ほんとーの自分
食事を終え風呂にも入りまたベッドへダイブ。
朝はやかましい音と共に始まる。
「シネ」
ボソッと呟き目ざまし時計のスイッチを殴りベッドから出る。でも今日はいつもより調子が良い。何故ならあの女、桜木に会えるからだ。
田舎なので電車の椅子に座ることができる。最高だ。電車に揺られてる間、久しぶりに七年前の事件について調べることにした。やはり犯人の名前は出てこない。19歳で人を殺しておいて名前すら報道されないこの国の異常性。そして被害者である母は名前と顔が晒されている。社会的重要度という名目で許可なく使えるらしい。
「おかしいだろ」
思わず呟く。これが原因で苗字を変えた。
当時の記事のコメントには父を叩くコメントが数多くあった。記事を流し読みしていると実際に母を刺した少年の一人は懲役14年で、手を下さず傍観していた少年は懲役6年という事が判明した。本当に笑える滑稽な国だと思った。法治国家である以上は判決を感情で左右するのは特例以外は間違いだし、俺は性善説を信じているのでこいつらは生まれた環境に問題のあった憐れな人間でこいつら二人にも必ずバックストーリーがあるはずだ。けど、やはりどちらにも死んでほしい。正直、未成年だから精神が未熟でまともな判断ができないという文言は大嫌いだ。俺は小中学生だろうと人を意図的に殺したら死刑でいいと思ってる。
こんな事を思いながら学校の最寄り駅に電車が着く。
駅の改札には同じ高校の生徒で溢れていた。
「おは!」
「おっす」
安藤は朝練なので中村と二人で学校へ向かう。
「いやぁ、朝から晴れてるとテンション上がるな。今日も7月にしては涼しいしよ」
中村が呟いた
「めっちゃわかる」
思わずニヤける。
「平本ってさ俺のことどう思ってる?」
突然中村が変なことを聞いてきた。
「え、お前のこと?」
「うん」
「え、そりゃー大切で頼れる仲間だよ」
と思わず答える
「うわ、くっせぇ」
中村がニヤける
「そりゃあないぜ」
急に7月の気温にもどった。
「その質問の意図を教えろよ!」
「いや、お前ってたまに何考えてんのか分からんからよ。まぁ、つまりは友情確認だよ」
「なんだそれ」
正直焦った。周りには上手に接して普通の人と認知してもらえてると思っていたからだ。確かに腹の底で良くない事を考える回数は常人の倍以上だろう。でも俺は決して実行はしない。
学校につくと隣の女子が話しかけてきた。
「ねぇねぇ平本君ってさ部活何やってるの?」
「1年の頃は山岳部に入ってたけどもう辞めた」
「そうなんだ。もし暇だったら陸部来ない?平本君が脚速いのめっちゃ有名だよ」
「うーん、ぐうたらするのが好きだから今はパス」
「そっか、気が向いたら絶対来てね!」
「そうする」
隣の清水さんと話すのは久しぶりだ。ずっとブスだと思ってたから話す気もなかったのに、今見てみたら予想よりは良かった。こういう事を平気で考えてしまう自分に嫌気が差す。
1限が始まる。4時間後に屋上に行くのが楽しみだ。