一方通行
「その命令は"この世界を終わらせろ"だった」
彼女は喜びと悲しみの間のような顔をしていた。
俺は何がなんだか分からなかったが正直ワクワク感もあった。
「えーと、悪いけどさっぱり意味が分からない。何で破壊する必要があるんだ?」
「簡単に言うとね、人間に飽きてしまったんだ」
「飽きた?何をもってして飽きたというの?」
「祐介はさっき世界の歴史を学んだと言ったね。先の大戦で日本はどうなった?」
「連合国側に勝利した」
「そう、日本は大勝利した。それが大きな間違いだったんだ。ファシズムを掲げる国々が頂点に立ったときまず最初に行われるのが敵国の知識層や技術者の迫害だ。それにより連合国側の人口は約4%も減少しGDPも戦前の30分の1となった」
良く止まらずにペラペラ喋ると感心してしまった。
「それはもう散々習ったよ」
「まぁ聴いてよ。それにより連合国側は枢軸国に依存する形を取らなければ生きていくことができない状況になった。そこで動いたのが最初に脱ファシズムをし、一番力のあった日本だ。そして世界は日本に魅了された。その裏で日本は莫大な資金をかけて世界支配を目論んでいたんだ。その第一歩として最初に行われたのは教育改革だ。60年前から世界中の学校が日本式教育なのは知ってるね?」
歴史の授業はもう勘弁してくれと思ったが真剣な眼差しに負ける。
「うん」
「今現在、日本以外の国は日本人よりも日本人をしている。それは日本から遠い国程反乱のリスクが高まるため、より教育を徹底しなければならなかったからだ。それにより世界中が日本人化すると大きな弊害が生まれる。それは技術進歩の停止だ」
「なんとなくわかる気がする」
これは問題点としてチラホラ聞くことがあるが、そこに根付いた国民性を変えるのは不可能と言っていいだろう。
「日本人特有の同調圧力や周りを過度に気にする第三の目、謙遜、前列主義、好んでの孤立。これらが主な原因だ。また、先の迫害により技術者が不足しているので世界を圧倒的にリードするのは必然的に日本になってくる。だがその日本で何も生まれない。それは日本人だからというのもあるが、"競争相手がいない"これが一番の原因だろう。ところで、2014年に起きたヤバい事といえば?」
つまりは日本人の国民性が世界の足を引っ張り尚かつ引き上げる役目も日本人なのだから上手く行かないと言いたいのだろう。そしてそれを象徴する出来事
「正化の大恐慌?」
ふと父親の顔が浮かんだ。
「そう。それによって世界経済は前よりももっと衰退した。人間はみな閉鎖的になり、技術も全く進歩しない。長々と喋っちゃったけどこれが飽きられた原因ね」
「まぁ飽きられた原因はわかったけどさ、技術は少なからず進歩していると思うけどなぁ」
「祐介はそのケータイのことどう思う?」
彼女が俺のケータイを指さして聞いてきた。
「え、とっても画期的で便利だと思うよ」
「実はね前の世界、いや星にもっと画期的なスマートフォンっていうケータイがあったらしいんだ」
「前の星?スマートフォン?」
「そう。前の星ではね皆が今使ってるケータイはガラケーって呼ばれてて、それができたのがその星の1970年だったらしい。その後に登場したスマートフォンっていうのは折り畳み式じゃなくて全画面液晶で入力ボタンが1つもないんだって!因みにできたのが1977年!」
彼女は興奮気味に語った。。
「全く想像できないなぁ。使いづらそう」
適当に流しつつ、頭の中では"前の星"が気にって仕方がなかった。それについてもう一度聞こうとした瞬間
「キーンコーンカーンコーン」
びくっとして背筋がピンとたった。
「あ、もう5分前。戻らなきゃ。バイバイ!また明日!」
とびっきりの笑顔で去っていった。
「え、あ、また明日!」
反射的に返した。
気になることが多すぎて吐きそうになりながら教室へと戻った。