合宿 疎開
疎開、テロ、不穏なワード入ってます。
※ 熱中症には気をつけて!
「位置について、よーい、ドン!」
サポートロボットが抑揚のついた音声をあげる。
それと同時に俺は走り出す。
強い日差しが照りつける中、夏の蒸せるような高い湿度の空気を切り裂くように走る。
「55秒10」
遅い!
学校で走った時より遅くなってる。
俺はもう一度走ろうとすると左腕を誰かが掴んで止められた。
「先輩、そろそろ休憩しましょうよ」
修一が掴んでいた。
「あと、一周だけ走らせろ」
俺は修一の腕を振り払い、走ろうとした。
しかし、足に力が入らず、前に倒れかける。
膝と手のひらが熱いグランドに着く。
熱いだけでなく、少し擦りむいたようで痛い。
「ほら、ダメでしょ。みんなと一緒に室内で休みましょう」
そう言って、俺の右腕を掴み立たせるかと思いきや、背中に手をそえられ、膝裏に手を回されて、横抱きにされた。
「ちょっ、俺歩けるから」
「ダメでーす。先輩、室内に入るまで、離しません」
そうして、俺はエアコンの効いた涼しい医務室に入るまで横抱きされ続けた。
医務室の簡易治療ロボットに消毒と絆創膏をしてもらったあと、俺は医務室のベッド寝かされることになった。
経過観察で異常があればすぐにロボットが治してくれるようにだ。
「先輩無茶しないでくださいよ。」
表情のわからないライオンマスクから悲しげな声がした。
「修一君わかったよ。医務室まで送ってくれてありがとう。そろそろ、夕食の時間だろ。行かないと食いっぱぐれるぞ」
そう言って、俺は修一を医務室から追い出した。
「むすぶ兄さん、俺の数値どうだった」
俺は簡易治療ロボットに問いかけた。
「数値が上昇してる。今すぐというほどではないけど、薬の摂取が必要」
簡易治療ロボットから、残酷な答えが返って来た。
「薬はお父さんから直接もらわないといけないから、無理だよ」
「大丈夫、君の合宿疎開先には修一君以外アルファはいないから」
「大丈夫じゃねーよ。早くフェロモンテロの犯人捕まって欲しい!」
俺のオメガの数値が上がればその分、フェロモンに体が振り回されやすくなる。
そんなの嫌だ。
連続フェロモンテロなんて、なければ、運命にも怯えず、いつものように家に帰ったり、学校のグランドを走り回れたのに。
こんな離島に疎開させられることもなかった。