ダンジョンへ向けて
ミュオール港…キエミュ街より三日程、荷馬車を雇って移動するとミュオールの首都ミュオールに着く。
草原の中に佇む一国の首都に相応しい、巨大な城壁に囲まれた街。
美しく舗装された道は馬車が五台程横並びになってもまだ余裕がありそうなほど広い。
とは言え、さすがは一国の首都……ここからでも渋滞しているのが分かる…面倒だな。
それに気になるのは……以前立ち寄った際にはなかった舗道の左右…草原に空く無数の穴だ。
なんだ? これは?
「なにあの穴〜。景観台無し〜」
「恐らく魔物に攻められた時用の罠の一つだろう。空を飛ぶ魔物には無意味だが、陸からの魔物には多少有効かもしれんのだよ」
「確かにねー。勢い良くトババーっとは、襲い掛かれないねー。景観台無しだけどー」
クリス様とアレク様は景観重視なのか?
ローグス様も肩を竦めて苦笑いしている。
…以前はなかったが、やはりステンドが襲われた事で警戒が強まっているのかもしれないな。
穴だはまだ建設中のものも多く、上半身裸の痩せた男たちが土を運び出している光景がそちらこちらに見えた。
…建設作業員にしてはガリガリ過ぎるような…?
「……闇が深い」
……と、クリス様が呟いたので大体理解した。
キエミュ港の事もある。
つまり彼らは奴隷上がりの者たち。
制度そのものは廃止されていても、扱いは変わっていないのだろう。
「可哀想ですわね…きちんと食事や休息は与えているのでしょうか?」
「あ! 見て、みんな! あの男鞭を持ってるよ! …アーノルス様! 制度が廃止されたのにこれじゃ以前と同じですよ!」
「そうだな…。あの様な扱いに対しての罰則はないのだろうか? …ミュオール王にお伺いしよう」
「…全く…ご飯はマズイしぼったくりは横行してるし、制度が廃止されても奴隷扱いは続いているし…アバロンみたいな国だね〜」
姫が久しぶりに聖女らしい事を……い、いや、姫は基本的に聖女らしくお優しいが……。
……だが、リガル様が指差した方には丸めた鞭を持つ男が穴の中を覗いて回ってある。
側から見れば、作業している者たちの様子を監視しているようにしか見えない。
この国は陽射しが強い国だ。
あの鞭を持つ男は帽子を被っているが、働く者たちは服らしい服を着ていない。
故に肌は黒かったり、赤く腫れていたり…ああ、見ていて痛々しい者が多いな。
「なんか血の匂いもするねー」
「やっぱり? 背中が火傷で水膨れになってるやつもいるよね〜? 仕方ない、ど〜せ行列が出来てて進まないし、ボク治癒してきてあげるよ〜。エリナとローグスはど〜する〜?」
「それは良い考えですわ! わたくしもお供いたします!」
「ふむ、我輩はすでに準備万端なのだよ。少し離れるのだよ、アーノルス」
「分かった、頼むよ三人とも」
さすが回復役のお三方。
荷馬車から降りて、三方向に散っていく。
そこで穴の中や、穴から土を運び出す者たちの背中や肩を治癒して回る。
…そして、遠目からだがクリス様とローグス様が先程の鞭を持つ男を取っ捕まえてお説教をしているのが見えた。
あのお二人にサウンドで怒られるとか…怖いな…。
「……はっ! 普通に見てたけど僕も回復魔法使えるんだった! 手伝ってくるよ!」
「い、行ってらっしゃいませ…」
そんな思い切り忘れていたんですかアレク様……。
********
城に入る事が出来たのは翌朝だった。
荷馬車で四泊する事になるとは思わず、クリス様とリリス様は文句たらたらだったが順番なので仕方ない。
あの作業員たち…アレク様の労働条件改正案で、今日から少しは『普通』に働けるようになっている……といいのだが…。
「おお、これはこれは勇者アーノルス……と……」
「お目にかかるのは二度目でございます。マティアスティーンのエリナでございます。こちらは我が国の新たなる勇者オルガです」
「新たな勇者とな?」
いかんいかん、集中せねば。
目の前におわすのはミュオール王。
立派な玉座。左右には陛下の石像が六つも立ち並んでいる。
その奥には噴水までも……凄い謁見の間だな…。
以前よりも派手になっているような…?
