ひまわりのような私ともっとひまわりのような彼
花農家の一人娘の花岡あおいは毎年小学校の夏休みになると、山奥のお祖母ちゃんのひまわり畑の手入れを泊まり込みで手伝っていた。
「きみ、花岡のばあさんとこのお孫さんだよね」
「そうだけど……、あなたは?」
少年の名は日下部陽太。お祖母ちゃんの家から少し離れたところにある、大きな農場の跡取り息子。
陽太の両親はあおいのお祖母ちゃんと農業を通じての知り合いで、たまに農作業を助け合いながら暮らしていたのだ。
あおいと陽太は出会って以来、毎年夏休みのわずか数日の間だけ会って、川に入って魚を獲ったり、森でカブトムシを探したり、お祖母ちゃんの家で花火をしたり、いっぱい遊んですごしていた。
毎年会えるのを楽しみにしていたあおいだったが、小学六年生の頃、身体に異変が……。
それまで小柄だった身長が、夏のひまわりの花よろしく急激に伸び始めた。
中学に上がる頃にはモデル顔負けの高身長となり、思春期特有の不安定なメンタルも相まって、あおいはそれがコンプレックスとなった。
「こんなに大きくなって……、陽太くんが見たら、なんていうんだろう……?」
陽太に驚かれるのが嫌だったあおいはそれ以来、いろいろと理由をつけてお祖母ちゃんの家に行かなくなった。
――時は流れ、あおいは中学校で一七〇センチ越えの長身を生かしバスケ部に所属。1ON1をやらせれば男子にも引けをとらないほどの名選手となる。それにより高校にはスポーツ推薦での入学を決めた。
しかし、充実してるはずなのに、あおいは物足りなさを感じていた。
女子達が各々好きな男子の話をしているのを、いつも羨望の眼差して見ている。
あおいがいつも読んでる少女漫画のキャラクターは、か弱くて守ってあげたくなるような子ばかり。自分とは正反対だった。
「男子はああいう可愛い女の子が好きなんだろうな」
それが勝手な偏見だとわかっているのだが、それが原因で恋愛を諦めてしまっていた。
そんなある日、あおいのクラスに転校生がやって来た。
「!!」
あおいは驚きのあまり、目を見開いた。
あおいの高い背を、さらに上回る高い背の美少年は言った――
「今日からお世話になります、日下部陽太です」
とりあえず3作目、今年の小説家になろうラジオ大賞
一先ず出せる作品は出し尽くしたと思います
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