06 エルフの国 1
「くっそぉぉぉぉお! ミラニスの野郎め、 俺が考えたことをパクりやがって! だからあいつは嫌いなんだよ! 子供っぽいクセに魔王の中で1番強いとか、マジでないわ。この世界の理不尽さには反吐が出るわ。」
「ジーニアス様、袋をお持ち致します!」
いや、反吐が出るほど不愉快ってことだよ! 俺の部下には、馬鹿しかいないんだよなぁ。
まぁ、それなりの戦力があるから雇ってるけど。一度でいいから、頼れる部下が欲しいなぁ。
「それは私のことですな!」
「いえいえ。僕のことですよ」
「そんなわけない! この俺様のことだァ!」
君達のことではない。間違っても頼らないよ。滅茶苦茶になるからな。
「それよりジーニアス様、ミラニス様についてはどう致しましょうか? 3種共和協定を破ったということですが。」
ううむ。そんな協定を結んだんだっけ。
ああ、エルフと人間どもが手を組んで俺らをボコしてった時に結んだんだ。
「そうだな。ミラニスの野郎についても検討せねばな。これより、シャネル殿のところへ向かう。今すぐ準備せい!」
「「「はいっ! 準備致します!」」」
「「「準備出来ました!」」」
え? 早過ぎないか? 早いに越したことはないけどな。それでは向かうとするか!
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ふわァァ。クソ眠い。この世界の担当になって早11時間。早とは言ったが、そんなに経ってもいないんだよなぁ。
特に変化もない下界を眺めてると、なんだか悲しくなってくる。
ここには、エルフがいるらしいから、エルフの国でも見に行ってみようと思う。やることないし、別にいいだろ。
エルフの世界へ、LET'S GO!!
―――――下界!下界! 何故そんなルンルンなのかって? そりゃあ、エルフの国だぞ? ぐふふふっ! え? キモいって? いいじゃん、男の子なんだし、夢を持って生きようよ。
「なんか、あの人キモくない? 警察の人に言った方がいいのかな?」
や、やめろ! 仮にも俺は神なんだぜ?
はぁ、とりあえず、この国について説明しよう。エロ、ごほんごほん、エルフの国エーリクは、王様的なものはなく、5人の大名を中心に政経を立てているらしい。この5大大名には、それぞれ役目があり、防衛、産業、経済、医療、外交というものがあるのだとか。なんだか社会の先生になった気分だわ。
「おい、そこのお前、お前だよ!」
え? 俺? あぁ、こいつはこの国の防衛を担っている大名であり、聖騎士団の団長、ユリムとか言った奴だったはず、、、 そんな奴が俺になんの用だ? あ、まさか、俺が神だって気づいてしまったか。もし本当にそうなら、マジで有能だが、喋り方的に絶対に違うだろう。
「え、俺ですか?」
「そうだ、お前だ。お前以外に誰が居るんだ!」
うーんと、結構いますな。通行人がひぃふぅみぃ、、、
「お前、さっき通りすがりに我の顔見て笑っただろう。そんなことできるのは悪魔しかおらん! この悪魔め。神様の名の下に成敗してくれようぞ!」
ん? 今、神様の名の下って言った? 何を言ってるんだあいつは。俺が俺の名の下に成敗されるって、意味がわからんわ!
「顔なんか見てませんし、笑ってなどいません。何かの間違いではないでしょうか?」
「うるさい、うるさい! 間違えだろうがなんだろうが、成敗する!」
うわー、理不尽過ぎるだろ。こういう奴なら殺っちゃっても良いよね。
「悪魔め、死ねぇぇ!」
バンッ!
よっしゃー、あいつの剣を吹き飛ばしてやったぜ! ほら、唖然とした顔して立ち竦んでるなぁ。ダッサ!
