神信じてる?
教室へ戻ると何事も無かったように席に着き、すぐに授業が始まった。授業中の俺の脳は彼女へ懐疑的だった。神という胡散臭い言葉、スマートフォン、前の星。緑の目に関しては良くわならないが、それ以外は妄想家であれば作れる話だ。ただ、つまらない日常を刺激で満たしてくれるのではないかという甘い期待も少しはあった。
(まずは神ってことをしっかり証明してもらうか)
こんな事を考えているうちに全ての授業が終わり下校時間となった。
「お前らはさ神とか信じる?」
「おいおいどうした急に?」
安藤が笑いながらいい、中村も笑っていた。
「いや、どう思うかなーって」
「俺は信じるね」
「俺は信じねーわ」
予想通りといえば予想通りだった。中村はそういう類いのことは全く信じない。
「安藤は神にどんなイメージ持ってる?」
「ジジイ、白髪、ガリガリ、でも最強」
「アニメの観すぎだろ」
中村が笑う。
「最強ってどんな感じよ?」
色々な発想が欲しくて聞いてみる。
「えーと、怪力、バカ速い、冷静、後は…不死身とか?」
「なーるほどねー」
「つーか、マジで質問の意図を教えてくれよ…」
「昼飯を別の所で食ってること関係してる?」
中村がニヤけながら聞いてくる。
「あー!絶対それだわ!」
安藤まで参戦してきた…。今朝と同様に妙に感のいい中村は危ないと直感した。
「明日、俺の母さんの命日で週末にお寺行くからなんとなく聞いただけだよ」
話を誤魔化すために母の死を利用した。人の死に関わる話に人は敏感になるからこれ以上あいつらが聞いてこないと考えた上でだ。
この後少し気まずい空気ができたが安藤が別の話題に変えたためすぐにいつもの雰囲気に戻り、駅で中村と別れた。
「なぁ、ちょっと本屋寄るから付き合ってくれ」
「はいよ」
高校受験ぶりに本屋に入った。本を読む習慣が全く無いので適当にうろうろしているとレジを終えた安藤がやって来る。
「わりぃ、待たせた」
「いや、めっちゃ早かったけどな」
「買う物決まってたからな」
「何買ったの?」
「新発売のラノベ」
「お前みたいなゴツい奴がラノベってなんかおもしろいな」
「ほっとけ」
「俺はアニメとかラノベとかあまり詳しくないけど、なんでそんなに人気なんだろうな」
「うーん、この世に夢が無いからだろ。今ってさなんかどんよりしてるじゃん?」
思わぬ回答に少し感心しつつ心の中で三波の意見を少し肯定した。
「そういうもんか。ちなみに何買ったの?」
そう聞くと安藤は俺のリュックを開け中にレジ袋を押し込む。
「ちょ、おい。何入れた?」
「今買ったラノベ。貸してやるよ」
「お前が読まなくてどうすんだよ」
「もうwebでだいたい読んだから問題ない」
こいつなりの勧め方らしい。人に自分の好きな物を紹介したい気持ちは分かるけどこのやり方は脳筋すぎだろ。
この後うまいように言いくるめられ結局持ち帰ることになった。帰宅後、レジ袋の中のラノベを取り出した。
「"地球破壊を目論む悪魔を倒したら英雄になってた件について"ってなんだこれ。アホみたいなタイトルだな」
「地球破壊の悪魔か…」
三波の顔が浮かび上がる。普通に考えたら地球を飽きたという理由で破壊したがるのは神ではなく悪魔だろう。これは早々に正体を確かめる必要がある。人か神か悪魔かを。ただどうやって正体を確かめるかが問題だ。俺は疑い深い人間だから自分の手で確かめなければ。
「不死身か」
安藤の言葉が心を揺さぶる。