場所・時間・人
そこはまるでSF映画のようなメタリックな建物で囲まれた街だった。ひっきりなしに車が――タイヤがついておらず地面から僅かに浮いているが、形は車に近い――通っているが、人は一人も歩いていなかった。
それからというもの、私は繰り返し世界と世界を渡り続けた。赤と黒だけしか色というものがない世界や、青い煙に包まれ自分がどこにいるのかも、手の届く範囲がどうなっているのかすら分からない世界などへと。命の危険すら感じるような時もあった。いきなり戦争の真っ只中に放り出されてしまい、日本の物ではない西洋風の剣や鎧を構えた兵士に体力の限界まで追い回された。
元いたものと近い世界に着くこともあった。外見上は似ているが、やはりどこか違う。よくよく調べると人の言葉を喋る動物が町中にあふれていたり、皆が食べるものが金属だけだったりと。そう言った異常を発見した時は、元の世界に戻れたと喜んでいた分強い失望を感じた。
朝目覚めると、写真でしか見たことのない曾祖父が散歩から帰ってきたこともあった。より小さな変化としては、物の影が角度によっては翼を広げた悪魔のような異様な形をする世界もあった。これには気づくのにずいぶんと時間がかかった。
こういったまだ常識の範囲を一歩だけ超えたような世界はなかなかやってこず、次第に異常な、原形を留めていない世界が巡ってくる比率が高くなってきた。