少なくとも石像は増えている。
……因みに、アレク様とクリス様は「きな臭いから外で待ってる」とお城に入ろうともなさらなかった。
…きな臭いからって……。
なのでリリス様とリガル様にお二人のお目付けを頼んだ。
あと、包帯男でしかないカルセドニーも。
キエミュの事でアレク様をこの国に放置するのは危険な気がしたので。
「はい、カルセドニーが負傷し勇者としての積を果たすのが困難となっため、私がマティアスティーンの聖剣を引き継ぎましてございます」
「なんと! 勇者は変える事ができるのか⁉︎」
「え、ええと…簡単な事ではございません」
「ええ、聖剣の研究をしていた者の話では、勇者には勇者たる資質が備わっているそうですわ。その資質がある者でなければ聖剣の引き抜きは出来ません。港の街にてこの国の勇者、アキレス様がダンジョンに行ったきり戻ってこられないと噂を耳にいたしました」
「陛下、余計な事とは思いますが、盟友の国の王族としても勇者としても…アキレスとのお約束をしかと守られた方がよろしいかと思います。キエミュ港からこの王都までで随分と“お変わりない”ようでしたよ?」
「む……」
エリナ姫とアーノルス様が冷静に陛下を見上げる。
他国の王に、口が過ぎるのでは……。
しかしローグス様が私を目だけで制する。
…そうか、アーノルス様はこの国の同盟国マスキレアの王族にして勇者。
同盟国とはいうが実質的にはマスキレアの方があらゆる面で格上!
うっ、そ、そうか…私の方こそ余計な事は言うべきではないな……。
「…う、うむ、実に困った事よ…。アキレスめは勇者としての資質とやらがやはり備わっていなかったのかもしれんな」
「陛下」
アーノルス様の苦言もなんのその、か?
いやいや、そうではないでしょうミュオール王…。
思わず下げていた頭を上げて、王を見る。
蓄えられた髭を撫でながら、陛下は目を逸らして周りの家臣たちに助言や助力を請うていた。
「そうかもしれませんねぇ! いやはや、困りました…勇者アキレスは聖剣を持ったままダンジョンに行ってしまいました。もしかしたら負けてダンジョンに聖剣が置き去りになっているかもしれません。勇者アーノルス様、盟約に基づき、我が国をお救いくださいませ! ダンジョンに残された聖剣を、取り戻して欲しいのです!」
「ええ、ええ、本当に! どうか、アーノルス様! そのお力をお貸しください! ダンジョンの扉はすでに赤く変わっていました。我々では手が付けられなくなっているのです! マスキレアには先日アーノルス様にお力をお借りしたいと書面で申請いたしました。まだマスキレアからのお返事はありませんが……」
「ふむ、同盟を結んだ際、救援の要請には勇者も借りる事が出来るとあったな? 勇者アーノルスよ、我が国のためにその力を振るってもらえんだろうか? 無論、ただとは言わぬ。その方の働き次第では、我が国の領土をマスキレアに一部進呈しようではないか」
「………………」
……な、な、な……。
「……分かりました。アキレスの無事を確かめたいと思っておりましたので、そのご依頼お受けしましょう。……勇者オルガ、君の力も貸してくれるかい?」
「! ……は、はい、勿論です」
「では、勇者オルガの同行者としてわたくしも微力ながらお力添え致しますわ」
「おお! それは心強い! では頼んだぞ、勇者たち!」
********
「なんなんですかあれはーーー!」
……城から出て、真っ先に叫ぶ。
「落ち着いてください、エリナ姫」
……エリナ姫が。
無論、私も同じセリフを叫びそうになったのでとても気持ちは分かるけれど…。
「ですがオルガ! 聞きましたか⁉︎ なんたる怠惰! 同じ国の頂に立つ者として許せませんわ!」
「全くだ。腐敗が酷いとは聞いていたけれど、以前にも増して酷くなっているな」
「うむ…これでは買収の件もさぞや進みやすかろう」
「買収?」
どういう事だ?
