変化
6両編の電車は上りよりは混んでいた。車窓には田園風景と富士山が絵のように写っている。これもこれで綺麗だが屋上からの眺めの方が好きだ。
電車の中では清水さん事ばかり考えていた。清水さんとは一年から同じクラスだったがあまり印象に残っていない。初めて見た時ブスだと認識したからだろうか、殆ど会話すらしていない。でもこの前久しぶりに話したときは割と…いや、結構可愛かった。
今朝の会話を思い出す。
たしかに清水さんは気をつけてねと言っていた。やはり三波の事を知っていたんだ。そして俺を怪しんでいるに違いない。もう敵であることは明白だ。どうにかして手を打たないと先に殺られてしまう。
家の最寄り着くと人がちらほら見える。駐輪場から自転車に跨がり家へと向う。途中、地元に昔からある商店街の中にオレンジの優しい光が漏れるパン屋が見える。ここは七年前越してきたばかりの時によく母と行った場所だ。母が殺されるは前日もここで買い物をした。商店街を抜けて1分ほど走ると我が家が見える。
住宅街の一角にある3階建て2LDKのアパートだ。角部屋で隣人とは一切交流がなく、その隣人が3年前に出て行ったきりずっと空き部屋だ。
ガチャ
玄関を開けるとすぐさま台所へ行きリュックから取り出した血のついていない包丁を一応洗う。部屋へ戻るとどっとため息がでる。リュックからは微かに硝煙の匂いがする。ベッドにダイブし仰向けになり天井の電気に手をかざす。
(これが人を殺した手か)
恐らく昨日までの俺だったら母の命日に友達を殺したという事実に耐えられなかっただろう。けど、三波から遺伝子を入れられたあの瞬間から少しだけ心が強くなった気がする。けれど母の遺影があるリビングに行く気は起きない。
ボーッとしてる中でまた清水さんの顔が浮かび上がる。
「俺らから見れば敵だけど人類から見たら清水さん達こそ神様だよな…」
俺は世界を破壊するその日まで三波と共に敵を、場合によっては人をも殺す覚悟はもうできた。また三波と話した時のあの非日常的な事へのワクワク感が蘇ってくる。
ピンポーン
インターホンが鳴った。
(時間的に父さんではないし、一体誰だ?)
面倒くさいと思いながらもベットから立ち上がる。
(いや、待てよ。清水さんじゃないか? だとしたらまずい)
リュックから銃を取り出し玄関へ向う。足音を立てずに扉に近づき覗き穴から外を見るが誰もいない。一瞬風か何かで鳴ったのかと思い覗き穴から目を離した瞬間…
ピンポーン
またインターホンが鳴る。
俺は銃を片手にそっと玄関から離れベランダへ向う。ベランダから飛び降りて建物を回り玄関の前にいる奴を調べる作戦だ。俺は3階から勢いよく飛び降り、少しよろけながらも着地に成功した。心なしか運動能力が上がったような気がする。
銃を服の下にしまい玄関を見る。
「は?」
そこに居たのは三波だった。