「これでもまだ俺にちょっかい出しますか?」
「くっそぉお! 我に恥をかかせおって! おい、者共、こいつを引っ捕らえろ。ただ殺すだけじゃ物足りない。拷問が必要だ。」
「誰の名の下で?」
「神様だ!」
「この世界の神様のお名前を知っているのですか?」
「カラノ様だ!」
「神の名前も知らない奴に、神様の名の下にとは言われたくないが。というか、貴方様は聖騎士でしょう。神の名前知らんとか、有り得ないでしょ!」
「はぁ? お前何を言ってるんだ? カラノ様以外に神は居ないだろう?」
「ニシヤマカオルという神を知らないのか? カラノとかいう神はもう居ないのだぞ? 聖騎士のくせに、、、」
「ええぃ、早く引っ捕らえろ!」
「「「はっ!」」」
もうゴリ押しかよ。こんなのがエルフの国の聖騎士様でいいんですか? こんなのが神でいいんですかって?い、いいんです!
お、仕事熱心な兵の1人が俺に突っ込んできた! ここはひとつ、、、
サッ!
「えっ、ええ?」
逆に引っ捕らえてやったぜ! 少し脅してやろう。
「それ以上近づくなっ! 俺は神だ! そこを退けばこいつの命くらい助けてやる。」
「え? 今なんか『我輩は神である』なんて聞こえたような。気のせいかな?」
『我輩』とは言ってないが、確かに言った。そんな変なことか?
「お前が神だって? フハハハハッ! こんな中年のおっさんが神とか有り得んことよ。我は忙しいのだ、早く捕まえて帰るぞ。」
はいはーい! 特大ブーメランでーす。
「貴方こそ、腹が出てるかなり歳食ったジジィのくせに聖騎士なんですか? 人の事言えないでしょう。」
「早くしないと、この人の頭が吹き飛びますよ?」
「早く引っ捕らえろ!」
マジか、自分のために、自分の部下の命を切り捨てるとか、最低すぎだろ。
バンッ! バンッ!
その瞬間、1人の勇敢なる兵士の顔が吹き飛んだ。え? 最低なのはお前だって? まぁまぁ、いいから見てなって!
「お、お前、本当に殺りやがった! 国家反逆罪だぞ!」
「え? 何を仰ってるんですか? 彼ならまだここにしっかりと立っていますよ。」
「あ、あれ? 俺の顔が、ある!」
いや、あるから生きてるんだろ!? 俺は罪のない奴は殺したりなんかしない。本当に俺を怒らした奴は、どうなるかは分からないがな。
「皆さん! 聞きましたか? この男は部下の命よりも自分の利益を優先した。こんな男が聖騎士団の団長なんかで良いんですか? いえ、駄目でしょう。他の聖騎士の皆さん。もう一度、仕える相手を考え直してください!」
「確かにそうだな!」
「俺達が動かないと何も変わらないんだ!」
なんか、かっこつけてる奴がいるぞ! 始末するか! 流石にそれは可哀想か。
「おのれ、お前らそれがどういうことか分かってるのか? この国を支えている、5大大名の防衛大名を裏切ることになるのだぞ? お前ら全員死刑だ!」
「それを決めるのは、裁判所です。聖騎士団、団長タリスマ・ユリムさん。裁判所から出頭命令が出されています。拒否することは出来ません。さ、ご投降願います。」
「や、やめろ! 何故我が裁判所になど行かねばならぬ!」
「それは、直に分かりますよ。」
そして、ユリムはもがきながら部下に連れられて行った。周りからは歓声が上がり、俺を神だと信じるものも出た。
変なことに巻き込まれたが、まだ、というか、時間は全然あるのだ! これから、エルフのお姉さんの、、、聞かなかったことにしろよ? お願いしますぅ!
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「そいつはどこに行ったんだ?」
「し、知らぬぞ! 我が捕らえようとした時にお前らが来て邪魔したんだ!」
「その神とやらを捕らえてきたら、今までの悪行は全てなかったことにしてやる。」
「分かったら、早く行くんだ!」
明日は用事があるので、お休みです。