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或る浮浪者の報告

いきなりの報告で悪いけど、東京は死にました。


なんでも、五年前に『記憶の大渦巻(メモリシュトローム)』が都内全域で群発したとかで『記憶喪失者』が大量に生まれたらしい。

『記憶の大渦巻』は発生原因すらよくわかってないけれど、巻き込まれたひとは記憶喪失になる災害で、さいきん先進国を中心にして多発している怪現象みたいなんだよ。


当然、記憶をなくしたひとたちは家に帰ることができず、ひどい場合は名前も思い出すことができずに町を放浪することになる。

治安は悪くなる一方だ。被害者になるケースや加害者になるケースを問わず犯罪も多発。


こりゃ困ったな〜。

なんて、みーんな四苦八苦してる。もちろん、おいらもね。


記憶を取り戻す方法もあるっちゃあるんだけど、それには大病院で治療を受けないといけないらしい。

治すには多額の費用と家族のサポート、あと記憶を取り戻すための思い出の物品が必要とかで、当然、そんな充実した環境におかれた記憶喪失者はまれだから、ふつうの記憶喪失者は法外に記憶を取り戻すための医療?行為をしている『記憶探偵(メモライザー)』ってやつを雇う。


軽度の記憶喪失者なら、スマホとかの使い方は覚えてて、自分の記憶がなくなってるってことに気付くから、みずから依頼することもあるらしい。

だけど探偵のやつらはそのへん目ざとくて、スマホや自販機の使い方も覚えてない、電車の乗り方も忘れたみたいな——

そういう、自分が記憶を失っていることにすら気がつかない、重度の患者に対しても勝手に契約を取り付けて、法外な金額を要求してるらしい。


悪いやつらだよね、探偵って。

だけど、それで救済されているひとたちもいるみたいで、現状は野放しにされているってわけ。

警察もどっちかというと、記憶喪失者たちの引き起こす犯罪を取り締まるので精いっぱいみたいだし、警察の内部にも運悪く『記憶の大渦巻』に巻き込まれたひとが多数いるらしくて、そもそも『探偵』の違法行為に人員を割くことができないっぽいんだよね。



——っていうのが記憶喪失になったばかりのきみに対するアドバイス。


この情報、五千円くらいかな。

とうぜんきみの財布のなかにもそのくらいは入ってるよね?


よしよし、一万円札しかないみたいだし、これで勘弁しようじゃないか。

え、高いって?

やだなぁ、安いもんだよこのくらい。


いまの東京では、情報と記憶は何より高いんだからね。

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