ボトルン占い師になる
少し前の前作の続編です。今回は読みきりではなく連載です。(そんなに長くはなりませんが・・・)
魔法少女こと、元アイドル・倉記真由子のスレきった新たな人生を、考えてみました。なお、前作をご存じない方が、もしいらっしゃれば、倉本保志で検索いただければ、出てまいりますので、ぜひそちらも一読くださいませ。それでは、三島云々・・・倉本保志の新作連載小説ここに投稿です。
魔法少女ボトルン(占い師編) その1
ボトルン(倉紀真由子)は、浜辺を後にして、都会に舞い戻っていた。
「うーん、久しぶりの喧騒ね、やっぱ、都会はいいわあ」
「そういって、一度大きく伸びをすると、歩きながら、先ほど購入した、スマホを覗き見る。
アルバイトの情報を検索してみたが、なかなか、思い通りのものが見つからない。
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「ふん、おいしいバイトってなかなか、無いものね」
「アイドルは、事務所の手が回ってるだろうから、地下でも、まず無理だろうし・・・」
「商売始める、つっても、元手がなあ・・・」
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彼女は、ごそごそと、例の、黒いカバンをまさぐった。
「ええと、手元の現金が30万円と1500円 それと、あの、ぼくちゃんが貯めていた貯金が100万円、合計で130万円か・・・」
「お店を始めるには、全然足りないし・・・」
「あーあ、何かいい手は、ないかしら 」
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彼女は、とぼとぼ、都会の街を歩きながら、今後の身の立て方について思案にくれた。
日もすっかり暮れてきて、コンビニ、サウナ、様々な広告のネオンが、彼女の眼に飛び込んでくる。
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「あ・・・ そうだ 」
彼女に、一つのアイデアが浮かんだ。
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(占いなんてのはどうかしら・・?)
(ブログ作って・・・元アイドルの、ツテを使って呼びかけて・・・)
(それに、占いって、年齢問わず女性に人気だし・・・)
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(これって、いけるんじゃない・・? ふふっ)
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「そうときまったら・・・さっそく準備しなくちゃね・・」
「そうそう、占いグッズも適当に作れば、案外儲かるかも・・・♥♥」
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こうして、ボトルンは、持っていた資金の一部を使って、占いショップを始めた。
無論、店舗式のショップは出せるはずもなく、とりあえずは、高架下の通路の端に、ダンボールを切り貼りして作った、手作りの店をだし、そこを行き来する通行人を相手に、占いを始めた。
・・・・・・・・・
ボトルンが占いを始めてから、早くも3日が過ぎていた。
駅近くの高架下だけあって、人通りだけは多かったが、誰も彼女に目をとめるもの
はなく、むしろ。彼女を、避けるように、足早に通り過ぎて行った。
頼みの綱である、ブログのほうも、訪問客は皆無に近かった。
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「あーあ、今日も、ぼうずかあ・・・」
(ちょっと、考えが甘かったかも・・・)
彼女らしからぬ、気弱な様子を、さすがに見せかけていた・・・・
その時である・・・
チャリン・・・
彼女の店・ダンボールのなかに100円が、転がってくる。
・・・・・・・・・・・・
百円を放り投げた中年の男は、そのまま、店を通り過ぎようとした。
100円をすぐさま握りしめると、彼女は店から飛び出し、怒気を含めて、その男
に捲し立てた。
「こらあああ、貴様ああ・・・・物乞いじゃねえんだぞ・・・」
中年の男は、振り返り、びっくりした顔で・・・
「なんだ、違うのかい?・・・ごめん ごめん」
そう言うと、ダンボールの中にいる彼女を覗き込んだ。
彼女は、これ見よがしに、占い という、ダンボールでできた表札を男に見せた。
「何・・・? あ、占いね・・・? ははは」
