元の世界への帰還は
昔書いた短編です。20話程度で終わるかな?
現在連載中の2/1(いちぶんのに)とは別で投稿していきます。
自分は、元の世界に戻れたのか?
窓を開けて外を確認すると、数分前までいた異世界の面影は全く感じられない。そこでは当たり前のように町や家の中に森が浸食していたのに、今はとても視界が開けている。ずっと遮られていた太陽の光が私の部屋と体をゆっくりと温めていく。
胸が開放感と喜びで一杯になった。もうあの鬱陶しい植物たちは自分の分をわきまえて、申し訳なさそうに街の隅に引っ込んでいる。私は、元の世界に戻ってこれたんだ。
晴れ晴れとした気分で二回の寝室から下に降りる。居間には妻がいた。
「あらどうしたの? 休みなのにこんな時間に起きるなんて。
なんか目が覚めちゃって。……え? あれ? 今の私が――、
俺が言おうとしたことを言ってるみたいだ――。
え? 何これ?」
どういうことだ。私は今、一言も喋っていない。妻に対する返事として口にしようとした言葉も、困惑の声も、全て妻の口から出ていた。
「嘘だろ」
妻には似つかわしくない口調で、私の言いたかったことを文字通り妻が代弁する。
混乱で頭がいっぱいになってくる。