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悪い予感は
悪い予感がしてきた。誰かともう一度話をして確認をしたい。近くに交番があることを思いだし、訪ねに行くことにした。警官なら道を忘れてしまったとか何とか言えば対応してくれるだろう。体を動かしたおかげで頭もすっかり目覚めてきた。念には念を入れて軽くほほを叩いて気合いを入れ、自首しに行くぐらいの覚悟で交番に入っていく。中にいたのは若い警官が一人。書類を書く手を止めてこちらを向いた。
「すみません。
どうしました?」
駄目だ、この警官も私が喋ろうとしたことを先に言ってしまう。そして相変わらず私の口からは一切言葉が出ない。ああ、やはりここは私のいた世界ではないんだ。やっと戻ってこれたと思っていたのだが。
「気をつけて。
ありがとうございました」
適当に話を切り上げ交番を出る。肩を落として帰り道をとぼとぼと歩きだす。これからどうするべきか。ようやく元の世界に戻って来れたと思っていただけに、失望感は大きかった。こんな所ではないんだ、私のいた世界は――。