ローグス様を見ると、肩を竦められる。
「マスキレアの方でミュオール領土の土地の買収が進んでいるのだよ。この国の領主たちは大金に目が眩み、自分の土地を領民の了承もなく売り捌いている。我が国としてはそんな領主から土地を取り上げて、領民たちの暮らしは出来るだけ変えなくて済むよう努めているのだが…」
「私の兄の一人がミュオール王国の土地の買収を進めている。先程ミュオールの王は一部を我が国に譲渡すると言っていたが…実際のところは領主が売買を了承せずごねていた土地を『売ってやる』という意味だろう。呆れたものだ…これが一国の王のセリフとは…」
「……ミュオール王国はもう終わりですわね……」
「…………」
これがマスキレア王国の『侵攻』のやり方。
豊かな経済力で他国を買収、土地を取り込み、最後は国を吸収し消してしまう。
武力を用いない事で行われる支配は、戦争による死者を生まない代わりに格差やスラム街を増やしていると聞く。
マスキレアの中心に行くと無料で学問や県を学ぶ場所が増える為…元は他国の民だった者たちはマスキレアの中心へと集まる。
それがスラム街の増加に繋がっているらしいが、失業した者もそこで様々な事を学び、再就職する事が出来るため不満はそれ程増えず、そういう者は故郷に帰って起業し、廃れた一部はゆっくりと活気を取り戻すのだそうだ。
……それがマスキレア王国の『支配』の形。
平和的だが、少し怖い。
エリナ姫の言う通り、ミュオールもマスキレアに間もなく飲み込まれるのだろう……。
しかし、そうなると聖剣と勇者はどうなるのだろうか?
この世界の国の数だけ与えられた聖剣。
それでなくとも勇者は揃っていないしベルチェレーシカの聖剣は行方知れずだと言うのに……。
「まあ、それならばそれで我が国の法が適用されるようになる。奴隷制度が撤廃されている今、その事をいまいち理解していない者たちを堂々と裁く事が可能になるよ」
「うむ。先程偉そうにしていた王と家臣も『個人』に還る。そうなった時に己の愚かさを思い知るはずなのだよ。今は好きなようにしているがいい、のだよ」
「その時は是非、この国の民に一発ずつブン殴らせて差し上げたいですわ」
「……。ひ、姫様、なんだかステンド戦以降発言が物騒ではありませんか……? 私と一緒に旅をしていた時はそのような事仰らなかったではありませんか……?」
「気のせいですわ。ほほほほほほほ」
そ、そうかなぁ?
「それよりも、ダンジョンですわ。オルガ」
「! 確か、ダンジョンの扉が『赤』くなっていると言っていましたね。情報では中級ダンジョンのはずでしたが……」
「ふむ、ダンジョンレベルが上がってしまったようなのだよ。これはしっかり準備して挑まねばならないようだね」
「そうだな。リガルたちと合流して場所を詳しく調べよう。ダンジョンレベルが上がったと言うことは、中のモンスターも上位種に進化しているはずだ。……アキレスが一人でダンジョンへ挑んだのだとしたら……」
「……絶望的なのだよ。あの王たちの思惑通りになるのは癪だが、聖剣は探し出すべきだね……」
「…………」
諦めるしかないのだろうか、勇者アキレス様。
お話を聞いただけだが、それではあまりにも…………。
********
ミュオール王国に現れたダンジョンは国内の東西南北に一つずつ。
その内、王都より北東に現れたダンジョンの一つが上級ダンジョンに進化してしまったという。
国から派遣されたサポート役の役人から手渡された資料一式に目を通す。
それによると、このダンジョンは『獣系』。
主に現れるのはビックマウス、スピーディボア、キラーキャット……などなど。
力押しで来る魔物が大多数を占めており、魔法使いが居れば比較的攻略は容易い。
ダンジョンボスはワイルドウルフ(大)……つまり通常のワイルドウルフより大きい体の固体。
だが……。
「上級に進化したという事は、ダンジョンボスのワイルドウルフも上位種に進化しているはずなのだよ」
「ワイルドウルフの上位種となると、バーサーカーウルフやエレメントウルフ、シャドーウルフなどだろうか? 低級からだと進化先が複数あって予想がつきにくいな」
「一番強いウルフ種はなんだったかしら?」
「ロード・ウルフ。ウルフ種の頂点だ。体は小さいが素早さは鳥類上位種にも匹敵する。見た目よりもパワーがある上、魔法も使うし魔法耐性も持っていたはずだ。鋭い爪と牙は勿論の事だがクリティカル率も非常に高く、一撃で致命傷を負う場合がある」
「き、危険生物ですわね……」
宿の一室で地図と資料を広げてみる。
私も知らない魔物がまだまだいるのだな、と感心すると同時にアーノルス様の魔物の知識もかなり豊富でらっしゃるようだ。
なのに『鑑定眼』を習得してないのか?
