初めての手
「よくやったねじゃねぇよ」
泣きそうな声でこぼす。
「怒ってる?本当に祐介は感情の起伏が激しいね」
コイツにだけは言われたくなかった。けどその通りだ。1秒前に彼女へ持った怒りはもう小さくなっていた。遺伝子を刻まれたことが原因かもしれない。
取り敢えず起きてしまっまた事は仕方がないので前を向く。
「さっき殺した事はバレないようにできるって言ったよね?」
「うん。見てて」
そう言うと彼女はまた空間を開けそこに中村の死体を放り込んだ。どうやってかは分からないが地面に流れていた血まで消えていた。
「でも、もし誰かが殺す瞬間を撮影していたらおわりじゃないか」
「大丈夫。周りに見えないように結界張ってたから」
色んな能力を持ってやがる。
「やっぱり祐介怒ってる?」
「さっきまではね。でも今はなんともない」
嘘のように穏やかな心。
「その…さっきはごめん。私、祐介に嫌われたくないから次はもう少し人間になる」
彼女が初めて申し訳無さそうにしていた。
俺は黙って頷いた。
少しだけ神になった今の俺には彼女の気持ちも僅かだが理解できた。
キーンコーンカーンコーン
チャイムの音には動じない。
「いこう」
俺は手を引っ張られ屋上をあとにした。
彼女が先に階段を下り消えていく。俺はつい数分前に友達を殺したのにも関わらず平然と教室まで移動する。絶対に越えてはならない一線を越え、もう後戻りはできない。ここに来てようやく心を統一できた。
教室のドアを開ける。いつもと違う手だった。
「あれ、平じゃん。中村はどうした?」
安藤達だ。
「え、なんのこと?」
「さっき中村が平を探しに屋上に行ったんだよね」
やっぱりこいつらの仕業か。
「俺は屋上にも行ってないし、中村にももちろん会ってないぞ」
こういう嘘を顔に出さずに言うのは得意だ。
「もうすぐ戻ってくるだろ」
石田が言う。
「だな」
一瞬で解散し各自席に戻り、俺は銃と包丁が入ったと手提げをリュックにしまう。
ガラガラ
「よーし始めんぞー。号令」
そう言い入ってきた世界史の荻野は号令が終わると生徒を見回して中村がいないことに気がつく。
「えーと、中村は休みでいいのかな?」
「あいつ教室を出たきり戻ってこないんです」
食い気味に返答する安藤。そしてクラスが少しざわつく。
「なんだそりゃ。何処へ行ったか分かるやついるか?」
「出る前に屋上へ行くって言ってました」
「屋上?なんか嫌な予感がするな。ちょっと見てくるからお前らは静かに自習してろ」
荻野が出ていくと同時に教室全体が一気にざわつき出す。自習で喜ぶ奴・中村にもっと隠れてろと応援する奴・真面目に予習する奴・不安そうにしてる奴
そして少しニンマリしている女が俺の横にいた。




