罰ゲーム延長
目が覚めるとそこは消毒薬の匂いがする部屋にいた。白い清潔なシーツのベッドで横になっていた。
「俊仁」
横から突然女の人の声がして、そこに目を向ける。
そこには、母がいた。
「よかった目覚めて」
母は、頬を涙で濡らしながら喜んでいた。
「母さん、ここどこ、俺何でここにいるの」
寝起きで掠れた声で聞く。
とても体がだるい。
「俊仁、ここはお父さんの病院。
ショッピングモールのフードコートでフェロモンテロに巻き込まれて、倒れて救急で運ばれてきたの。」
涙声で母は説明する。
「そうなんだ。友達と一緒にいたんだけどその友達もどうなったか知らない?」
俺がそう聞くと母は、ハッとした顔になり答えようとした。
病室の扉が開き、見慣れたライオン頭の後輩と父が一緒に入ってきた。
「俊仁、無事でよかった。」
白衣を着た父は俺の顔を見てホッとした様子だった。
修一は俺と同じ患者服をきていたが、ライオンマスクをかぶっていた。
見えないが安心して気が抜けたような声だった。
「先輩、怪我なくてよかった。」
俺も修一の元気な様子を見て、安心した。
「修一君、あの時担いで外に出してくれてありがとう。お父さん、お母さん心配かけてごめんなさい。」
俺は、父と母と修一を見て、あの地獄から抜け出せたという実感がやっと出てきて泣いた。
父は修一を身体検査すると言って、修一を連れて病室を出ていった。
その後、兄からのビデオ通話が母の電話にかかってきた。
「無事でよかった。」
「うん、心配かけてごめんね。何で俺だけ、闘争フェロモン効かなかった」
「俊仁久しぶり無事でよかった。それ多分、お義父さんの薬のおかげだよ。」
兄だけが映っていた画面に、兄の夫、義兄が映り込む。
「お兄さん、お久しぶりです。心配ありがとうございます。そうなんですね。」
薬、それは父が開発したフェロモン受容体を鈍くする薬だ。
いつも飲んでいる。
それのおかげで今まで運命やフェロモンと無関係のベータでいられている。
近距離で高濃度で気迫フェロモン浴びた場合は無理だったけど、やっぱり、お父さんが作る薬はすごい。
俺はこんなすごい父の元に生まれて運がいいと思ってしまった。
義兄はすぐに画面から消えで、兄と母の三人でしばらく最近あったことなどを話した。
運命の番を見たことは心配させすぎるといけないから、二人には黙っていた。
そして、看護師さんが面会終了時間を伝えてくるまでたくさん話した。
俺は一日様子見の検査入院をしたら、退院して明後日からは学校だ。
幸い明日はゴールデンウィークの最終日と被ったおかげで学校が休みだ。
そういえば、修一はゴールデンウィーク明けにはライオンマスクを外せると言っていた。
一体、どんな顔をしているんだろう。
ライオンマスクを外しても、俺のいい後輩ということに変わりがないから大切にしよう。
何でたゴールデンウィーク明けには、ライオンマスク外せるって喜んでいたのに。
何でまだつけている。
「修一君、おはよう。」
とりあえず、いつも通り声をかける。
「先輩!おはようございます。」
明るい声が返ってくる。
「ゴールデンウィーク明けにはマスク外せるって言ってなかったけ?」
俺は疑問を口にする。
「罰ゲームが終わる前に勝手にマスクを外して気迫フェロモンを使ったので、罰ゲームが夏休み中に伸びてしまいました」
少し困った様子だけれどもさほど深刻ではない様子で、説明された。