21グラムの行方
わたしたちの魂には重さがあるのだと、いつの日か彼女が言っていたのを思い出す。曰く、ヒトは死の間際に二十一グラムという重さを失っているらしい。私たちの生まれるずっと前にある医師によって観測されたそれが、今日魂の重さとして伝わっているのだという。
消えた魂はどこに行ってるんだろうね。根っからの理系の癖にオカルトが好きだった彼女に、私はなんと返したんだっけ。多分、曖昧に微笑んで流した気がする。そういった浪漫を解さないたちだった文系の私は、講釈する彼女の手を握る傍ら、その医師が行った実験がいかに杜撰なものだったかを調べたからだ。けれど、楽しげなあの子の気分を損ねたくなかったから、肯定も反論もしなかった。我ながらつまらない女だと思う。
そんな私は、彼女がいなくなってからずっと、必死に魂の行方について思いを巡らせている。今日も誰もいない屋上へ足を向け、フェンスを乗り越え、縁に立つ。彼女と同じように。魂は地面へと染み込んだのだろうか。もしかすると朝靄に溶けたのかもしれない。あるいは空へと昇っていったのか。それとも星となったのか。
そうして、いつものように蹲る。たった一歩。それだけで彼女と同じものを見て、終えるかもしれないのに。気がつけば行き場をなくした子供のように、スカートを握りしめて座り込んでいるのだ。二十一グラム、四分の三オンス。体重で割れば限りなくゼロに近しい僅かな重さ。たったそれだけの重さが、私を現実に縫い付けていた。