかったそれは、引っ繰り返った状態の人の形をしていました。

 その正体を見た時、私は驚きました。

 巨大な人の形をしているのは分かるのですが、目や鼻。口や耳どころか、人の体にある筋肉や骨の浮き出ている箇所が一切無い存在が居たのです。その姿は、全身のっぺらぼうという表現が相応しいように思いました。

 勢いが止まり、私は亀裂の向こう側の地面に着地しました。

 すると相手は、体勢を変え、四つん這い状態で私に言いました。

「ふぅー。ズドンと来たねぇ」

 ねっとり。いえ、ネットリでした。

(前聞いた声と同じだとは思いますけど……)

 こんな感じだったでしょうかと、外見が分からないので別人と疑ってしまいます。

「顎が割れそうだったよ。随分仕上げてきたね」

 呼吸荒く、言う相手。悔しいと言うよりも、何だかうれし……そう?

 荒い呼吸が意味深に思えてきました。

「えっと、以前の声の……人?」

「如何にも。神である。邪悪なるものの、いやエルルートの王が言っていたであろう」

 背後を輝かせ、威厳を演出する神。

 古の時代のコメディ番組で大活躍した演出を思わせるそれに、何それ? と私は棒立ちです。

「その、なんと言いますか……ごめんなさい」

 一応、突然の一撃を加えた事を謝罪しているという認識でしたが、言葉にした後でその認識が揺らぐほどの絡みを相手はしてきました。

「ダメー。その謝罪、解釈違い。やり直しの一撃を要求する!!」

「やり直しの……一撃?」

「ズバーンと。ズドーンと。さあ、来るが良い。焦らしは求めていない。求めていないのだけれど!! ちょっとあっても良い」

 わ、分かりません。私の認識の範疇の外で生きている相手過ぎて、どうすれば良いのか本気で分かりません。

 この分からなさ。まさに神っ!?

「そこで神と認識されるのも認識違い。もっと他に認識する場面はあったはず。起こっていたはずだ」

 断言されても、急には出て来ません。何故なら、相手のキャラに付いて行けてないのですから。

「3、2、1。はいダメー。無回答という事で罰を与えなさい」

「ば、罰!?」

 思い出す時間も与えず、コメディみたいな感じの速いカウント。

 言えなければ罰とは、神の考えがまるで分かりません。

「でも、耐えてみせます。ここまで来て負けられません」

 防御姿勢で身構えました。

「その心意気や良し。流石、肉体派聖女だ。さあ、我が身に罰をっ」

 神が両手を広げました。ゲームで言えば全体攻撃のターンでしょうか。

(光線でも出すのでしょうか? それとも召喚系?)

 腕の隙間から、神の攻撃を見極めようと瞬きせずに待ちました。

 ですが、何も来ません。

 神は両手を広げたまま。私は防御姿勢を維持したまま。無音の時が流れました。

「じ、焦らすではないか。その思考もまた、一環なのだな。流石だ、聖女よ。己を鍛え続けただけの事はある」

 腕の維持が辛いのか、ちょっと、いえ若干、体を震わせ始める神。

(発言の意味が分かりません。はっ、まさか、精神攻撃系!? 何か来ると思わせての焦らしでメンタルを削るという事ですか。なんて嫌らしい攻撃。そのねちっこさ、神レベルッ)

 ここは沈黙を破り、一撃を加えに行った方が良いのでしょうか?

 そう思い始めていたら、神が悶え始めました。

「くぅっ、同じ姿勢を続けていたら肩が固まってしまった。い、痛い。聖女よ、人の姿である事を理解した上で、このような責めをしてくるとはやるではないか」

 この発言で、何かがおかしいと気付いた私は、思考を一度リセットする事にしました。

(状況を整理しましょう。私は何も相手に対して仕掛けてはいません。ですが、相手は勝手に苦しんでいる……。いえ、あの反応は喜んでいる? 毒のようなスリップダメージ? そんな事はしていません。あれ? 神の言葉を思い返してみると、罰ゲームの下りから方向がおかしく……。いえ、その前から……)

 私は気付いてしまいました。

「その気付き、勘違いした神の心にも強烈な一撃っ」

 ちょっと嬉しそうに声を上げる神。

(ま、間違いありません。これは……。この神は……)

「そうだ。私は……」

 私と神の声が重なりました。


「「マゾッ!!」」

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