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メルトダウンな恋と彼ら  作者: ニシロ ハチ
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第三章 1


「どういうことですか?」私はベルさんにきいた。

 ベルさんの部屋だ。ベルさんの対面に座わっている。テーブルにはオレンジジュースが用意されていた。毒が盛られている心配をしない程度には、信用している。

「僕もタンブリンマンからきいただけで、詳しくは知らない。ただ、文面の通りらしい」ベルさんは淡々と話した。驚いている様子も、慌てている様子もない。それはいつもの調子だ。ただ、表に感情が出ないだけで、全く動じていないわけでもないと、最近わかってきた。今回のケースは、大して驚いているようには見えないけど。

「ハイジさんが亡くなったというのは、死体が見つかったということですか?」私はきいた。

「いや、居場所はわかっていないらしい。まだ、広く知られていないけど、動画がアップされたらしんだ。ダイキさんやマナさんが確認したところ、ハイジで間違いないそう」

「動画が警察宛てに届いたんですか?」

「いや、そこまでは知らないけど」

「死んだのは、ホントなんですか?」

「生きていられる状態じゃないらしい。蘇生も無理みたいだ」

「それは、殺されたということですか?」

「そうみたいだね」

「意識が戻ってからですか?」

「いや、そこまでは知らない。詳しい話は、タンブリンマンにきいたらいいよ。あと、十分後に会う約束を付けている」

 ベルさんは忙しいんじゃないんだろうか?随分と、ハイジさんが気になるみたいだ。それとも、タンブリンマンからの協力要請の圧が、それほどまでに強いのだろうか?

「コイトさんが失踪したっていうのは、どういうことですか?」私はきいた。

「そのままの意味だよ。行方不明らしい。恐らく、海外に行ったときいたけど」

「バカンスとかじゃないですよね?」

「可能性はある」ベルさんは、真面目な顔をして言った。

 絶対にないだろう、と言いたかったが我慢した。確かに、サイコロを振って同じ目が百回連続で出る位の可能性はあるだろう。

「警察が見張っていたんじゃないですか?」私はきいた。

「そこまで厳重に見ていたわけじゃないらしい。日常生活は普段通りに行っていたみたい」

「ハイジさんの死と、コイトさんの失踪はどちらが先ですか?」

「先にコイトさんがいなくなったらしい。僕たちと話を終えて、三時間後に屋敷から出て行ったみたい。行方がわからなくなって、探したところ、空港にコイトさんの姿があったらしい。でも、その時には、既に海外にいて、また、どこかに飛んだとか」

「まるで、捜査の目から隠れる為、みたいですね」

「そうかもね」

「その後に、ハイジさんが亡くなったのですか?」

「それは、ついさっきのことみたいだ」今は、午前十時だ。私たちが屋敷のエンプティにダイヴしていたのが、昨日の午後三時頃までだから、コイトさんの失踪は午後六時頃になる。十五時間ほどあるなら、世界中どこでもいけるだろう。

「コイトさんの失踪とハイジさんの死は、関係があるんでしょうか?」

「…わからない」ベルさんはグラスに入ったジュースを飲んだ。

 コイトさんの顔を思い出した。目が印象的な綺麗な人だった。体型は同年代の平均位だろう。あの屋敷に来たのは、三年前だと言っていた。それは、ダイキさんの恋人として、同棲しているからだ。

 もしかしたら彼女は、ハイジさんがいるから、ダイキさんに近づいたのだろうか?

 話では、コイトさんが屋敷に来てから、ハイジさんのことを知った、と言っていた。それに、ハイジさんが地下室で死んでいることを、事前に知る術がないだろう。

 でも、このタイミングでの失踪と、ハイジさんの死は無関係ではないだろう。必ずなにかがある。

 ハイジさんを殺すと決めたから、捕まらない為に逃げたのだろうか?

 他に目的があるのだろうか?

 わからない。

 でも、それよりも、ハイジさんが死んだ。

 予想では、目が覚めるのは、明日以降だ。まだ、目が覚めていないのではないか?

 それとも、目が覚めて情報をききだしたから、殺したのだろうか?

 コイトさんが逃げ出した時に、既に情報をききだしたのだとしたら、予想の二日前になる。それ位の誤差はあるのかもしれない。

 目が覚める前に、殺すのなら、あの地下室でそうしただろう。

 ……わからない。

「ベルさんはどう思いますか?」私はきいた。

「どうせ殺すなら、死んでいた間に、蘇生出来ないようにするのが優しさだろう。蘇生した後に、また殺すことはない」ベルさんは、テーブルに視線を落とした。

「……そこですか?」意外な着眼点に、思わず呆れた声が漏れた。


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