んん、まあ、それは人それぞれだよな……。
下位種は私もそれなりに見てきたが上位種ともなると実際退治しない事には、名前と姿が一致しない。
アーノルス様たちは最もレベルの高いパーティーとして、魔王に乗っ取られた南西の大陸にも行った事があるのだろう。
上位種の宝庫というから、興味はあるが……舐めてかかれる土地ではない。
エリナ姫はまだカルセドニーとパーティーを組んでいた頃のレベルだそうだから、あまり無理もさせられないしな……。
「なにより上級ダンジョンになった事で雑魚の魔物も進化して上位種になっているだろう。無理せず、数回に分けて調査しながら進むのがいいと思うが……どうだい?」
「そうですね、確かに……」
私もその意見には賛成だ。
なので頷いたのだが……何故かローグス様もリリス様もクリス様をちらりと横目で探る。
……。いや、まあ、はい、言いたい事は分かります。
「すやすや……むにゃ……」
「この状況で寝る? 普通この状況で寝る? ねえ、アレクちゃん」
「うーん、まあ、クリスだしねー」
「それで済むと思わないで欲しいのだよ」
「アレクくんもダンジョン興味ないのかい⁉︎」
「うっさ。わんこ騎士、少し声量下げてよ。……騎士ってみんなこうなのー?」
「?」
「いや、別にこっちの話。ダンジョンには興味あるけど、上級っていってもそんなに強くないんでしょ。獣系って事はドラゴンも居なさそうだし……」
「いやいや、上級ともなると普通に70以上だよ。体の大きな固体はプラスレベル10から15を見ておくべきだ」
「それでも80や90じゃーん。相手にならなくない?」
と、アレク様が投げたのはアーノルス様。
これにはアーノルス様も苦笑い。
……確かに、このお二人からすると80や90でも余裕、か。
「だとしても、聖剣一本、この身一つで挑める場所ではないかな。私は仲間たちと共にアキレスを助けに行きたい。出来れば確実に」
「んー……。確かこの国の勇者はオルガより弱いんだよねー?」
「そうね、あれからレベルが上がっていたらどうだか分からないけれど……。積極的にレベル上げするタイプじゃないし、仲間がいないから上がりにくいんじゃないかしら」
「で、その勇者が行ったダンジョンは上級で、とてもその勇者のレベルでどうこう出来るところではない」
「……残念ながら勇者アキレスは敗北したと考えるべきなのだよ。聖剣だけでも回収する必要があるのだがね、あの国王や家臣たちの思い通りにするのは些か面白くないのだよ」
「まあねー、確かに聖剣は回収した方がいいだろうねー。新しい勇者選定を行うにしても……問題は聖剣の状態だけどー」
「聖剣の状態?」
どういう事だろう、と首を傾げる。
アレク様が少し真面目な顔で腕を組む。
「『地面に突き刺さった状態』だった場合、引き抜くには『勇者の資質』を持つこの国の民でなければならないよー」
「は⁉︎」
「ま、待て待てアレク君! それはまるで勇者選定ではないか⁉︎」
「そうだよー。持ち主を失い、地面に突き刺さった聖剣は石化して決して折れたり破壊されたりする事はないけどー、同時に『勇者の資質』を持つ聖剣の与えられた土地の民でなければ抜けないねー。もしそんな状態でダンジョンボスを倒し、ダンジョンを消そうとしても聖剣の力でダンジョンは維持されるだろーし、例えばオルガや金髪勇者が引き抜いて持ち帰ろうとしてもこの国の民じゃないから引き抜けないよー」
「ちょ、ちょっと待ちなさいよアレクちゃん……それって……!」
……聖剣を持ち帰る事は……出来ない?
