漫才『正しく言葉を使いたい』
※【ゲラゲラコンテスト2】参加作品
二人「はいどーも」
ツッコミ「突然なんだけどさ、最近言葉を正しく使えてない人が増えてるらしいよ」
ボケ「えー、本当に?」
ツッコミ「例えば、“敷居が高い”って言葉があるでしょ。大半の人はさ、高級だからあの店には入りづらい、身の丈に合ってないみたいな意味で使うじゃない?」
ボケ「あー、確かに。本来の意味は違うんだ?」
ツッコミ「そうなのよ。本来は不義理なことがあって行きづらいみたいな意味らしいのよ」
ボケ「ほー、つまり、お前は敷居が高くて実家に帰れない、みたいな使い方が正しいんだ?」
ツッコミ「使い方はね。でもそれだと僕が実家に不義理なことしてて帰れないみたいじゃん? 別に全然帰れるからね。むしろ親は帰ってきてほしがってるよ」
ボケ「あんなことがあったのに?」
ツッコミ「いやなんもないのよ! 印象操作やめてくれる? 反抗期すらなかったからね」
ボケ「まあそう思ってるなら、そう思っとけばいいよ。きっと知らないほうが幸せなこともあるから」
ツッコミ「え、なんかあるの?」
ボケ「まあそんなことより」
ツッコミ「いや流さないで!」
ボケ「それに関してはまあいいじゃない。今はほら、人目もあるし」
ツッコミ「人目があると話せないような内容なの!?」
ボケ「はいはいこの件は終わりね。もう話進めたいからさ」
ツッコミ「いや君が言い出したんでしょ!?」
ボケ「あとでカツカレーおごるからさ」
ツッコミ「…カツカレーは卑怯だって。僕がカツカレーに目がないことって知ってるでしょ」
ボケ「分かってくれた? まあとにかく言いたいのは、僕自身は正しく言葉を使える自信あるっていうことよ。いやむしろ自信しかないね」
ツッコミ「ほう、言うねぇ。じゃあ今から間違いやすい言葉を出していくから、君が正しく言葉を使えるかテストしてあげるよ」
ボケ「望むところだ」
ツッコミ「じゃあ“コンテンポラリー”という言葉を正しく使ってみて」
ボケ「OK。これは簡単ですよ」
ツッコミ「お、まあこんくらいは簡単ですかね」
ボケ「アイツなんかムカつくから、みんなで“コンテンポラリー”にしてやろうぜ」
ツッコミ「うん、見事に全然違うね。“コンテンポラリー”というのは“現代的なさま”という意味なのよ。ムカつく人を現代的にする意味が分かんないから」
ボケ「いやニアミスだわー」
ツッコミ「ニアミスという言葉の使い方も怪しいけどね」
ボケ「まあ次の問題ちょうだいよ」
ツッコミ「うーん、じゃあ“まことしやか”は?」
ボケ「あー、ちょっとボケてもらっていい?」
ツッコミ「え? なに急に」
ボケ「いいから」
ツッコミ「えー…。じゃあ、今日は久しぶりに図書館に大声出しに行こうかなー」
ボケ「まことしやか!(肩を叩く)」
ツッコミ「痛っ! いやツッコミの『〇〇か!』みたいな言い方しないで。全然違うから」
ボケ「まことしやかー?」
ツッコミ「いや『本当かー?』みたいな言い方もやめて。“まことしやか”は“いかにも本物らしく見せるさま”という意味だから」
ボケ「まあ本当は分かってたけどね。“まことしやか”に分かってない演技をしてただけだから」
ツッコミ「いやさっそく上手く使ってるけど、全然信用ならないよ。じゃあ“さしずめ”は?」
ボケ「これは流石に分かるよ」
ツッコミ「まあいいから使ってみせてよ」
ボケ「えー、次はー“さしずめー”、“さしずめ”でごさいます(鼻声で)」
ツッコミ「駅名みたいに言った!」
ボケ「この電車はー、各駅停車“まことしやか”行きです」
ツッコミ「“まことしやか”行き!? どこに辿り着くのよそれは」
ボケ「車掌はわたくし、ムッシュ・“コンテンポラリー”ヌが担当しましたー」
ツッコミ「まさかの外国の方だった! いやていうか全然正しく言葉を使えてないじゃん!」
ボケ「いやー、正しく言葉を使うのはちょっと僕にはまだ“敷居が高かった”かもしれません」
ツッコミ「いやだからその使い方も間違ってるのよ! もういいよ」
二人「どうもありがとうございましたー」