男は、右手で頭を掻きながら、愛想笑いをして見せた。
「え、と、何占いなのかな?」
・・・・・・・・
「魔法占い・・」
ボトルンは男に、即座に答えた」
「・・・・・・」
「魔法占い・・・何だい・・それ・・?」
きょとんとした様子で突っ立ている男に、彼女はたたみ掛けた。
「モノはためしって言うでしょ」
「やってみたら、おじさん・・・?」
「この100円で診てあげる・・」
「ふうん・・・ じゃ、何を占ってもらうかな・・?」
中年の男が考えるようなしぐさを見せると、
「あ、 いいの、こっちで決めるから・・」
・・・・・・・・・
「え・・・?」
「だから・・・何を占うかは、こっちで決めるっ・・つってんの」
「あんたは、黙って突っ立てりゃいいのよ」
「・・・・・」
(ムチャクチャだな・・・)
男は、言われるままに、立ったまま彼女の様子を見ていた。
・・・・・・・・
「じゃ、いくわよ~」
「ボトルン、ルンルン、お願いよ、このおっさん、占うんですうう~
キエエエエエイ・・・・
ボトルンは例の、振りつけを踊りながら、呪文を唱えた。
・・・・・・・・・・・・・
「ハイ、見えました・・・」
「なに、なに、何が見えた・・・?」
「中年のおとこは乗り出すようにして彼女に、訊いた。
・・・・・・・・
「あなた、3日後に死にます・・」
彼女は、突剣呑に言い放った。
男のほうも、今度は黙っていない
「なんだよ・・死にますってのは・・・?」
「いい加減なこと言うなよ、このアマ・・・」
見なりは至極ふつうの、サラリーマン風の中年だが、突然自分が死ぬと
言われたので、声を荒げ、怒気を含めて、彼女に喰ってかかった。
「あ、そ、信じないんだったらご勝手に、」
「はい、お帰りはあちら~」
先制パンチを喰らわそうとしていた相手を、受け流すかのように言い放つと
彼女は、持っていた塩を、男に向かってまき散らした。
「っぶああ」
「なんだこれ・・・・」
目に塩が入ったのか、男は、持っていたカバンを放り投げ、両手で
酷く目をこすりつけた。
「これじゃ、占いというより・・・イテテテ・・・」
「たちの悪い、輩のタカリじゃないか、・・・くそっ」
・・・・・・・・・・・
「バカ野郎、二度と来るか・・」
そういうと、男は道路につばを吐き捨て、目にハンカチを当てながらさっさと行ってしまった。
重たい空気が、辺りに澱んでいる。
「・・・・・・」
「結構難しいいものね、占いって」
「・・・・・・・・・」
「だいたい、人の人生なんて、判りっこないのよね・・・」
「あーあ、ネコ型ロボットの道具、ネットで売ってないかしら・・?」
そう言ってボトルンは、店の中に戻ると、目を細めながら、めんどくさそうにスマホを覗いた。
・・・・・・・・・・
「おや、あんた、新顔だね・・・」
そういって、彼女の店を覗き込む老婆がいた。
「あ、ごめん、今忙しいから、占いは後にして・・」
ボトルンは、その老婆を見ることなく、無碍に言い放つ。
・・・・・・・
「なんだい・・・随分と愛想のない娘っ子だね・・・」
「あたしは、ここいらの元締めをしている者だけど」
「あんた、いつから、ここで店、出してるんだい・・・?」
老婆は、少し、怪訝な顔をして言った。
「なに、お婆さん、あたしに、何か用・・?」
「お婆さん、何か用かい?・・・何か・・・妖怪・・・ 」
「お婆さん、何妖怪・・・・? 」
「あ、もしかして、砂かけ・・・」
「ぷっ、くくくく・・・・」
彼女は、自分で言った言葉に、自分でハマってしまい、肩を揺すって笑い出した。
老婆はそんな、彼女の様子を、全く意に介することもなく、彼女に、言った。
「いい道具、貸してやろうか・・?」
・・・・・・・・・
「道具・・?」
ボトルンは 老婆の方を振り向いて訊いた。
「ああ、占いの道具だ、よおく当たるよ・・・」
「なんせ本物の魔法の道具だからね」
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「まあ、お婆さま、ほんとうですか・・・?」
ボトルンは、スマホを放り出し、両手を胸に組んで、老婆の方を、じっと
見つめていた。
その1 おわり
小説を読んでいるとき、(書いているとき)登場するキャラが、しっかりと、特定の人物・声優の声のトーンや抑揚を持っていることに気が付きます。聞こえてくるはずがない小説のキャラの声ですが、このことはとても面白いことだと感じています。ちなみにこの、ボトルンの声は、やはりツンデレ女子、エヴァのアスカさんです。(声優の方の名前が分からないので・・すみません)超ベタな感じかもしれませんが、倉本保志は、超ベタ大好き人間なので、悪しからず。