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聖女の乱進 ~無限の魔力で目覚めました~  作者: 鰤金団
エピローグ 1
1/112

 とある一座の演目

「みなさ~ん、もうすぐ始まりますよ~」

その少女の呼びかけは、野外に設営された舞台端からされていた。

 大きなカーテンで仕切られた向こうでは、始まりの場面のために準備が進められている。

 ここはトルナール大陸にある首都エルルートの広場。

 これから行われる演劇を披露するトロン一座は、首都の中でも一番大きい広場を借りられるほどに人気があった。

 数年前のとある出会いをきっかけに、この一座は大舞台へと歩み始める。

 一座が披露する演目は、唯一無二であり、人々が最も期待する内容だった。

 これを見るため、大陸の端からだって人が集まる。

 これを見る人々にあらゆる境は無い。

 誰もが皆、舞台上で展開される物語に目と意識が向けられるためだ。

 先程の呼びかけの後、観客達はそれぞれに場所を見つけて舞台を見つめていた。

 お客の期待は最高潮。その熱は、演者達にも伝わっていく。

 両者の状態が整った時、舞台端に、先ほど呼びかけをしていた少女が再び姿を現した。

 少女は席全体を見回すと、観客達に一礼した。

 それを合図にざわつきは消え、場が静まる。観客達の視線は彼女に集まっていた。

「えー、皆々様。本日はトロン一座を観劇するために集まっていただき、ありがとうございます。これから始まるは、語り手エリンナによる稀代の聖女の物語。今代の聖女から伝えられし物語をお楽しみください」

 再び一礼するエリンナ。観客達は拍手で彼女に応えた。

 静かな音楽が鳴り始め、エリンナが語り始める。

「トルナール大陸に伝わる聖女様の物語。邪が大陸に広まり、民達の祈りが届く時。邪を払う力を備えし聖女がこの地に舞い降りる。遥か昔から続く聖女の伝説。これより語りますは、歴代聖女において、最も稀有な聖女様の物語。今を遡ること五年前。今代の聖女は、エルルート城の儀式の間において降臨されました」

 エリンナの語りが終ると、曲が壮大なものへと切り替わり、舞台のカーテンは開かれた。

 これは、型破りで、人知を越えた聖女様の物語。

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