この国の『勇者の資質』を持つ者をダンジョンの中へ連れて行き、引き抜いてもらうしかない、という事か⁉︎
そ、そんな!
「それは……、……いや、むしろちょっとスカッとするのだよ」
「そうね、最高にザマァな感じね」
「素敵ですわ。それで参りましょう」
「お、お待ちください! 確かにアキレス様の意図が大変分かりやすい感じですが、下手をすると我々がその厄介な事この上ない『ダンジョン内の勇者選定』に巻き込まれるのでは……⁉︎」
「…………」
「…………」
「…………」
だ、黙られた⁉︎
「そう。オルガの言う通りー。僕が乗り気じゃない一番の理由はソレねー」
「くっ! そ、それは確かに嫌だ〜!」
「あの国王なら言い出しかねない……」
「ふごふごー……」
頭を抱えるリガル様と、拳を握ってテーブルに頭を突っぷすアーノルス様。
そう、もしダンジョン内でそんな事になっていたら、あの国王や家臣の方々は我々に「なら、勇者候補をその場所まで案内して。ついでに護衛して」と言い出しそうなのだ。
というか、アーノルス様とアレク様の予想だと確実に言い出すだろう。
そ、そんな事になれば、この国の新たな勇者が見付かるまで足止めを食らう事になる!
冗談ではない!
こんな色んな意味で飯のまずい国……!
「……それだけ今回の事は厄介なんだよねー……。この国の勇者の想いも分かるけれど…、それならば尚の事、僕らは関わるべきではなかったかもねー。まあ『勇者』たる君らにそんな事言っても無駄だろうけれどー」
「……ああ、厄介だが、捨て置けないね」
「はい……アキレス様の想いをきちんと国王や家臣たちの皆様にも理解して頂きたいです。それに、このままではこの国の民も危険に晒されてしまいます! ダンジョンはなんとしても消し去らねば!」
「確かに…。オルガの言う通り、ダンジョンが上級に進化した以上早期に潰さねばならんのだよ」
「そうね。上級ダンジョンは放置すると周辺に瘴気が広がって、辺りの魔物も強くなる。ベルチェレーシカの二の舞になってしまうかもしれないわ」
「そんなのダメだよ! マスキレアの騎士として、マスキレアの隣国が魔王の領地になる事は看過出来ない!」
「おお、わんこ騎士がらしくなく難しい言葉をー」
「……ア、アレク様……」
どんだけリガル様を馬鹿にしてるんですか……。
「よし、ともかく今回の目的は聖剣の状態確認だ。アキレスのレベルならそんなに奥地には行けていないはずだしね」
「成る程ねー、それもそうだねー」
「可能ならアキレスの骨でも拾ってやるのだよ。……この国では認めてもらえないかもしれんから、我が国に持ち帰って墓でも建ててやろう」
「そうねー、さんせーい。変なやつだったけど……同じくらい哀れな境遇だったもの……」
「変なやつだったけどね!」
「そ、そんなに変な人だったんですか……」
アーノルス様ご一行のこの統一した「勇者アキレスど変人説」……逆に気になる。
どんな人だったのだろう……会ってみたかったなぁ。
「では今日は準備を整えて早めに休もう! 明日、ダンジョンに一番近い町『ユミュール』に向けて出発する!」
「「「了解!」」」