天気転機!
あの夏休み明けの日実行に移した。
7月5日
この前の席替えで最後方の窓際をゲットしたのはデカかった。そして、ボッーとしながらいつも通りクソつまらん授業を受けていた。
「1789年7月のネッケル罷免によりあの有名なバスティーユ牢獄襲撃が起きた。ん?おい!平本!聞いてんのか?」
身体に電気が走った。
「は、はい!聞いてます…」
すると世界史の荻野が茶化して言う。
「お前もしかして窓に写った自分に見惚れてたんじゃないか?」
「いやいやそんなことしてませんて」
クラスの皆が俺を見て笑っていた。
(死ねクソ共が)
という幼い言葉を心で繰り返し、恥ずかしさに耐えながら時間が過ぎるのを待ち、待望の昼休みがやってくる。
「おい、平本!皆で食おうぜ!」
話し掛けて来たのは1年の頃からの友達である通称ジャイアンの安藤だった。名前の通り巨漢で柔道部の主将だ。
「すまん、今日は別のとこで食うわ」
「おう分かった。じゃ、イス貸してくんね?ここ眺め最高だからよ」
「おう、壊すなよ」
俺は弁当と異物を持ち教室を出た。俺のクラスは4階だから屋上へは2階上がるだけで行ける。ただ、屋上へ続く階段を登る所を見られたら厄介だ。屋上が封鎖されているので見つかるといちいち一声かけられる。
小さい頃、今は亡き母とよく観ていた学園ドラマがあった。そこではヤンキーが屋上で飯食ったりタバコをふかしていた。俺はこの頃から屋上へ憧れていた。
教員にバレずに屋上への階段を登り錆びた扉の前に着く。俺は工具を2本ポケットから取り出した。そう、いわゆるピッキングだ。これは去年屋上へ行きたいという欲望から身につけた技術で俺の数少ない自慢だ。もう慣れたので10秒も掛からない。
「ガチャ」
扉を開けると手前には田んぼや小さなスーパーがあり青空の彼方に富士山が見え、何故かいつも泣きそうになる。
「気持ちいい」思わず呟く。
もう7月だが風は涼しく雲一つない。俺は壁にもたれ掛かり飯を黙々と食べる。
屋上という非日常的な空間にいると摩訶不思議な事が起きて自分の人生が変わるんじゃないかという淡い希望を持ってしまう。
屋上飯始めてからはや9ヶ月何も起きない。
飯を食べ終わった後ケータイでニュースをチェックしてから教室へ戻る。これが日課だ。今日のチェックを済まし、ドアノブを回し扉を開ける。そこからだ。そこから全てが狂った。