三種のフェロモン
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「このように、他の生物より人類が発展できたのは、なんらかの異常で、フェロモン受容体が鈍くなり、そして、フェロモンに振り回されることが少なくなったからだ。」
生物の授業は、人類の進化の話だった。
黒板に書かれた内容を箇条書きで書き込む。
周りでは、睡魔に襲われた負けた人がクラスの半分はなっている。
現在進行形で睡魔に襲われているのは四分の一だ。
残りの四分の一である五人のうち二人は、俺と修一だ。
黒板に文字を書き終え、俺たち生徒側を見た先生は、
睡魔に襲われて負けた者たちを見てため息をついた。
そのあと、ある言葉を言う。
「起きている人は、耳を塞げ」
そう言われて、俺は慌てながら両手で耳を塞ぐ。
先生は、赤くネイルされた爪を黒板に立てた。
ギィーと爪が黒板を引っ掻く、不快な音が教室に響く。
耳を塞いでも聞こえると言うことは相当強く引っ掻いたようだ。
負けた者たちはその音のおかげで睡魔から解放され、起きた。
「フェロモンに油断はしてはいけない。
あくまで、少なくなっただけだからな。効力が強くて、濃いフェロモンを浴びてしまえば、影響を受ける。」
そう言ってまた、黒板に向き直る。
「多くの人類が持っているフェロモンは、性フェロモンだ。一部の人間は気迫とも言われる威圧フェロモンを持っている。さらに人類は持っていないが、動物などから抽出された闘争フェロモンを人間が浴びると凶暴化する。
闘争フェロモンはよくフェロモンテロに使われる。この三種のフェロモンはテストに出るからな。」
「フェロモンテロが起こった時は、とにかく逃げること、制圧できるのは強い威圧フェロモンを持った人しかできない」
生物の先生はそう言っていた。
目の前の惨状で、先生の言ったことが理解できた。
俺は恐怖に震えて、座り込み縮こまっている。
獣のように目の前で多くの人が暴れている。
中には血が流れている人もいる。
今日は修一と一緒に、学校の近くの買い物にショッピングモールに来ていた。
フードコートで俺はたこ焼き、修一はラーメンを注文して、同じ机で食べる予定だった。
先に俺のたこ焼きができて、ラーメンをとりに行った修一が帰って来るのを待っていた。
あのライオンマスクは食事の時は口周りが開くしようになっている。
たこ焼きが火傷しない程度に冷めるのと修一が帰ってくるのを待っていた時だった。
雨が降ってきた。
おかしなこのフードコートは室内で雨なんて降るはずがない。
スプリンクラーの誤作動か、せっかくのたこ焼きが台無しになった。
勿体無いとと思った時だった。
獣のような叫び声が周りから響く。
俺は咄嗟にテーブルの下に隠れる。
俺がいたであろう場所には、人が吹っ飛ばされてきた。そのほか、人が殴り蹴り合う鈍い音や食器が割れる高い音がする。
食べ物と金臭い血の匂いが混じった空気に変わった。
何が起こっているのかわからないままショッピングモールの館内放送が流れる。
「フードコートでフェロモンテロが起きました。
これよりフードコートの区画を閉鎖します。
お客様は周りの従業員の指示に従って落ち着いて避難してください。」
フェロモンテロか、なんで俺は無事なんだ。
それより早く出ないとこの地獄に閉じ込められる。
そう思うけど足がすくみ動かない。
誰かの足が机の下で縮こまる俺の前で止まる。
「先輩、大丈夫ですか?」
修一だった。
「怪我はしてない。怖くて動かない。修一はフェロモン大丈夫なのか?なぜ凶暴化してない」
震え声で問いかける。
「たぶん、このマスクのおかげです。気迫フェロモンが外に漏れないように抑える仕組みが入っていて逆も然りです。」
落ち着いた様子で返してくる。
「修一君、俺を放って早くフードコートから出ろ。
そうしないと閉じ込められる。」
いくら足が早くても、足が動かなければ足手纏いだ。
「できない」
そう言って、修一はしゃがみ、俺の両手を掴み、机の下から引っ張り出すと、俺の脇の下に両手を入れて立たせて、脇に頭入れて、足の間に左手を通して抱き上げ、肩に担ぎ上げる抱きかたファイアーマンズキャリーした。
「一緒に逃げる」
そう言って、フードコートの出入口の方に走り出した。
血を流しながらも暴れる人々の間を、床から飛び椅子に乗り、椅子から飛び机に乗り、机から仕切りを飛び越え、床に飛び降りるなどを繰り返し、すり抜けていく。
修一は暴走した人の攻撃を避けつつ、フードコートの出入り口についたが、もうシャッターが閉じようとしていた。
人一人がうつ伏せになって通るしかないほどの隙間だ。
「先輩、一緒に逃げたかったけど無理なようですね」
そう言って、俺を肩から下ろすとと、その隙間に頭から俺を押し込んだ。
そうすることで俺はシャッターの向こう側、フードコートの外に出ることができた。
「修一!俺が引っ張るからこっちに手を伸ばせ!」
俺は外から修一を外に引っ張り出そうとした。
フードコートの外では警察やら機動部隊の人が何人もいた。
「君、危ないから離れろ」
警官の数人がシャッターの向こう側、フードコートに手を伸ばしている俺をシャッターから引き離そうとした。
俺は、それでも諦めず手を伸ばした時、向こう側から手に柔らかな中身のないライオンマスクをつかまされた。
そして、すぐシャッターの隙間から威圧フェロモンが流れてきて、気を失った。