二度目の邂逅 結 登校時に話しかけられる。
「平田先輩、おはようございます。」
朝起きて初めて目を合わす人は、編入生で同級生で陸上部の後輩だ。
「修一くん、おはよう。昨日は驚いたよ。実は編入生で同じクラスだったなんて」
「はい、本当は一昨日にクラスに入る予定だったんです。けど、体調が悪くなって休んだんです。」
俺は修一に歩幅を合わせ横に並び、ながら通学路を歩く。
「部活見学の時は大丈夫だったの?」
「はい、落ち着いたので、見学して走ることができました。陸上部だけを見学する予定でした。
ライオンマスクになった原因話しますけど聞いてくれますか?」
ライオンマスク越しの声のトーンが暗くなる。
「いいよ、聞かせて」
「なぜか、自分の周りにサッカー、野球、バスケ、剣道、テニス、バレーボールなどの部活の人々が集まり初めて、勧誘が始まったんです。」
ただ自分にたくさん勧誘が来て、戸惑ったのだろう。
「ただ勧誘するだけならまだよかったのですが、自分を取り合って、喧嘩が起こりました。」
ライアンマスクの顔を下に俯けた。
「うわぁ、部活勧誘で喧嘩ってどうゆう状況なんだよ」
「勧誘するために自分の部活をあげて、他の部活を下だと話す勧誘が現れ始めました。そこからがまあ、空気が悪くなり始めだからです。」
俺は相槌を打ちながら、その様子を想像する。
たしかにどのスポーツもいいところ悪いところがある。違うスポーツ同士を比べてあげ合うならまだしも、下げ合うのは良くない。
「自分の勧誘を挟んでの喧嘩でしたよ。さっさと抜けたくて、穏便に落ち着いた大声で、自分は陸上部に入ると叫ぼうとした矢先、陸上部を下げた発言が聞こえて、気迫を使いました。」
修一くん、陸上大好きなんだな。
「そのせいで失神まではいかなくても腰を抜かせる程度の気迫を出してしまい、弱い人は気を失ってしまいました。」
おい、どこの誰か知らん他の部活の勧誘部員ら、スポーツマンシップ及び他の道徳心を無視した下手な勧誘のせいで被害が大きすぎる。
「そうなんだね。修一くんを巻き込んで喧嘩をして部活勧誘放棄した勧誘部員たちの方が悪いと思うね。
君だけが罰ゲームを受けるなんてずるいね」
「先輩は、自分のことが悪いとは思わないんですか?」
修一が足を止める。
俺は修一のライオンマスクをじっと覗き込む。
「思わないよ。スポーツマンシップを忘れて勧誘した部員たちが悪い。新学期早々同じスポーツ部同士で諍いが起こるのは良くないむしろ止めてくれて、陸上部のためにありがとう」
俺は真面目な顔で言い切った。
「いえいえ、先輩に話したおかげで心が楽になりました。」
ライオンマスクの顔をあげ、明るいトーンの声が帰ってきた。
「おかげで、罪悪感がなくなりました。生徒指導部の先生たちとAI判断で一週間罰ゲーム部活参加不可でスポーツマンシップ関係のレポートを書き続けて部活に来れない勧誘部員たちへの。」
「そうならよかった」
勧誘部員よ、因果応報だ。
へーアイツら、AIと先生はナイス判断だ。
おれは心の中で感心した。
昨日午後の部活のやけに静かでグラウンドが空いていたのはそのせいか。
「もう学校が見えましたね。早く部活やりたいです。」
「部活の前に、授業頑張らないといけないぞ。
下手な点数を取れば、部活ができなくなる。わからないところは聞いてくれよな!」
「はい先輩!」
修一くんと校門をくぐる頃には俺は一昨日見つけてしまった運命の番のことなど、頭の片隅どころ彼方に置いていた。